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楽をしたいわけじゃない

せっかくいらしたのにすみません
窓口に立てる者がおりませんので
本日は閉店させていただきました
諸般の事情をお察しください
#ジブリで学ぶ自治体財政
 
公務員の労働環境改善への市民のかかわりについて、こんな記事を書きました。

市民はサービスを受ける主体である一方で、サービスを提供する自治体に納税し、自治体運営の権限を付託し、それを監視する経営者の立場であること、また、市民が職員の労働条件悪化をないがしろにして、その労働環境が生み出す業務成果の品質との関係性に無関心であれば、自分たちが経営する自治体そのものの品質低下、ひいては自分たちが享受するサービスの質や量を悪化させてしまうことを指摘したところですが、多くの市民はそのような立場に自分がいるということを自覚できないのだろうなと感じています。
そんな中、その試金石ともいえるような事例が報じられました。

福岡県の古賀市での取り組みです。
今の開庁時間は午前8時半~午後5時ですが、窓口対応の多くを担う市民国保課に訪れる人は午前9時~午後4時が約85%を占めるため、朝夕の時間帯での短縮を検討することとし、窓口対応が減る時間や労力を行政のデジタル化(DX)に使い、業務の効率化や職員の働き方改革、政策立案を進め、最終的に市民サービス向上につなげる狙い、とのことです。
職員の正規の勤務時間である午前9時以前や午後5時以降の開庁をやめ、職員の時間外勤務が発生しないようにした自治体はこれまでも複数あるようです。
職員が時間外勤務をしてまで窓口開庁時間を延長するのか、というのはわかりやすいバーターですが、市民からすれば享受してきたサービスの切り捨てとの受け止めも考えられ、慎重な検討が必要になることでしょう。
 
一方で、このようなケースもあります。

山梨県の市川三郷町は、このままの財政運営を続けていれば破綻の危機に陥るとして、去年9月に「財政非常事態宣言」を出し、公共施設の統廃合など、財政の健全化に向けた対策の検討を進めてきました。
町営の「ふるさと会館」、「文化資料館」、それに「大門碑林公園」内にある展示施設の営業日を、週6日から原則、週3日にすることで、運営に関わる職員の人件費など、4800万円余りを削減するということです。
あくまでも報道されているレベルでの比較ですが、古賀市の取り組みの場合、窓口対応が減る時間や労力を行政のデジタル化(DX)に使うということですので、市民は窓口開庁時間の維持か、それともDXに推進によるサービスの向上か、という二者択一をサービス消費者の立場で選ぶことになります。
一方、市川三郷町の取り組みの場合、営業日が純減するだけで市民の目にはサービスの切り下げにしか映りませんので、サービス消費者としての市民の目からは、抵抗感を持って受け止められるかもしれません。
 
しかしながら、私が主張している「市民が経営者である」という立場から見ればどうでしょうか。
古賀市の例の場合、市民が経営者としてこの事案を見たときには当然、先述の二者択一に加え、職員の働き方改革や新たな政策立案へのマンパワー投入など、さらに多面的な視点から論じることになりますが、実は市川三郷町の事例の場合も、営業日削減は他の施策事業を維持するための財源確保策として取捨選択されたもので、生み出された4800万円の財源は他の施策事業の維持に充てられるということを市民は経営者として理解し、その財政運営についてジブンゴトとして評価することになるのです。
 
職員の働き方改革に関しては千葉県がこんな取り組みを始めました。

1日の勤務時間のうち、午前10時~午後3時を「必ず勤務すべき時間帯」とし、始業・終業時間を15分単位で前倒ししたり後ろ倒ししたりすることで労働時間を確保。
土日とは別に、毎週1日を限度に「勤務を割り振らない日(週休日)」を設定できるようにし、働きやすい環境を整備することで離職防止や優秀な人材の確保につなげるとのことで、素晴らしい取り組みだと思うのですが、早速「県民に不便を強いるような改革はすべきではない」との苦情も寄せられているようです。
市川三郷町の例とはまた異なりますが、サービス消費者としての市民からは取り組みのメリットが見えづらく、単に職員が楽をして県民のお世話をする時間を削っているように見えるんですかね。
 
市民が経営者として施策や事業、あるいは自治体運営のありようについて監視評価するという姿勢を育むことは、様々な改革に取り組むうえで非常に重要な要素だと言えます。
しかし、古賀市、市川三郷町、あるいは千葉県の例も含め、その改革が目指す姿やその影響が自治体経営全般に及ぶ範囲について、市民が俯瞰することができなければ経営者としての市民は育ちません。
以前書いたものですが、私が繰り返し引用している記事があります。

選挙で選ばれた市長も、それを選んだ市民も、公務職場で仕事をしている我々公務員と同等に自治体財政の知識を持ち合わせているわけではありません。
まずは自治体運営の「中の人」としてそのイロハを理解しているはずの職員自らが、自治体運営のプロとして自分たちの自治体の財政について、あるいは政策について、市民がわかる言葉で語ることができるようになることが必要だと私は思います。
公務員の働き方改革についても同じです。
公務員の働き方改革が自治体経営、ひいては市民生活にどのような影響を与えるか、をわかりやすく市民に語ることができ、市民からの納得が得られなければ私たち公務員の労働環境は改善しません。
公務員の皆さん、あなたは自分自身の労働環境が改善され、働き方が変わることの意義を市民に分かりやすく説明することができますか?
 
★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885
 
★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/
 
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