【ショート恋愛小説】ルイくんからの『あいしTEL』&モノカキ女子とサッカー男子。
こちらの小説はTwitterにて、
珠芽(しゅが)めめさんが呟いた詩「株式会社 あいしTEL(てる)」
から着想を得て書いた恋愛小説です。
作中の年下彼氏「ルイくん」、
めめさんの詩の登場人物からお名前をいただきました!
めめさんの作品は、片想い男子が登場する不思議なSF風の詩。
ゆにおのは年下男子×年上女子の現代恋愛ものです。
是非、めめさんの詩と読み比べてみてください~。
※めめさんのTwitter→
追記 「モノカキ女子とサッカー男子。」(短編小説)
もう一作、短編小説書けたのでリンク貼ります!
ただ、「恋する少年・ルイ」「電話」てのだけがのこり、
肝心の「あいしTEL」のフレーズがいれられんかたです汗 力不足ーーー!
そして、モノカキ女子のお話なので久々にmonogataryにアップ!
monogataryに投稿してる女子高生の恋愛模様なり!
ルイくんからの『あいしTEL』(短編小説)
「あっ、またルイくんからの『あいしTEL?』だ!」
料理とお酒の並ぶテーブルの上で震える私のスマホを指差して、愛里が言った。
「ほんとだ、ルイくんからだ」
「鳴っTEL!」
「鳴り続けTEL!」
ゆみも千佳子もスマホの中で点滅する「ルイ」の文字を囲んで、口々にからかう。
「もぉーっ、弄らないでよっ!」
照れつつも、どこかちょっと得意な気持ち。
女友達にばれてなきゃいいけど。
私はスマホを耳に当てる。
「はあい?」
すると3人の女友達は、
「しぃ~っ」と互いにサインを送り合い、静かになった。
スマホから洩れるルイの声に聞き耳を立てようと言うのだ。
「俺だけど」
「わかってます」
「メイちゃん、まだ帰んない?」
私はスマホを耳から離して、時計を見る。
「つーか、まだ8時台じゃん」
「そうだけど……ねえ、随分静かよね。そこさ、居酒屋って感じないなあ。ほんとに飲み会?」
「そうだよ」
「……女子会……よね?」
「どういう意味ー?」
「……男の人おるんかなって思った」
「いません! 何よ、出かける前にうちらのグループLINEも見せたじゃん。
愛里たちと飲み行くよって。
ルイって私をいっつも信じないよね」
「だって……俺不安だもん」
「……何で?」
「だって……」
そして、出た。ルイの必殺技。
「ねえ、メイちゃん。メイちゃんは俺のこと、愛してる?」
女友達たちが「キターーーーーーッ!」というジェスチャーをし合う。
みんな相変わらず黙っているけれど、その表情ににんまりとした笑顔が浮かんでいた。
私はもう片方の手でジョッキを握り、
残っていたハイボールをグイッと飲み干した。そして言う。
「もう、あとでね! 今日はもう電話してくんなっ!」
そして、画面の赤いボタンをタップした。
そう、私の彼氏のルイはとにかく心配性。
同棲を始めてもう1年経つんだけど、
飽きもせずにすぐこの「俺のこと、愛してる?」の電話を掛けてくる。
そんなルイからの着信を私の女友達たちは、
「てる」と「TEL」をかけて
「ルイくんのあいしTEL」とひやかしているのだ。
「いやー、今日も聞けたね。ごちそうさまです、『あいしTEL』!」
「年下彼氏羨ましーっ!」
「束縛っちゃ束縛なんだろうけどね~。可愛い束縛だよね」
「すっごいよね。未だにメイのこと大好き過ぎで。羨ましいを通り越して、ウケる」
私はコホンと咳払いした。
「あんまからかうなっ。さあ、飲も飲も!」
それから、人数分のハイボールと
ちょっと珍しい種類のピンチョスを何種類か追加で注文した。
みんなの前では、「うざい」「恥ずかしい」って言っちゃうけど、
実は私はこのルイからの「あいしTEL」が、まんざらでもない。
つっけんどんに答える時だって、
ついつい緩んでにやけた声になっていると思う。
まさか、私が「男から」こんな電話を受けるようになるとは夢にも思わなかった。
過去の自分の恋愛を振り返っても、未だに信じられない。
私がルイくらいの年齢の頃……いつも自分が男を追いかけていた。
仕事に飲み会にと忙しい彼の携帯に何度も確認の電話をするのは、私の役割だった。
「ねえ、私のこと愛してるの?」
「どうして愛してるのに会ってくれないの?」
「本当は、他に女がいるんでしょ」
とにかく不安で自分が止められなくて、毎晩、こんな電話やメールばっかり。
今思えば、痛い女だったし、痛い恋をしていた――実際には、女どころか妻がいる男だとのちに判明した――。
「……時代は変わったよね~」
ふと、私は言った。
「何よ、急に。何の話?」と、愛里。
「何というか、私、この歳まで独身でいてほんとよかった。
昔はそういうの全然わかってなかったけどさ。
女が男にすがる恋愛は、女にとっていいことないよね。
女はいつだって、追いかけられてなくっちゃ」
「うわー、痛! 自慢か!」
「いやいや、違うって。
けど昔は『年上しかあり得ない! 年下とかない!』って思ってたけどさ。
この年齢になると、許容範囲が広くなるっていうか。
『別に年下でもいっかー』って付き合いはじめたら、結構よかったな~って思って」
「やっぱり自慢じゃん!」
あの頃の私と今話せるなら教えてあげたい。
これから先もうすぐ、女は30過ぎたら終わりとか、そういう時代じゃなくなるんだからね。つまらない思い込みなんか捨てて、もっと軽やかに生きられる時代が来るの。
だから、ろくでもない男のすがりつかず、もっと堂々としてていいよ!……って。
「あいしTEL」って、掛けるばかりじゃなくて、
掛かってくることもあるんだから。
なーんて、――自分とはいえ――若いコを説教したくなるのは、私も歳取った証拠かな。
これはこれで、また違う種類の痛い女?
それでも、今の自分のほうが私は好きだな。
◇
そして、女子会はお開きとなった。
私は二次会には参加せず、
愛里たちと解散すると、すぐにルイに電話を掛けた。
「……はあい」
ルイってば、少し眠そう。そしてちょっと不機嫌そう。
きっと淋しかったんだね。
だから、私は言った。
「ねえ、ルイ。愛してる!」
「……えー! 何で、メイちゃん、突然!」
「さっき電話でルイが訊いたじゃん。それへの答えだよ」
「……そお? そんならよかった」
「じゃあ、これから帰るね」
「うん!」
そう、「あいしTEL?」って尋ねてばかりだった私は
「あいしTEL!」って、語尾を「!」にできるようになったのだ。
――これもあの頃の私に言ってやりたいことだわ。
「?」ばっかりよりも、「!」って言うほうが楽しくなるよって。
20代の私がそんなアドバイスを聞き入れるはずないけどね。
そんなことを考えながら、
私は夜風で酔いを醒ましながら
ルイの待つ部屋へと帰り道を急いだ。
fin
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