『僕と私の殺人日記』 その13
※ホラー系です。
※欝・死などの表現が含まれます。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
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ユウくん早く殺して!
わたしは叫んだ。だけど声は届かない。早くしないと、ばれておかあさんに怒られる。
突然、視界が動いた。地面をキョロキョロしている。ユウくんが何をしているのかわからなかった。視界が止まる。その先に蟻がいた。ユウくんはそれを踏み潰す。
途端に、感覚が身体に戻った。おじいさんはまだ、突っ立ったまま固まっていた。 そこでわたしはおじいさんのおなかにナイフを刺してみた。着ていた作業着に赤いしみ ができる。
おじいさんはきょとんとした顔をしていた。おばあさんを殺した犯人が子供だと思ってもいなかったのだろう。膝が地面に崩れて、口から血を吹き出した。
わたしの肩の辺りに首があった。首に刃を当て、位置を整える。後はそのままナイフを横に滑らした。 喉から大量の体液をまき散らしながら、おじいさんは倒れた。わたしは血をたくさんかぶってしまい、臭いわと思った。
またまたユウくんと入れ替わった。ユウくんの泣きたくなるような感情が伝わってくる。
わたしは大体のことがわかった。どうやらユウくんはもっと先に気づいていたらしい。すぐに蟻を踏んで、ユウくんはわたしと交代した。
時間がかかると殺人がばれてしまう。すぐにここから出なければならない。 ナイフを流し台で洗って、刃を柄に戻す。靴を履いて、足に流れる血が地面につかないようにした。玄関から外を窺ってだれもいないことを確かめる。いないのがわかると、少し離れた田んぼまで走って、飛び込んだ。
ミーちゃん殺しで教わった通り、血を泥で隠した。真っ赤な血は茶色く染まり、どう見ても田んぼで遊んだ子供だ。ついさっき人を殺したとはだれも思わないに決まっている。
家に帰るとおかあさんにこっぴどく怒られた。殺人はばれなかったものの、服を汚したことを叱られてお小遣いを減らされた。
わたしは泣いた。あんなに頑張ったのに、なんでお小遣いを減らされないといけないんだ! 理不尽だ! お風呂で身体を洗いながら涙を流した。 そんな憂鬱の気持ちのまま、今日が終わった。
わたしは夢を見た。 ユウくんがうずくまって、泣いている。
「どうしたの?」
わたしは不思議になって聞いた。
「近寄るな! 人殺し!」
ユウくんはわたしに向かって暴言を吐いた。なんで怒っているのだろう。わたしはますます不思議に思った。
「おばあさんたちを殺したのを怒ってるの? なんで?」
「リナちゃんは人の命を何だと思ってるの! 命は大切にしないといけないんだ! お願いだからもう止めてよ・・・」
言っている意味がよくわからなかった。わたしの中で疑問が渦巻いて仕方がない。
「ユウくんは命を大切にしたいの? それとも命を差別したいの?」
わたしは、一番聞きたかったことを聞いた。
「どういうこと? そんなのみんな平等に大切にしたいに決まってるよ」
「でも、言ってることとやってることが違うよ? どうして?」
「やってること?」
「だって、蚊とか蟻は平気で殺してたじゃん」
ユウくんの顔色が変わった。答えれないのか黙り込んでいる。
「おかしいよね? 命を平等にとか大切にとか言ってるのに虫は簡単に殺してる。わたしは、命はみんな一つで同じものだと思ってた。ユウくんは命を差別して分けてたんでしょ?」
「分けて・・・?」
わたしはバカだけど、これだけは、はっきり言える。
「殺していい命と殺したらダメな命」
それからユウくんは何も言わなくなった。ただただ、泣いていた。
続く…
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