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宿の物件探しで血迷った話


さて、コンセプトも決まったし、


立地のイメージも固まってきたし、


物件探しするぞ!

と、意気揚々と街に飛び出したのですが、探し方がわからない・・・
とりあえず普通に不動産屋さんのドアをあけて尋ねてみます。


私 「宿泊施設をしたいんですけど、空き物件ありま・・・」
A不動産「え、民泊?ないですよ」


別の不動産屋さんでも、

私 「宿泊施設ができる物件を探して・・・」
B不動産「あぁ、ないない、ないですよ」


みんな、「しっしっ」と邪魔者を追い払うような対応(ひどい!笑)


オンラインで賃貸サイトからもアタックしますが、
C不動産「弊社でも民泊運営をしておりますので、ご紹介は出来かねます」


ほぉ。


時は2018年。
民泊新法なる法律が成立して、全国でAirbnb(エアビー)などの民泊が爆発的に大流行したときでした。
ホテルもゲストハウスもボコボコ誕生して、宿泊業界は大荒れ。

私がしたいのは民泊と違うんだけどな。
あぁ、一軒家どころか一部屋も出てこない。

しかし、ひらめきます。
はっはーん。そしたら、すでに民泊をやってるアパートに空きがあれば、私も民泊からはじめられるのでは?

広島市の保健所を訪ねます。
「民泊をはじめる」と言えば、丁寧にいろいろと教えてくれました。
そして、どういう流れだったか、民泊の届けが出されている物件のリストもゲットしました。


しめしめ。よーし、しらみつぶしに探してやるぞ。


そして私はさっそく歩き回り、リストに載っていたマンションの、入口にある連絡先に電話してみました。

電話に出たのは、ひどくしゃがれた声の低いおじさんでした。

私 「空きがあれば民泊をしたいと思っているんですけど」

しゃがれ声 「あるよ。2億だけどいいの?」

ひぃ!(笑)

そこは、中四国最大の歓楽街のど真ん中。
昼間とはいえ、私の知ることのない闇の世界を感じた一幕でした。


そして歩き回った結果、悟ったのは、
民泊は、かつてのAirbnbのように、「家主が空いている部屋を貸す」っていうほのぼのとした世界ではなく、ガッツリと不動産業界に支配されているということ。

私のようなお金のない夢見がち人間ではなく、
有り余る金の運用をする富豪たちのお遊びともいえる。もちろん彼らはオーナーとして所有するだけで、運営は民泊代行なる会社に丸投げなのだとか。


・・・民泊代行だと?
調べたところ、どうやら不動産屋との太いパイプがあるようです。お金さえ払えば、希望のエリアでの物件探しから、予約管理、清掃、その他すべての運営をしてくれ、稼働が低い場合は保証までしてくれるという、おんぶにだっこもいいとこ。


なるほど。背に腹は変えられん。
民泊代行に電話します。
「物件だけ見つけていただけたら、あとの運営も経営もすべて自分でするので」
とは意気込んだものの、たとえ一部屋でも、なんやかんや初期費用が100万以上かかる上、自分で運営しても予約サイト以外の手数料もとるとのこと。

撃沈。

まぁ、そりゃそうだよね、じゃあ自力で見つけるしかないか。


一方、時を同じくして、
当時働いていたゲストハウスで知り合った方たちのなかでも、「いい物件あったら紹介するから、条件教えて」と頼もしい協力者が何人もいらっしゃったり、

友人のお母さんが、知り合いの不動産屋さんに、「とってもいい子で、一途に宿で修行を積んで、いま独立に向けて物件を探しているんです」と泣けるくらい親切に紹介してくださったり、


コネを使いまくりました。


しかし、残念ながら全然アタリなしです。
なーんも引っ掛かりません。


親切な友人のお母さんが頼み込んでくれた不動産屋さんが、はっきりと教えてくれました。

「民泊のための部屋を紹介してくれるような不動産屋はない。トラブルの元なので。すでに所有している物件がないかぎり、広島市内で個人ではじめるのは諦めた方がいい」

と。


ほぉ。


もう、これで最後にしよう。

失意の中、不動産屋のドアを開けます。

私「あの、民泊ができる物件探してるんですけど、やっぱそういうのないですよねぇ~・・・」

Z不動産「あぁ、あそこなら、なんでもして良いって言ってたよね」

え、なんだって?まじ???

Z不動産「今から見に行ってみます?」

そう言ってくれたのは、若くてイケイケな、やり手の営業マン感ムンムンの女性でした。
車に乗って、いろいろ話を聞いてくれます。

イケイケ営業マン「もう、絶対ここはおすすめ!私あの辺出身なんですけど、すっごい良いとこですよ!あの商店街、最高ですよ!絶対やった方がいいですよ!」

その場所というのは、私の希望する、広島市内の路面電車市内エリアから、かなり外れたところでした。

でも、市内から宮島まで通っている路面電車の駅がまぁまぁ近く、
郊外の繁華街ではある。
海も川も見えないけれども、
漁港なら歩いていけないことも・・・ない・・・かなぁ。

5~6階建てのアパートの最上階だったと思います。
エレベーターは、なし。

ひとり暮らし用のワンルームです。
8帖くらい?

うーん・・・。

イケイケ営業マン「何してもいいって言ってるんですよ、大家さんが。優しいおばちゃんですよ!今日決めてくれたら敷金礼金なしでいいし、上手くいかなかったら半年で解約してもいいようにしてあげます!こんな好条件ないですよ!ね!民泊チャレンジしてみたらいいですよ!」

確かに・・・
今までなにも引っ掛からなかったから、これが最大のチャンス。
勢いでやってみるのもありかも。

・・・よし!

そして、店舗に戻ります。
イケイケ営業マン「店長~!今決めたら敷金礼金ゼロでいいですよね!民泊したいんですって!応援してあげましょ!」

いつもこんな感じなんでしょうね。
店長と呼ばれた、これまた若い男性は、「参ったな」という笑顔で承諾。

私は手付金を2万ほど払って、不動産屋を後にしました。

ついに、れんげ荘の序章がスタートしたのか・・・!
小さく始めればいいんだよね、実験と思ってやってみよ!
よし。よし。よし!


しかし、翌日、我に返る私。


や、待てよ。
やっぱ、なにもよくないよあの部屋。
立地も、内装も、コンセプトに合わないじゃん。

全然上手くいく気がしない。
心躍らないよ・・・

それに、「今日決めたら」とかしきりに言ってたし、
いろいろ好条件すぎて怪しくない?
不動産屋さんは、私がこけようと関係ないもんね。
住むには良い立地なのに。
もしかして事故物件とか・・・


丁重にお詫びして、キャンセルと手付金を返してもらいました。


それ以降、「アパートの一室だけ借りて民泊からはじめよう」
なんて考えは捨て去りました。


完全に血迷った話でした。


しかし、そうは言っても、個人で広島市内で宿泊事業の物件を見つけるのは不可能に近いです。
家主さんと直接つながるしかない感じです。

2億あれば別ですけど(笑)


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