見出し画像

ジルべおじいちゃんとの出会い。②着物がつなぐ、曽祖母と私。

この記事は、これの続き。

パリの着物屋に置き去りにされ、長い20分が経過。すると、おじいちゃんは山盛りのポテトを抱えて帰って来たのでした。
そこからはおじいちゃんと、お喋りしながらポテトをムシャムシャ。
「わしの名前はジルベール。ジルべと読んでくれ。」
ということで、ジルべおじいちゃんと呼ぶことに。どうやらジルべおじいちゃんは、若い頃版画の勉強をしに日本へ渡り、そこで日本人の奥さんと結婚し、今はお孫さんがフランスの郊外に住んでいて・・・etc。終戦後ということもあり、そうでなくても日本へ留学するフランス人は、当時ほとんどいなかったらしい。まあそうだろう・・・今でも珍しいもん。「この人の人生狂ってんなあ・・・(良い意味で)」と思いながら聞いていました。最終的には日本で会社も起こしたらしい。

パリにあった日本

ジルべおじいちゃんのお店は、なんだか田舎の曽祖母の家の匂い。着物が並んでいるだけでなく、中はなんと畳だし、掛け軸があるし、ここパリだったっけ…?
そして壁には、大きな式根島のポスター。
「去年の夏に行ったんだ。とてもきれいだったよ。ユリアも今度行ってみなさい。」
このフランス人のおじいちゃんは、私より日本っぽい家に住んでるし、私が行ったことのない日本も知ってる…!
「パリの人は、日本のものが結構好きなんだよ。浮世絵なんて人気だし、着物も結構売れるよ。今日はダメだけどね。笑」

衝撃でした。いろんな意味で。
それまでは、美術には興味があったものの、ほとんど西洋美術。(フランスに行った理由もそれ)なのに、まさか憧れのパリのアンティーク市に、日本があった…!
そう言えば、おばあちゃんちに着物がたくさんあったなあと思って、ジルべおじいちゃんに言うと、
「そうやっておばあちゃんが大切にしている着物は、代々受け継がれたもの。とても良いものだよ。ユリアはそれをちゃんと受け継がなきゃいけない。」

ジルべおじいちゃんは今でも、あけおめメールを送ってくれる、中身が日本人のフランス人。笑 このおじいちゃんんとの出会いで、私の人生はちょっと変わった。

そして着物愛好家になった私

帰国後はすぐ、祖母の着物をみに行った。
「可愛すぎる…!!!」
どの着物も、可愛すぎる!素敵すぎる!着たい着たい!!ということで、貧乏学生なので、あらゆるコネを使って、知り合いのお母さんに着付けを教えてもらい、3回ほど習ったらもう、どんどん自分で着物を着ました。ついでに、大学では着物の研究までしてます。笑 ほんとに。笑

今は、よく祖母と着物を着てお出かけします(今日も!)。着物をあまり着なくなっていた祖母に、私が着付けしてあげたり、外国人の友達が遊びに来た時にも、着物を着せてあげたり、人に着せるのも手慣れたものです。

着物を通して知る、
母としての曽祖母

正直着物は、保管が大変。でも、祖母の家には、たくさんの着物がとてもきれいな状態で、保管されていました。祖母の若い時の着物や、曽祖母の物まで残っています。それがどれもとっても素敵で…!!センスのいい曽祖母でよかった!笑
成人式は、祖母の振袖を着ました。正直祖母は、やめときなさいよって言ってた。笑 でも、その振袖はたくさん刺繍が入っていて、本当に素敵でどうしても着たかった。しかも、柄にはとってもめでたい意味まで込められていて…。なんだか曽祖母の、母としての愛情が詰まっている気がして…。着ないわけがない!笑

正直曽祖母とは、全然話したことがありません。耳が悪かった曽祖母。幼い私からすれば、何を言ってるかもよくわからない、よぼよぼのおばあちゃんでした。
でもいまは、着物を通して、全く違うイメージの曽祖母を感じるのです。それは、優しくて器用でお洒落な、『母』としての曽祖母。祖母が持っている着物の多くは、彼女が嫁入りする時に、曽祖母が生地や柄を選んで作ったもの。中には、親子お揃いで作っているものもあるんです。祖母も、「それ、ひいばあちゃんのよ。ゆりはそれも着てくれるの?」と。
私が曽祖母の着物を着ていると、祖母は、自分の母親の懐かしい話をたくさんしてくれます。

幼い時は、ちょっと怖いとまで思っていた曽祖母。でもいまは、『一人の女性』として、曽祖母をもっと身近に、そして自分の血筋の中に、感じるのです。
今日は元日。着物を着て祖母と銀ブラしてきました。笑 今日来た着物は、小袖が祖母のもので、帯は曽祖母のもの。普通は、ひ孫まで受け継ぐことはない・・・のかな?笑 曽祖母は「変なひ孫ね。笑」と天国で笑っているかもしれません。

レオナルド・ダ・ヴィンチや、ドラクロワの作品がみたくてフランスへ行ったのに、まさかこんなことになるとは…。人との出会いって本当に人生を豊かにするんだなあ、と思います。ジルべおじいちゃん、元気かな。日本かパリでまた会えますように。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?