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山田君、これ作詞した人にYogibo持ってきて

 いわゆる座布団1枚的な、秀逸な言葉遊びが好きだ。お笑いや広告などで用いられることが多いが、しばしばそれは音楽の歌詞にも使われる。「音楽は音を楽しむって書くんだよ、歌詞なんてどうでもいいだろ。」という考えは物凄く理解できるのだが、やはり歌詞は曲の構成要素の一部である以上無視はできない。中高生の頃音楽好きを拗らせ、素直に周りの洋楽ブームに乗れなかった一因はそこにある。だって歌詞大事じゃん、女の子とドライブ中流すメロコアが和訳したら実はただの下ネタだったとか嫌じゃん。爆音でプッシーがどうのとか聴きたくないじゃん。

 もはや僕がブームに乗れず友達が少なかった要因はうだうだと言い訳がましい事を並べるからのような気もするが、とにかく歌詞に重きを置いているのだ。好きな歌詞は数えきれないほどあるのだが、その中でも今回は言葉遊びという観点で印象的なものを列挙してみる。

1.口に出して/Awich

口に出して 溜めてた分全部
口に出して 怖がらないでいい
口に出して 恥ずかしがらずにほら
全部飲み込むから口に出して

 だらだらと前置きしといて1曲目から早速下ネタなのは心底申し訳ない。でも下ネタと言葉遊びは凄く相性が良いと思う。下ネタは、万国共通ともいわれるほど分かりやすいユニークさと、公にできないという秘匿性から言葉遊びを駆使されることが多い。「言葉に表す」と「口内射精」のダブルミーニングで使われる「口に出す」に面白さと秀逸さがあって好きだ。Awichの曲でいえばNENEと作っている『名器』にも興奮した。成し遂げるの意味を持つ「make it」と「名器」がかかっている。ちなみにmake itにはセックスするという意味もあり、1つの単語で「せいこう(成功、性交)する」でかかってるの凄い。

2.欠伸/クリープハイプ

もの凄い大きいヤツに当たったら 欠伸をしてるって思ってる
だってアンタからしたらきっとそうだよね 欠伸してるようにしか見えないから

 下ネタの言葉遊びといえばやはり尾崎世界観大先生だろう。凄く不名誉な呼び方をしてしまったが、ただ上手くて面白いだけじゃなくどこか感情を揺さぶられる歌詞は尾崎氏にしか書けないもので崇め奉っている。『欠伸(あくび)』は水商売から抜け出せずにいる風俗嬢について歌った曲だ。女性が口淫をしている様子は男性から見ると欠伸をしているようで、それが現状を打破したいものの行動する気力はない風俗嬢のけだるさとマッチしている。

3.年貢 for you feat./旗本ひろし、足軽先生

待たせてごめんねって おどけてみせる僕に
あきれて笑ってる そう 庄屋さん

 延々と下ネタで進んでしまいそうなので、ここで少し違う角度のものを紹介する。
 歴史上の出来事や人物をテーマに作られるレキシの曲には、歌詞に言葉遊びが多用されている。この曲の歌詞は、納期が来ても年貢を納めない農民とそれを催促する庄屋のやり取りからなる。どんな曲だよ。上記した歌詞は一見しても凄さが分からない。曲を聴くと歌い方でわかるのだが、最後の「庄屋さん」は「show your sun」とかかっている。日本史・世界史の語句で意味の通る同音異義語を出したり韻を踏んだりする技術には毎度感動させられる。僕もその技術を身に着けたい。とても日常生活で使う場面などないが。

4.夢追人feat.KREVA/PUNPEE

えもいわれぬ気持ちはエモいじゃない

 次は我らがオタクの鑑、PUNPEEの曲「夢追人」の歌詞だ。HIPHOPは、早口で韻を踏む事で他ジャンルより圧倒的に多く言葉を羅列する点や、ストリート文化から来ており隠語が多いという点から言葉遊びが多いジャンルのように思う。中でもPUNPEEの歌詞は、1曲の中にいくつ散りばめられていて本当に凄いと思う。きっと常に上手いこと言わないと落ち着かないのだろう。上記した歌詞は、現代のとりあえずエモいと言っておけば良い風潮を一言で切り捨て、日本語の面白さを再認識させてくれる。元からあまり好きではなかった語彙だが、これを聴いてから僕は輪をかけて「エモい」を使わずに表現したくなった。

5.深呼吸/ハナレグミ

手放すことはできないから
あと一歩だけまえに
あと一歩だけまえに
もう一歩だけまえに

 言葉遊びとは少し違うかもしれないが、最後は大好きな歌詞を紹介したい。
 若い頃に描いた理想と現実のギャップに打ちひしがれた人を勇気付ける曲だ。大げさでなくすべての歌詞が疲れた心に刺さるのだが、最後の一節には何度も救われた。「あと一歩だけ前に」と連呼されると必然的に聴き手は「進もう」「歩こう」という前向きなフレーズが頭に浮かぶだろう。あえてそれを歌詞に含めず、落ち込んでいる(であろう)聴き手から自発的にその言葉を引き出すという構成だ。これを聴くといつももう少しだけ頑張ってみようという気持ちになる。ただの深読みだったら本当に恥ずかしくてやってられないのでそういうことにしておいて下さい。

 勢いで駆け抜けたが、改めて読み返すと前半と後半で書いてる人格違いすぎるな。名器で興奮している人が勇気を語ってはいけないと思う。書くことに熱中し過ぎてしまいデスクワークで腰がバキバキなので、だれか僕にYogiboをください。

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