「すべり台」と「大穴」をつくったのは?:富山県東部高山地域【地元再発見の小旅行vol.18】
富山県東部の高山地域は様々な時代の堆積岩類や花崗岩類、変成岩の一種である片麻岩、第四紀の火山噴出物などバリエーション豊富な地質でした。
その中でも特に目立った場所があります!
"目立つ場所"はどこ?
ではさっそく行ってみましょう~。
スーパー地形(カシミール3D)より抜粋。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト)
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。
この縮尺でも見えるんですよ!さあどこでしょう?
ぐ~んとアップにしました。どうでしょう?
気になる地形はありますか?
真ん中付近のツルっとした場所、気になりませんか?
もう少しアップで見てみましょう。
溶岩台地でしょうかね?
まるで「すべり台」のような平滑な地形が見えます!
そしてその南に見える随分と広い谷地形は、まさに大穴のようです。
非常にダイナミックなこの地形、いったいどんな地質がつくったのか?
地質図を見てみよう!
まずはスーパー地形アプリ上でシームレス地質図V2を見てみます。
すべり台も大穴も同じオレンジ色です。
新生代第四紀更新世の安山岩溶岩など・・火山の地質です!
20万分の1地質図幅「高山」:地質調査所より
これは上記地質図の一部を抜粋したものです。
真ん中の濃い茶色が「すべり台」や「大穴」と周辺の地質です。
凡例によると「立山・雲ノ平及び焼岳火山噴出物」だそうです。
20万分の1地質図は広い範囲を扱っていますので、近い時代の似た地質を同じ色(凡例)にしたりします。
ですので「立山」か「雲ノ平」か「焼岳」の3つの火山のうちのどれか?ということになります。
地質図の右上に書いてあるのを既に見つけた方もいらっしゃるでしょう。
そう、ここは立山(たてやま)火山(※約22万年前から活動している活火山)。
また東にある湖は黒部(くろべ)湖(ダム湖)です。
ちなみに立山は1つの山ではなく、周辺一帯の山々も含めて立山連峰と呼ぶのが正式名称のようです。
「すべり台」と「大穴」の正体
ここまで読んで見当がついた方もいると思いますが、今回私が「すべり台」や「大穴」と呼んだダイナミックな地形は何か?
「すべり台」の方は、弥陀ヶ原(みだがはら)と呼ばれる台地でした。
5万分の1地質図幅「立山」:地質調査所より(筆者一部加筆)
5万分の1の地質図では、もっと地質を細かく色分けしています。
赤点線で囲った範囲が20万分の1の濃い茶色の範囲です(大まかに囲ってます)。(※西の方は地質図を跨いでいて欠けています)
弥陀ヶ原もいくつも色分けされており(オレンジ色や濃い目の肌色など)、噴出時代の違う溶岩や火砕流堆積物です。つまり溶岩台地でもあり火砕流台地でもあるのですね。
そして「大穴」!これは立山カルデラと呼ばれています。
原山ほか(2000)より(※方位記号の位置を筆者修正)
上の図の▲記号がついた太線が「カルデラ」の範囲です。
上の図をなぞって地形図にかぶせたのが上の赤点線です。
確かに「大穴」と呼んだ広い谷地形にピタリと合いますね。
ただし!!!
あ、スミマセン、急に大声を出してしまい(笑)
実はこの立山カルデラ、カルデラじゃないらしいんです!!!
立山火山の研究の初期段階でこそ「カルデラ」と考えられましたが、研究が進むうちにカルデラと言える明確な証拠は見つからなかったそうです。
むしろ浸食作用でできた大きな谷地形と考えるのが妥当なようです。
でも既に地名として「立山カルデラ」が一般にも浸透しているので便宜的に呼ばれています。
ですので専門家の中では「カルデラとは呼びたくない」と言う人もいるのだそう。
と、ちょっと残念なお話でしたが、ここが雄大でダイナミックな地形であることは変わりません!
最後に弥陀ヶ原と立山カルデラの3D画像をお楽しみください!
右奥には黒部湖が見えます!
お読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
原山 智・高橋 浩・中野 俊・苅谷愛彦・駒澤正夫(2000) 立山地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所, 218p.
山田直利・野沢 保・原山 智・滝沢文教・加藤碩一・広島俊男・駒沢正夫(1989)20万分の1地質図幅「高山」、地質調査所.
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