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詩 彼へ

私はあなたが羨ましい

あなたは電車を見回すこともないし
人の頭の後ろを見ることもない

あなたは私の目の輝きを消すこともできるし
増したように見せかけることもできる

あなたの目にはあなた自身が写っているのに
私の目にはあなたが写っている

どうしようもなく羨ましい

羨ましさが水を含んで
私とあなたの間に川を流す

それはときにせせらぎで
それはときに安眠を妨げる

あなたの目には川さえ写らず
荒れ果てた砂漠が横たわっているのに

苦しみに背を向けることを
苦しみと思わないあなたは

それを愛してさえいる

私はあなたが巣食う心を
いつの日か投げ出してしまうけど

あなたはそんなものを
初めから持っていない

私はあなたが羨ましい

あなたは躊躇なく私の指を握るだろう
その隙間から私は風を感じるのだ

私は私をもってして去らねばならない
そしてあなたはいつまでもそこに居る

あなたの留まるところには
雨が落ち、芽が生え、木々が育つ

私はあなたをなぎ倒そうとするかもしれないが
あなたの根が思ったよりも深いことを知るだろう

私はきっとなす術もなく
あなたを見下ろすと思う

今と同じ

私はあなたが羨ましい


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