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【対人支援職】専門家は当事者であるべきか?

みなさんは、自分は○○の当事者だ!と感じていることはありますか?

今日は、専門家であること≠当事者であること、について書いていきたいと思います。

(「当事者」という言葉の使い方については様々議論があるようですが、本記事では触れません。)

専門家は当事者である必要はない。

強い選手は、優秀なコーチか?いや、優秀なコーチは、必ずしも強い選手ではない可能性がある。

出産を経験すると、産婦人科医として素晴らしい治療等ができるのか?いや、優秀な産婦人科医は、必ずしも出産を経験していない可能性がある。

子育て経験が豊富な人は、子どもと関わるプロフェッショナルなのか?いや、子どもと関わるプロは、必ずしも、実際に子育てをしているわけではない可能性がある。

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数年前、ちょっとしたきっかけで悪い条件が重なり、電車に乗ると動悸と吐き気に襲われる時期がありました。過呼吸発作でとにかく苦しく、予期不安も強く出ていました。

精神的プレッシャー、肉体的プレッシャーに強く、ストレス耐性は職場の誰にも負けない!と思っていた自分が、まさかパニック症状になるわけがない、と。しばらくは自分を奮い立たせるものの、時々襲ってくる不安感や動悸で、自分が自分でないような感覚になっていました。

結局、この後は服薬等はなく寛解しました。

この経験から、パニックに苦しんでいる人達の支援をできるか、と聞かれれば、自分の答えは「NO」です。

私自身がおこなった予期不安への対応や、マインドセットは参考になるかもしれませんが、治療を受けたり、研究を調べたりしたわけではなかったのであくまで、自分の「体験」でしかないという点で、たまたま良い方向に結果が出ただけ、としか思えません。


当事者であることで、共感ができる。

共感はコミュニケーションにおいて非常に重要です。同じような経験をしているというのは、大きな強みだと思います

実際に同じような生きづらさや悩みを抱える人と出会えると嬉しいですよね。様々な分野で当事者同士のピアサポートができるコミュニティがあります。当事者であるという時点で、共通点があり、親しみを持ったり、安心感を得られたりするのは事実だと思います。

過呼吸の苦しさや、予期不安のつらさは、私にもほんの少し共感できるかもしれません。でも、これはあくまで、共感。その実際は全く違うかもしれません。

ここで大事なのは、当事者であることで、「共感」はできるものの、それは想像の範囲でしかないということ。むしろ、自分の経験に引っ張られて柔軟性を失う可能性もあると理解しておきたい。他人のすべてをまるっとわかりきることは出来ないはず。

自分の経験はあくまで一例という自覚が大切

経験に基づいて想像力を働かせることは素晴らしいと思います。相手に歩み寄る力は非常に重要。実際に、自分の中に蓄積される経験から憶測して、ある程度の予後を予測できる、という事実もあると思います。

自分の経験を通じて、いくつかの改善案の提案をしたり、指針を示すことは出来るかもしれません。しかし、相手の話を聴かずに、自分の経験を押し付けることは危険。

こうやるとうまくいったよ、という個人の経験を情報として提供することには価値がありますし、それで悩みが軽くなる人がでれば、それは幸せなことであると思います。でも、もっと合うやり方があるかもしれない、という可能性を消してしまわないように、注意していく必要がある。

そして、聞き手も、その内容には再現性があるのか?本当に自分にも当てはまるのか?と一度立ち止まって考える力が求められるかもしれませんね。

専門家は、エビデンスに基づいた関わりを模索し続ける

対人支援を始めたばかりのころ、「自分は同様の支援を受けたことがない」とか「子育てしたことがない」とか「結婚して家庭を持ったことがない」とか、自分の経験していないことを経験している人、に対して関わっていくことに大きな不安を抱えていました。

しかし、実際に経験したら適切な支援が出来るかと言うと、実際はそうではない。まったく同じ状況、まったく同じ背景、まったく同じ身体や心を持った人間はいないから、今の自分のできる力を最大限に引き上げて、相手と向き合うことの方がよっぽど大事ですね。

結果がでるという研究や、証明を根拠に実践をすることで、自分が経験していないこと(当事者ではないこと)であっても、専門家としての関わりは出来るはずです。

想像力を働かせた「共感」と、研究等の根拠に基づいた方法の提案ができるように常に学び続けることで、当事者であろうとなかろうと、専門家としての自分を磨き続けられると思います。


専門家は、当事者である必要はない。
ただし、当事者だからこそ気付けることも多くある。

「自分の経験」と、「エビデンスのある内容」とを区別して
実践していくことが求められると考えます。

みなさんは、どんな専門性を磨きたいですか?磨いていますか?

コメント等お待ちしています。







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