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【映画レビュー】PERFECT DAYS

第76回カンヌ国際映画祭で役所広司さんが最優秀男優賞を受賞した話題作「PERFECT DAYS」を見たので、そのレビューをします。
※ネタバレあり

映画「PERFECT DAYS」とは

もともと、「THE TOKYO TOILET プロジェクト」という東京のプロモーション目的で作られた映画のようです。「日本のトイレはすごいんだ!」「おもてなしなんだ!」というプロモーションですね。

THE TOKYO TOILET

内容としては、役所広司さん演じるトイレ清掃員の何気ない日常を描く映画です。派手な演出やストーリーはなく、何気ない毎日の様子が2時間流れていきます。

映画.comの映画紹介がわかりやすいので、引用します。

「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」などで知られるドイツの名匠ビム・ベンダースが、役所広司を主演に迎え、東京・渋谷を舞台にトイレの清掃員の男が送る日々の小さな揺らぎを描いたドラマ。2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、役所が日本人俳優としては「誰も知らない」の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞した。

東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、人生は風に揺れる木のようでもあった。そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように木々の写真を撮っていた。そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。

東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを、世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」に賛同したベンダースが、東京、渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いた。共演に新人・中野有紗のほか、田中泯、柄本時生、石川さゆり、三浦友和ら。カンヌ国際映画祭では男優賞とあわせ、キリスト教関連の団体から、人間の内面を豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞。また、第96回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされた。

2023年製作/124分/G/日本
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2023年12月22日

PERFECT DAYS : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

PERFECT DAYS 公式サイト (perfectdays-movie.jp)

派手でわかりやすいストーリーはないし、言葉少なめの主人公の表情から読み取らないといけないなどわかりやすさにも欠けるので、好みは分かれる映画だなと思います。

でも、私はとても好きな映画でした。特に印象に残ったことを2つに厳選してお伝えします。

印象に残ったこと①主体的に人生を選択する幸せ、そして、その裏側の犠牲

役所広司さん演じる主人公は、一人暮らしのトイレ清掃員。自分にとって何が幸せなのかを追求し、社会的地位が高いとは言えないトイレ清掃員の仕事を貫いたり、音楽ストリーミングの時代にカセットテープで洋楽を聞き続けるような人です。そして、木漏れ日を楽しんだり、植物を育てたり、仕事中の一期一会を人知れず楽しむ。毎日のルーティンもある。

幸せは人それぞれ、そして、何気ない毎日の中でその幸せな瞬間をかみしめながら生きる。

私にとってはとても理想的な生き方に見えて、感動せずにはいられませんでした。

ただ、一方で、この映画が奥深いと思ったのは、その自分ならではの幸せを手に入れるためには犠牲も払うのだということが隠喩されている点です。

恐らく、主人公は家族との関係をあきらめたのだと思います。結婚もあきらめたのかもしれません。(隠喩されているだけなのではっきりとはわからないけど)

何かを得るためには、何かを手放す。そうした現実もヒシヒシと感じざるを得ない映画でした。

印象に残ったこと②「今度は今度」「今は今」

言葉足らずの主人公が、めずらしくはっきりと話すシーンのひとつ。

「今度は今度」「今は今」

というセリフがあります。ざっくりこんな流れのセリフ。

姪っ子「海行こうよ」
主人公「今度ね」
姪っ子「今度っていつ?」
主人公「今度は今度」「今は今」

このセリフ、私はすごく印象に残ったんですよね。
主人公は「現在」「未来」の2つを明確に分けている。そして「未来」はざっくりと「未来」としか認識しない。「来週何曜日」とか「今年の夏に」など、詳細な予定も立てない。

あくまでも私の解釈ですが、今現在の瞬間にフォーカスするために、未来の予定を敢えて細かく刻まないということなのかなと思いました。

つい、未来が心配になったり、予定を詰めすぎたりしてしまい、今をなおざりにしてしまいがちな私は、はっとするシーンでした。



PERFECT DAYSのレビューは以上です。
いかがでしたでしょうか?

また、50歳、60歳くらいになったらまた違った感じ方をするかもしれない映画でした。時を経てまたこの映画を見てみようと思います。

また、この映画を見て東京という街はやはり魅力的で好きだなと思いました。人それぞれのいろんな世界が広がっていて、個性を発揮してもお互い干渉しない場所。学生時代を東京で過ごし、その後離れてしまった私としては、東京への憧れや自由な空気を再び感じてしまう映画でした。スカイツリーと隅田川の組み合わせもかっこいい。

最後までお読みいただきありがとうございました。






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