パリこでかけ ケルン観光②戦争と修復と大聖堂
パリこでかけケルン編、“ケルン観光①ローマとゲルマンと大司教”に続き、今回はケルンの象徴であり代名詞であり希望であるところのケルン大聖堂を中心に、歴史を追ってご紹介します。
◆〜19世紀:4代目ケルン大聖堂
ケルンといえば大聖堂!ケルンの象徴であり代名詞であり希望であるところのケルン大聖堂は、1996年にユネスコの世界文化遺産に登録されています。ゴシック様式の建築物としては世界最大であり、その大きさ・精巧さ・荘厳さは見るものを圧倒し、黒い外壁は積み重ねた歴史の重みを感じさせます。
ところがこの大聖堂、実は4代目で、1248年の着工から紆余曲折を経て全てが完成したのは600年後の1880年と、意外と新しい教会です(ちなみにパリのノートルダム大聖堂は1163年着工、1225年完成)。
通常これだけ建築期間が長いと幾つかの建築様式が入り混じる事が多いのですが、このケルン大聖堂は13世紀に設計されたゴシック様式の聖堂の計画がそのまま活かされ、19世紀のネオ・ゴシック(ゴシック・リヴァイヴァル)様式が流行したタイミングで全てが完成したという珍しい教会です。というわけで、外装も内装もゴリゴリのゴシック様式を観る事ができます。
内部は高い天井と美しいステンドグラスに彩られ、息を飲む荘厳さです。内装はパリのノートルダム大聖堂を参考にしたとの事で、写真を比較するとかなり似ています。
◆〜20世紀:戦争と大聖堂
ケルンは第二次世界大戦中もっとも多くの空襲を受けた都市であり、大聖堂も14発の直撃弾を受け内部は大打撃を受けたものの、辛くも外観は残り、その後修復が行われて今の姿となっています。そんな“戦争と大聖堂”を物語る写真を、ケルン老舗の香水店の展示コーナーで見る事ができました。
名称:4711
住所:Glockengasse 4, 50667 Köln
少し話はそれますが、ケルンは香水発祥の地で、フランス語のオーデコロン(eau de Cologne)は“ケルンの水”という意味です。こちらは老舗の香水店で、その独特の名称“4711”は、ナポレオン・ボナパルト率いるフランス占領下にあった1796年に、建物に番号をつけるよう命令が下され、たまたま付けられた番号がそのまま屋号となり今に至るそうです。という事で、2018年で創業225年を迎える超老舗香水店は、ケルンの歴史を見続けてきました。こちらの本店の2階には、そんな香水の歴史を展示していて無料で見学する事ができます。
特に印象深かったのが上の写真、第二次大戦終戦直後の荒廃して更地となったケルンの街と、4711の看板、そしてその向こうにそびえ立つ大聖堂の姿。写真の周りには、おそらく戦争を乗り越えた香水の便が陳列されています。第二次大戦では激しい空爆のため、ケルン市内の9割の建造物が破壊されたそうですが、そんな中でも毅然とした姿で立ち続ける大聖堂は、きっと人々の大きな希望になった事でしょう。
◆〜現在:修復と新表現
第二次世界大戦後、大聖堂は何度も改修を繰り返してきました。上の写真の左側が白くなってしますが、こちらは新しく修復された部分です。元のデザインを踏襲しながら美しく再建されています。
逆に、新しい解釈で再建されたのがこちらのステンドグラス。前掲のステンドグラスの写真と見比べてみても、かなり独特です。こちらは“ドイツ最高峰の画家”と言われるゲルハルト・リヒターの作品で、コンピューターでプログラミングして描いた作品だそうで、あまりに独特のため、今でも賛否両論あるそうです。
フランスでも、エッフェル塔からポンピドゥセンターからルーブル美術館のピラミッドまで、新しい(または新しすぎる)芸術は、出現当初は必ず賛否両論がありながらも、だんだんと街に馴染んでいき、いつかはなくてはならない存在になるようです。
逆に、雑草ボサボサで建物の真ん中に取り残されたローマ時代の遺跡を見ると、歴史的な遺産や遺構はそのままの形で残せば良いという物ではなく、常にその時代の解釈を加えていく事も、“大切に残す”事になるのではないかと思うのです。
そして、“大切に残す”とはどういう事かを考えさせてくれる美術館がここケルンにはもう一つあります。
◆現在〜:コロンバ美術館にみる、大切に残すという事
名称:聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館(Kolumba Museum)
住所:Kolumbastraße 4, 50667 Köln,
こちらは2007年に開館したコロンバ美術館。ローマ時代の遺構の上に築かれた教会が、第二次世界大戦で破壊され廃墟となっていた場所で、遺構と教会はそのままに補強し、上に美術館をつくってしまったという、大変新しい考え方の美術館です。
外観は、残っている教会の外壁にコンクリートの壁を重ねていますが、色調が調和していて冷たさを感じません。ランダムに穴の空いたブロックが二重に重ねられていて、中から見ると木漏れ日のような光が優しく降り注ぎます。
1階は、教会の壁面と地下のローマ時代の遺構がそのまま残され、所々大きく損なわれた様子が、渡り廊下を通って真近に観察する事ができます。木漏れ日のような光と自然風が入る、少しひんやりした空間で見る遺構はとても美しく、何とも静謐な空気がそこにはありました。
神秘的な階段を通って上の階に行くとそこは美術館。特徴的なのは、現代アートと古代の美術品をテーマごとに展示している事。ローマ時代の遺跡から出土した鏡と、鏡を使った写真作品と映像作品を同時に陳列されていたりと、展示方法もかなり独特です。
ローマの遺跡とキリスト教会と現代アートの美術館が融合するこの美術館こそ、ケルンという街の歴史を表現する新しい形であり、遺跡や遺構を“大切に残す”ことの一つの答えではないかと感じました。
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