「カメラを止めるな!」面白さの謎を解く

※以下、多少のネタバレ含みます。

普段なかなか映画館に行けず、行きたい映画が気付いたら終わっていた、ということが少なからずある私。
話題の映画「カメラを止めるな!」をやっと見にゆくことができました。
事前に情報を目にしない方が良い、と聞いていたので、最低限の情報(二重構造、長回し)くらいで観に行ったのですが、噂に違わぬ面白さでした。
場内では結構笑いが起きていて、私もかなり笑ったのですが、上映後に「前半きつかったし、なぜ笑いが起きているのか分からなかった。あれはリピーターだったんだね」という観客の感想を耳にしました。
でも私、前半からめちゃめちゃ面白かったのです。
そういえば数少ない事前に目にしたレヴューにも、「前半30分はつまらないがそこで席を立つな」というようなものがありました。
それで、何が面白いポイントだったのだろう、と考えてみました。

シュールな演技や演出、カメラワークの謎

これに尽きます。

劇中劇だとは何となく分かっていたものの、至る所でその構造が破綻しているのです。
それはタイトルの元になった台詞「カメラは止めない!」に端的に現れています。
二重構造自体は、エンターテイメント慣れした観客には珍しくも何ともないと思います。
しかし、何故ここで寺山修司ばりのメタフィクション?

その謎が気になるし、滅茶苦茶可笑しい。
あるシーンでのヒロインのわざとらし過ぎる台詞など、抱腹絶倒ものです。

その謎が解けるのが後半。
映画製作にあたり、プロデューサーの要求する無茶苦茶な条件がまた、あまりにもシュールで笑ってしまうのですが、この条件無しではこの映画は成り立ちません。
前半部分の違和感の理由が次々に明らかになってゆく後半は非常に爽快です。
そして、感動のラストシーン!
感動の方向性は少し違いますが、アレハンドロ・ホドロフスキーの「ホーリー・マウンテン」を思い出した人も多いでしょう。
観ていない人は是非、ご覧になってみて下さい。

虚構と現実が入り混じるこの映画は、映画や芝居とは実際にそういうものだというところを見せているのも、価値があると思います。
舞台の上や撮影現場では、すぐに演技のリアルさだとか嘘臭さだとかいう話になりますが、この映画の監督(役)は普段の自分が偽りで、芝居の中で却って本音を言っているのです。
再現ドラマの撮影シーンは分かりやすい嘘を演じていますが、実際の現場では恐ろしく真剣に嘘を作り出します。
しかし創作への熱量が生み出すものはもはや嘘ではなく、虚構という名の真実なのではないでしょうか。

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