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ベルリンの道、拾い食い

0時過ぎには帰るつもりだったが朝方4時になっていた。そもそもサマータイム導入の日と被っていたので夜中の2時になった瞬間にiPhoneの表示は3時になった。
1時間先へ進む。

2時に帰ればまだ遅い夜中だが、3時となれば早い朝だ。もうヤケクソだ。
友人の誕生日パーティー、友人宅で酒を飲み音楽を流し踊った。
壁には映写機を通し踊る芝犬が永遠と映し出されていた。

外に出ると雨が降っていて、3月といえど寒かった。
駅から家までの10分ほどの道を早歩きで進む、寒いし眠い、おまけに酒ばかり飲んだから腹が猛烈に減った気になる。

いくら都市ベルリンといえど夜中を過ぎたら開いている店などなく、オレンジの街灯が湿った帰路を照らす。
日本のようにコンビニがあったら今頃ふらふらと吸い寄せられアイスとおでんを買っていたところだ。

早く家に帰って暖かいスープでも飲もう、

ふと左手のシャッターが閉まった窓部分に何かが置いてあるのが目に入った。
タッパーに入った大きくて白いスポンジケーキのようだった。
半分くらい残っている。

道に服や家電が置いてあることは多いが、手作りの食べ物はなかなか珍しい。
パーティーで残ったものを置いて帰ったのか。

気になったが早足で通り過ぎる。

しかし気になりすぎる、15メートルほど先で立ち止まり引き返した。
先程の現場付近で立ち止まり道を歩く人を2人ほど通り過ぎるのを見送った。
通り過ぎる人もチラリとケーキの方を見ていた。

近寄って写真を撮る、ライトで照らすとらスポンジと生クリームだと思っていた部分はどうやら食パンとクリームチーズだった。
何層もサンドイッチになっていてどうやらスパイスやチーズ、スライスきゅうりなどがあしらってある本格的なサンドイッチだった。

一体どんな経緯でこの雨の中放置されるに至ったんだろう。

何枚か写真を撮り触ってみると食べられそうだったので、3段目のきゅうりは避けて4段目のチーズの部分を摘んで食べてみた。
酒と空腹感と持ち前の好奇心が発揮された瞬間である。
クリームチーズの部分も特に変な匂いはしなかったので飲み込んでもうひとつまみ食べた。

別段不味くも旨くもなかった。
あーあ、ケーキだったらよかったのにな、と思った。

家に帰ってから少し心配になりお茶やスープを飲んだ、もし変な成分や雑菌が入っていても効能がまぎれるようにブロッコリーと麺も茹でて食べた、どさくさに紛れてチョコレートも食べた。

結果ふたつまみの路上サンドイッチは胃の端っこに追いやられ、気がつけば朝6時になっていた。

幸い拾い食いをして腹を壊すことはなかったが
元々胃が弱いのでこんな時間にあれこれ食べると胃が荒れて体調を崩す。
結果ろくに眠れず胃の消化不良で唇がガサついた。
次の日の教会のコンサートでは眠気と闘う羽目になり、夜の集まりでまた酒を飲み飯を食い消化不良を起こした。


これはケーキに見えるよなぁ