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【多様性】の目的は複数の視点で問題を解決すること

こんにちは。


健康経営エキスパートアドバイザーのYURIKOです。


今回は【多様性】、ダイバーシティ&インクルージョンという観点から組織について考えてみたいと思います。


今回の参考図書はこちら⇩

マシュー・サイド著「多様性の科学」株式会社ディスカバー・トゥエンティワン、2021年


1. 能力の高さと多様性は両立しないという考え方

本書の中で最も印象に残ったキーワードはアメリカでも長い間主流であった「能力の高さと多様性は両立しない」という考え方です。

政治家の中には、こうしたCIA職員の画一性に気づいて声を上げる者もいた。彼らは「アメリカを守るべく設立されたCIAが、アメリカ社会を象徴する構成をなしていない」と危惧を表明し、「女性や民族的マイノリティの採用を増やし、もっと包括的な人員構成にすべきだ」と訴えた。しかしCIAには反論の切り札があった。「能力を最優先して人員を採用しなければ、国家の安全を脅かすことになる」。たしかに、たとえばリレーチームの選手を選ぶなら、速さを最優先するだろう。その結果、肌の色や性別がみな同じになってもなんら問題はない。逆にスピード以外の基準で採用を決めたら、チームの成績が危うくなる。国家の安全に翻って考えた場合、政治的な正しさを最優先するという選択肢はあり得なかったのだ。
こうした「能力の高さと多様性は両立しない」という考え方は長い間主流になっていた。最高裁判事を務めたアントニン・スカリアも、多様性を選ぶか超一流になるかどちらかだと発言し、アメリカ社会に大きな影響を及ぼした。能力の高さを追求した結果、自然発生的に多様性が生まれるならそれでいい。しかし、能力以前に多様性を求めるのは別の話だ。目標の達成を危うくしかねない。

本書では、2001年9月11日にアメリカで発生した同時多発テロを阻止できなかった要因として、このような「能力の高さと多様性は両立しない」「能力以前に多様性を求めるのは目標の達成を危うくしかねない」という考え方が主流であったアメリカにおいて、「能力の高い」職員の集まりであったCIAには組織的な盲点があり、結果テロの兆候を見逃したと事例を上げて解説しています。

日本でもダイバーシティ&インクルージョンへの注目度が高まる一方でなかなか取り組みが進まない背景には、アメリカと同様に「能力の高さと多様性は両立しない」という考え方が根強く残っているのではと感じます。


2. 多様性を取り込むためのポイント

では、多様性を取り込むために何をすべきなのか。本書では以下の3つのポイントがあげています。

(1)「無意識のバイアス」を取り除く

自分では気づかないうちに持っている偏見や固定観念を「無意識のバイアス」といいます。本書の中では、ある職務について、黒人と白人の候補者の履歴書から採用者を選ぶ事例が紹介されています。黒人/白人どちらかが明らかに優れていればその候補者を採用する一方で、両者に差がないときには、無意識に白人を選ぶ傾向が現れたとのこと。差別の自覚はまったくなくとも「黒人は白人より能力が劣っている」という無意識のバイアスが存在し、履歴書の見方に影響を及ぼしていたという事例です。

こうした小さな「無意識のバイアス」の積み重ねがマイノリティのチャンスを奪い歪んだ格差をもたらしている事実を知ること、そしてそれを取り除くことが重要だとしています。

なお無意識のバイアスを取り除くだけでは不十分で、認知の多様性を最大限に広げる(リスクに対応するため複数の視点を持つ)ことを併せて行う必要があると強調しています。

(2)若手が意見をいう場を定期的に設ける

会社の重要な戦略や決断について、若手の社員が上層部に意見を言えること、一言でいうと年功序列の壁を崩す意味合いです。育った世代や文化的な背景が無意識のうちにものの見方や考え方にさまざまな影響を及ぼしており、その意味では会社の上層部もある特定のものの見方や考え方に偏っているとも言えます。若手の多様な意見に触れることは、会社の上層部にとっても視野を広げる「テコ入れ」の機会になります。

(3)与える姿勢をもつ

多様な社会において他者とのコラボレーションを成功させるには、自分の考えや知恵を相手と共有しようという心構えを持つことが重要です。いくつかの研究においても「ギバー(与える人)」の方が「テイカー(周囲から与えられる人)」よりも成功を収めやすいという結果も出ています。

3. 日本企業の「多様性」に思うこと

今回は【多様性】、ダイバーシティ&インクルージョンという観点で「多様性の科学」を概観しました。 

タイトルにもあるように「多様性」の目的が複数の視点で問題を解決する、組織のリスクに対応するという戦略的な位置づけであることについては、企業のダイバーシティ&インクルージョンの取り組みのなかで果たしてどこまで伝わっているのだろうかと感じます。

性別、年齢、経験、知識やものの見方などが異なる人材とその意見を積極的に組織に取り入れ多様性を広げることが、特に現在のような先の見通しづらい環境下においては、非常に重要であることを改めて認識しました。


今回は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。少しでも皆さんの気づきになれば幸いです。

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