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その道のプロとして

「俺が市長になったら税金をタダにするぞ」
「それ、いいね!賛成!」
「それだと市役所が大赤字になっちゃうんじゃない?」
「みんなが喜ぶならいいんじゃないの?ねえ、みんな!」
#ジブリで学ぶ自治体財政

「バラマキが止まらない」「続・バラマキが止まらない」とバラマキ批判を繰り返していますが,実はバラマキそのものを批判しているのではありません(笑)


よく読んでいただくとわかるのですが,バラマキを支持する人が陥りやすい二つの落とし穴について警鐘を鳴らしているだけです。

一つは,昨日もお話しした「政策としての議論不足」ですが,これはバラマキに限った話ではありません。
「我々が納めた税金の使い道を決める以上は,何のためにお金を使うのか,その目的は我々が実現したい事柄か,その目的達成のために選択する手段が適切か,といった政策への評価が必要」と昨日書きましたが,この「政策の評価」について,市民の日常生活で話題になることはほとんどありません。
ひょっとすると一般的な市民は「政策」というものが備えるべき論理の構造や政策を評価する際の基準や視点といったものを持ち合わせていないということかもしれません。

我々の周りには我々が納めた税金で整備・運営されている施設,税金を原資に提供されているサービスがたくさんありますが,それは何のために行われているか,どうして税金がその原資になっているか考えたことがありますか?
私は財政課在籍時にさんざんその議論をしてきました。
自治体が行うあらゆる施策事業の目的を明らかにし,その目的を実現することの必要性,緊急性,公共性,さらには目的を達成する手段としての効率性,代替可能性,適法性など,税金を使って市役所が行うことの妥当性をチェックしてきました。(詳しくは「それってホントにうまくいく?」をご参照ください。)
この議論を通じて詰めていたのは,市民がみんなで納めた税金の使い道が,本当に市民みんなのためになっているのか,それは納税者である市民にきちんと説明し,納得してもらえるのか,ということの確認でした。

私は思うのです。我々公務員自身がこの議論をおろそかにしてはいないか。
行政組織の意思決定に至る過程に介在する我々公務員がその議論をおろそかにし,政策の意義や効果について市民の理解が必要だと十分に認識をせず,その説明責任を果たしていないからこそ,市民や市民の中から選ばれる議員,首長の中に「政策」とは何か,「政策」たるものは何を備えてなければならないか,という認識が希薄な人たちが現れるのではないかと。
まあ,毎年の予算編成の中で財政課が口を酸っぱくして言ってもなかなか現場に響かない現状からすれば,それが市民に届かないのは推して知るべしということなのでしょうね。

もう一つは「財源構造の理解不足」です。
先ほど論じた「政策」とは、ある公的な目的を達成するために行政が行う行為ですが、この「政策」にはほとんどの場合お金がかかります。
このお金の話を抜きにして政策は論じられません。
そんなにお金をかけてまで実現すべきことか、そのお金をどうやって調達するのか、お金の出どころから使い道の制限を受けないか、お金が足りないからといってもっと負担を求めることができるのか、など、政策にまつわるお金の話は尽きません。
このお金の話をちゃんとするためには、自治体の財政構造やルール、すなわち何の名目で収入を受け取り、それは何に使われているのか、何に使ってはいけないのか、借金をしていいのはどういうときか、貯金は何のためにするのか、将来にわたって債務を負っていいのか、過去の負債をどうして払わなければいけないのか、など自治体のフトコロ事情についてきちんと知っておかなければ、政策の実現についてリアリティをもって語ることはできません。

しかし、現実はというと、市民はもちろんのこと、議会、首長、自治体職員ですらもその知識は生半可で怪しいものです。
これも私は財政課時代に少なくとも職員に対し、知っておくべき基礎的な情報、知識を共有するために職員向けの出前講座などやっていましたが、自治体職員として当然知っておくべき財政構造やルールについて、あまりにも知られていないことに愕然としました。
これでは市民に届かないのも無理はないですよね。

これまでのバラマキに関する私の投稿については、たくさんの公務員仲間から「いいね!」や「スキ」をいただきましたが、その方々にあえてお尋ねします。
なぜバラマキが政策として稚拙だと思うのか、自分の言葉で語れますか。
あなたが財政課長だったとして、現場から市民全員に一律で5万円給付したいという予算要求があったとき、あなたはどう査定しますか。
その査定理由を現場が理解し、それを現場から市民に伝えてもらって市民が納得できる言葉をあなたは持っていますか。

選挙で選ばれた市長も、それを選んだ市民も、公務職場で仕事をしている我々公務員と同等に自治体財政の知識を持ち合わせているわけではありません。
今回、岡崎市や丹波市で起こったことを憂慮するのであれば、まずは自治体運営の「中の人」としてそのイロハを理解しているはずの職員自らが、自治体運営のプロとして自分たちの自治体の財政について、あるいは政策について、市民がわかる言葉で語ることができるようになることが必要なのだと私は思うのですが皆さんはいかがでしょうか。
もし皆さんが、自分の住むまち,勤める自治体でよりよい自治体運営をしていこうと思うなら、市民の行政運営リテラシーの向上は必須です。
それは主権者教育として学校で教わるものだとか、社会人として当然の素養だと他人任せにして逃げられるような問題ではないように私は思います。

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