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絞りだされた大地part3:秋田県中北東部高山間地域【災害から身をまもるvol.33-3】

引き続き、秋田県仙北市北西部の地形を見ていきましょう。
過去記事はコチラ↓

断面で見る

崖に囲まれた凹凸の多い地形は地震で発生した地すべりとよく似ていました。

04090206_地すべり範囲

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

赤線で囲まれた範囲で、矢印の方向に動いたと考えられます。

画像2

地質図です。
ベージュは約180万~77万年前の火砕流堆積物で、その下の地層(黄色)は海に溜まった砂岩です。大地震の衝撃で起こった地すべりは砂岩でも動いた事例がありますし、海の地層であれば一部だけでも泥岩が挟まる場合もあります。まさしく地すべりになってもおかしくない地層です。

では「断面」で見るとどんな感じか?見てみましょう。

画像4

こんな感じで切ってみます!

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スーパー地形アプリの機能を用いて筆者作成(縦縮尺2倍)

普通の地すべりの場合、動いた方向(この場合は左)の逆方向の山が高いのですが、逆ですね。
地形的には西(左)へ動いたと見えますが、東の方が極端に低い。
地震が原因の地すべりは一気にズレ動くので、勢いよく西の斜面に衝突し、地面の大部分が西(左)に寄せ集まったかのように見えます。
おそらく、この「衝突」で粉砕された地層が絞り出されるように流出して、あの「土砂が流れてきたかのような」地形ができたと思われます。


ヘッコミの原因とは

ところで、地すべりの頭部(この場合は東)の方が低いのは、以下のような理由があります。

岩盤すべり_01

地すべりを「断面」で見ると、イメージとしてはこんな感じ。
赤線を底面として滑るとしましょう。

岩盤すべり_02

左へ動くと、当然、後ろに隙間ができますよね。

岩盤すべり_03

すると、隙間の上は不安定になります。
もともと地層内にできていた割れ目(節理)等に沿って割れて、隙間を埋めるようにして崩れます。

岩盤すべり_04

こうなります。
だから地すべりの頭部には「陥没帯」と呼ばれるヘッコミができます。

画像9

だとしても、この場合は低すぎる印象が強いです。
確かに陥没もしたのでしょうが、もう1つ原因がありそうです。


ヘッコミの原因とは

では、何が原因?と、もう1回地形図を見てみましょう。

画像10

これです!!

04090207_頭部河川

頭部のあたりを、川が通っているんですね。概ね北から南へ流れています。
つまり、地すべりで動いて、さらに陥没してグシャグシャになれば、地層は弱く軟らかくなります。そこを水が流れれば、土砂が流されますよね。それで削られ、低くなったのでしょう。

そしてさらに!この川にも秘密がありそうです!
次回はこの川の歴史について考えてみましょう。

お読みいただき、ありがとうございました。


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