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16歳で見た夢のスタート地点へ

私は今年、アフリカに行く。
”青年海外協力隊”というやつだ。
アフリカのルワンダという小国で、2年間暮らす。

「きっかけは?」とよく聞かれるのだけれど、
上手く答えられた試しがない。
いつもふざけているので、熱い話をするのが苦手なのだ。

どこかに記しておきたいと思いつつ、戸惑っていた。

だから今回はここで、時間をかけてじっくりと、思うままに書いてみようと思う。

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高校生の時だった。
英語の教科書で、ケビン・カーター氏がスーダンで撮影した「ハゲワシと少女」を見た。ハゲワシがうずくまる少女を狙っている、有名な写真だ。

その写真にひどく衝撃を受けた私は、写真について、撮影者のカーター氏について調べた。

そして、以下のことを知った。

・「ハゲワシと少女」の写真は、ピューリッツァー賞を受賞したこと

・カーター氏は、「なぜ少女を救わなかったのか」と追い詰められたこと

・ピューリッツァー賞受賞後に、カーター氏は自死していたこと

・あの写真を撮影後にカーター氏はハゲワシを追い払い、少女はよたよたと給餌所へ向かっていたこと

・カーター氏はその後打ちひしがれて泣きながら煙草を吸っていたという目撃証言があること

私はしばらく、このことについて考え続けた。

「正義ってなんだろう」


考え続けて、考え続けて、出た答えは、
「誰が何と言おうと、カーター氏は、自分自身の役割を、十二分に果たしただろう」という考えだった。

一人の人間が短い一生の中でできることは、わずかしかない。

もし、カーター氏があの少女を見つけた時、シャッターを切らずに助けていたら、世界の誰一人としてその事実を知ることはなった。

そもそも、”助ける”とは何か。

病院に連れて行ったら、パンを与えたら、服を与えたら、その少女を助けることはできたのか。

とてもそうは思えない。

カーター氏が、自分の心を削ってでもシャッターを切ったことで、世界中の人々に惨状を知らしめることができた。

世界中が怒り、抗議するほどメッセージ性の強い写真だった。

とても誰にでもできることではない。それに抗議をした人々は、一体何ができたのか。


私は亡きカーター氏に、心からの敬意を抱いた。
そして、彼のようにアフリカに行き、自分の目で見てきたものを伝える活動がしたいと思った。

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「国際協力の道を志している」と言うと、「日本にだって貧しい人がいる」とか言ってくる大人がいる。

そんなことは知っている。
知っているし、「何の縁もないアフリカの人々を支援するなら国内の問題を解決すべき!」という考え方も、わからないでもない。

だけど、自国の問題を解決しないと国外に行ってはならないんだろうか?

私は日本に生まれたし、日本人としてのアイデンティティを持って生きている。
そして同じように、地球で生まれたし、地球人としてのアイデンティティを持って生きている。

地球規模の視野を持つことは、よくないことなんだろうか。


人それぞれ、短い一生を、自分の信念を守るために生きていいんじゃないかな。やりたいことをやって、いいんじゃないかな。

私はたまたまアフリカに出会い、心惹かれた。

そのときめきや直感のままに生きても、いいんじゃないかな。

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社会は、個々の役割分担で成り立っている。

夢を持つ人は多いけれど、実際に夢を叶えられる人は少ない。

皮肉なことに、全員が夢に向かって突き進んだら、社会は成り立たないだろう。でもそのおかげで、私や私のような人ががむしゃらな生き方をしようと、社会が成り立ってくれている。ちょっとやそっとで崩れるものではない。


私は何も持っていない。

富も名誉も、人に誇れる技術も資格も何も。

だけどアフリカに行きたい。強い気持ちはある。やる気と、元気に満ちあふれている。



「国際協力がしたい。お金はあるけれど、時間はない」
そんな人は、寄付をすればいい。

「日本にも貧困問題がある」
そんな人は、日本でできる活動をしたらいい。


人それぞれの、役割分担。他人にとやかく言われる筋合いはない。

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10年前、ケビン・カーター氏の「ハゲワシと少女」に心揺さぶられ、ここまでやってきた。

ついに今年、アフリカに行く夢が叶う。

10年間、寄り道をしつつも一つの夢に向かってきた私へ。

完璧な10年間ではなかった。だけど、長い時間をかけて、辿り着くことができた。

ここまで頑張ってくれてありがとう。

ここが、新たなるスタート地点。

今からの自分の人生に、わくわくが止まらない。



短い一生で
心魅かれることに
多くは出合わない
もし見つけたら
大切に・・・大切に・・・

星野道夫

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