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【姉みたいになるな】

5歳年上の姉は、ぱっと見、人目を引く”美人タイプ”。学生の頃から、男の人にチヤホヤされていた。ある日、男子生徒と、学校をさぼった姉。今時はたいして珍しくないだろうが、40年程前の田舎で起きたことだ。姉の学校ではそこそこの騒ぎになったらしく、さぼった日の深夜まで、両親、姉と、我が家にやってきた先生で話し合いがなされた。おこちゃまだった私は当然、蚊帳の外、話し合いの詳細は不明だ。

ある時は、「君の家の近くの公園で待っている、来てほしい」と、同級生の男の子から夜9時過ぎに家の電話がかかってきた。翌朝、我が家の家の門に、姉の名前が彫られたシルバーのブレスレットが引っかかっていた。今だったら、ストーカーと警察に通報されてもしかたがない。

父の弟には、双子の女の子がいた。父の弟が我が家へ遊びに来た時、「ウチの双子の妹の方は、出不精でね~。休みの時も、家で本を読んだり、テレビを見たり、年頃なのに家から出ないんだよ」とこぼしていた。それを聞いた父は、

外に出るのが好きじゃないのか、それはいいじゃないか!

外交的で、男性の目を引く姉とは対照的な弟の娘を父は絶賛した。それを隣で聞いていた私は、これは、”父からの無言のプレッシャー”だと感じた。

お前は姉みたいになるな

素直な私は、父の期待に応えようと、クラスメイトと遊ぶ約束はほどほどに、部活やクラブ活動には参加せず、学校が終わるとまっすぐ家に帰宅した。学校が休みの日も、両親の買い物の同行も拒み、家の中で一人で過ごした。高校生になるまで、クラスメイトの男の子と話をしたことはほとんどなかった。

私の出不精、軽度(?)の男性恐怖症は、こうした家庭環境から作られたのかもしれない。だが、私は後悔はしていないし、父や姉を恨んだりもしてにな。なぜなら、もし私がもともと社交的で、人並みに恋愛に興味があったのに、こうした外的要因で自分を抑圧をし、アラフィフで独身の今の自分を恥じていただろう。だが、それは全くない。

HSPなので、広く浅く人と付き合うのは疲れる。一人でいろいろなことに思いを巡らすことの方が楽だし、人との”スキンシップ”から、その人の感情を色々拾ってきてしまうので、今も苦手だ。

父はそんな私の気質を見抜いていたのか、見事に彼の戦力にハマってしまった。だが、もし父が今生きていて、50歳になろうとしても男の気配はなく、自分の精神世界にしか興味が持てない私を見て、それはそれで嘆いていただろう。

追記:onionioni2020さんのイラストを使わせていただきました。ありがとうございました。

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