見出し画像

私見ーパレスチナ支援、UNRWA拠出金再開、そして人道とは

2年前の2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が開始。
戦術核の使用示唆やドローンによる攻撃は、これまでの戦争の姿を一変させた。
さらに、“平和利用”であるはずの、原発(ザポリージャ)が攻撃対象にも。
仮に原発事故が発生し、運転制御ができない状態に陥ったら、「爆発すれば、チェルノブイリ(原発事故)の10倍」とも言われた。幸い、最悪の状態は免れているものの、3月9日に、「ウクライナ“ザポリージャ原発 事故に向かっている”」という見出しが飛び込んできた。
人間自らが作り出したモノによって想像を絶する壊滅が起こりうる時代、私たちには何ができるのだろうかと、311を前にして想う。(本稿は10日より執筆開始)

他方、2023年10月7日に始まった、パレスチナでの戦禍。
“パレスチナを実効支配する武装組織ハマス”がイスラエルを襲撃した。
こうした報道の仕方・印象が当時は強かったのではないだろうか。
単なる二項対立ではない複雑な歴史、アイデンティティー、宗教が絡みあうこの戦争は、今も続く。そして、罪のない人のいのちが失われている。

平和、人権、人道、
私たち人類ができることは何か。


パレスチナ問題をどの視点で見るか

パレスチナ問題については、あらゆる論考・文献で知ることができる。
分析者の立場によって戦争への考え方は違うが、今の国内外の世論はどうか、である。

昨年11月、世界各地で紛争調停などに携わられてきた伊勢崎賢治さん(東京外国語大学名誉教授)のお話を伺う機会があった。
あらゆる“戦地のリアル”を体現されてきた伊勢崎さんの言葉の重みは並じゃない。

「現代の戦争は、リアルタイムに何が起きているかがわかる。この時、世論は何を思うか、リアルタイムだからこそ、事実は変わらない、変えれないはずだ。」
「この〝非人道性〟をリアルタイムで見ることができてしまう現代。1人でも多くの命を救い、戦争犯罪の積み重ねを止めること」

この時すでに、ガザ地区では、罪のない子ども約4100人が1ヶ月で死亡、10分に1人が殺されているという事態となっていた。 
「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ」、武力によらない外交努力はこの時から求められていた。

筆者撮影。神奈川県藤沢市にて。

ここで筆者の話も少々。
(これでも)カトリックの神学部で学んだので、聖書や歴史の講義で、頻繁に耳にしてきた、パレスチナ、そしてイスラエル(または、エルサレム)と聞くと、宗教の聖地の印象が強い。

その意味でいえば、聖地でこのようなことが起きていることに、神は何を思うのか、各信者の信仰心を紐解けるならば、見てみたい。
とはいえ、宗教もそれぞの視点で考えは変わるものだ。いずれにしても、“心”の面からも即時停戦は明らかではないだろうか、と…。

パレスチナ問題についての文献が、多数あることは前述したが、筆者は、岡真理さん(早稲田大学教授)の「ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義 」を読んだ。
わかりやすい文体で、歴史構造も把握できるので、ぜひ手に取っていただきたいが、皆さん自身の視点から、この戦禍の現状を考えていただきたい。
戦争を止めるには、まずは自分ごととしてどう捉えるかではないだろか。

国会でもこの戦禍が問われ始める

昨年12月2日の衆議院厚生労働委員会、阿部知子議員が質問冒頭、ガザ地区のシファ、インドネシア、アル・アワダ等各病院への攻撃とその犠牲者数について、以下資料をもとに、武見厚生労働大臣の見解を問うた。

参考:https://www.emro.who.int/opt/information-resources/emergency-situation-reports.html
参考:https://extranet.who.int/ssa/LeftMenu/Index.aspx

大臣は、WHOによる医療物資等の支援体制を紹介した上で当時、以下のように答弁している。

 我が国としては、かねてから、人間の安全保障という考え方に基づいてこういった国際保健に関わって、そして、特にユニバーサル・ヘルス・カバレッジの観点から、こうしたグローバルヘルスの問題に積極的に取り組んでまいりました。
 したがって、こうした戦闘地域においてもやはりこうした医療提供体制というものは確保されるべきものであり、そのためにも国際機関がそれを支援する役割は極めて大きいと思っております。
 日本は、十月下旬に一千万ドルの緊急無償資金協力の実施を決定をして、国連のパレスチナ難民救済事業機関、UNRWA、ここでは保健担当責任者として日本人の清田さんというドクターがいらっしゃいますけれども、そこ及び赤十字国際委員会を通じて、食料、水、医療等の人道支援を実施しているところでございます。
 また、WHOは、十二月十日にパレスチナ自治区における健康状況に関する執行理事会特別会合を開催する予定でございまして、日本は、執行理事国として同会合に参加をして、そして、同地域における安全で安定的な医療の提供体制が確保できるようにWHO及び加盟国と協議を行うこととしております。
 こうした形で、引き続き、国際機関と連携をしつつ、このガザの問題にしっかり取り組んでいきたいと思います。

衆議院HP同委員会議事録より抜粋、太字筆者

UNRWAがいかに重要な組織であることが述べられていたことに注目されたいが、のちに1月29日、日本政府はUNRWAへの3,500万ドルの追加拠出金を一時停止を発表し、現在に至っている。一時停止した理由は報道にある通りだが、この答弁で示される組織の中身を考えれば、平和憲法を謳う我が国が人権を蔑ろにしているといえないだろうか。

さらに、質問は続く。
阿部議員は、「今この瞬間も、取りあえず戦闘を停止していただかなければ、医療者も死んでしまいます。二〇〇二年に、同じようにイスラエルとパレスチナの激しい戦いがあったとき、国会は停止決議を上げております。今、日本の国会は、そういう決議一つ上がっておりません。」と指摘。

大臣もこれに対し、「このような人道上の問題がガザ地区で起きていることは看過できないと思います。したがって、戦闘を止めるというための努力を我が国政府としてもしっかりと努力するべきであるし、また、そのために、特にUNRWAといったような国際機関と連携をして、事医療に関する限りできる限りの支援をするということが必要になる」と答弁している。
しかし、今の日本政府はどうか。

UNRWAは、パレスチナだけではない

戦禍が一向におさまらない中、UNRWAへの拠出金が停止された。
ことの発端は、昨年10月のハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いが出たことだ。関与したとされる12人の職員のうち死亡した2人をのぞく10人が解雇されたとのことだが、テロへの関与(疑惑)は思わしくなくとも、UNRWAは、ガザ・パレスチナ地区以外も支援している組織であることを忘れてはならない。

そもそもUNRWAとはどのような組織なのか。
2月8日衆議院予算委員会での阿部知子議員と上川陽子外務大臣のやりとりから紐解く。

UNRWAの正式名称は、“United Nations Relief and Works Agency for Palestine Refugees in the Near East”. 日本語で、国連パレスチナ難民救済事業機関
以下、国連広報センターHPより抜粋するが、当初からパレスチナ難民支援をしていたが、そのエリアは広がり、サービスも多様にある。現地雇用もしており、住民にとっては欠かせいない組織である。

パレスチナ難民を直接救済する目的で1949年に総会が設立した。活動は1950年5月に始まった。パレスチナ難民問題の合意による解決が未だに見られないことから、その活動期限は定期的に更新されている。 最新の決定で2017年6月30日まで延長された。UNRWAは、中東に住む500万人を超える登録パレスチナ難民に必要不可欠のサービスを提供している。その中には、ヨルダン、レバノン、シリアの58の難民キャンプやガザ地区と東エルサレムを含む西岸に住むおよそ150万人以上の難民も含まれる。また、UNRWAのサービスには教育、保健、救済や社会福祉、キャンプのインフラ整備と改善、小規模金融、武力紛争時も含め、緊急援助などが含まれる。UNRWAは、2000年以来、進行中の危機がガザや西岸に住むもっとも脆弱な難民に与える影響を軽減するために、緊急人道援助を行っている。また、2006年以来レバノンで紛争の影響を受けた難民の緊急のニーズにも対応している。シリア情勢については、シリア国内の難民やレバノンやヨルダンに避難した難民に緊急援助や正規のサービスを提供している。

国際連合広報センターHP

世界各国からの拠出金で組織を運営しているUNRWAだが、日本はその上位国(以下図参照)。拠出金がなくなると、各種サービスの提供、関連する備品の調達、さらには雇用ができなくなり、給与を払えないなど、“サービスを提供する側”が深刻な事態に陥る。後述するUNRWA保健局長の清田明宏さんはその点でも拠出再開を強く訴えられていた。
UNRWAは、パレスチナだけではない。このことを頭の片隅に入れていただき、特に2枚目の拠出金状況をご覧いただきたい。活動継続への影響がどうなるかは明白だ。

外務省及びUNRWA資料より筆者作成
朝日新聞、BBC、外務省各資料より筆者作成。
特に日本の拠出金の順位等に注目いただきたい。

問われる“ジェノサイド”ー国際法から考える

昨年11月、南アフリカ政府は、国際刑事裁判所(ICC)にイスラエルがガザで戦争犯罪を行っていると訴え、12月29日には、「ジェノサイド(大量虐殺)行為」を繰り広げていると主張し、国際司法裁判所(ICJ)に提訴していた。
そして、年があけた1月26日、ICJは、「イスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザ地区でのジェノサイド(集団虐殺)を防ぐためにあらゆる対策を講じるよう、暫定的に命じた。ただし、戦闘の停止は命じなかった。」

世界世論からも批判されているイスラエルの行為。調査の確定には数年かかるというが、残虐な行為からして明らかではないだろうか。
他方、日本政府(外務省)は以下の談話を発出しているが、肝心のジェノサイド条約については、未批准である。

南アフリカによるイスラエルに対する国際司法裁判所(ICJ)への提訴(暫定措置命令の発出)(外務大臣談話)令和6年1月27日
1.昨年12月29日、南アフリカは、イスラエルを国際司法裁判所(ICJ)に提訴し、その中で暫定措置を要請しました。本件に関し、1月26日(現地時間)、ICJは、南アフリカの要請を踏まえ、暫定措置命令を発出しました。
2.この暫定措置命令は、イスラエルがジェノサイド条約違反を行っているか否かを現時点で判断したものではありませんが、イスラエルに対し、ガザ地区のパレスチナ人との関係において、ジェノサイド及びその扇動を防ぐための措置をとること、緊急に必要とされる基本的サービス及び人道支援を供給することを可能とする措置をとること等を命じるものです。 国連の主要な国際司法機関であるICJの暫定措置命令は、当事国を法的に拘束するものであり、誠実に履行されるべきものです。
3.今回、ICJは国際人道法の遵守と人質の解放にも言及しましたが、我が国も、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難し、人質の即時解放を求めるとともに、イスラエルに対して、自国及び自国民を守る権利の行使に際して、国際人道法を含む国際法を遵守するよう求めてきています。
4.国際社会における法の支配を重視する我が国として、この機会に、ICJが果たしている役割に改めて支持を表明します。
5.我が国としては、引き続き、関係国・国際機関と緊密に意思疎通を行いつつ、全ての当事者に、国際人道法を含む国際法の遵守や、関連の国連安保理決議に基づいて誠実に行動することを求めつつ、人質の即時解放、人道状況の改善、そして事態の早期沈静化に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けていきます。

外務省HP

そもそもジェノサイド条約とは何か。
以下資料も参照いただきたいが、1948年に国連総会で最初に採択された人権条約で、「平時または戦時を問わず、集団殺害(ジェノサイド)を国際法上の犯罪と規定」している。現在、同条約を批准、また同条約に加入しているのは、153の国。他方、繰り返しになるが、我が国は、署名、批准、加入のいずれの体制もとっていない。

2月8日の衆議院予算委員会では、阿部知子議員が今度が上川外務大臣に、「なぜ批准しないのか?」を問うた。
大臣は、同条約について、集団殺害の行為等を国内法により犯罪化する義務を課しているということに言及した上で、「条約を締結するためには、条約上の義務と、また国内法制との関係、これを整理する必要がある」と答弁。

なお、平成25年11月5日の第185回国会法務委員会/西田譲(当時日本維新の会)議員も、「なぜ我が国はジェノサイド条約を批准していないのか」と質問。外務省参考人は、「日本はジェノサイド条約には入っておりませんけれども、今申し上げましたような集団殺害犯罪、このように国際社会全体の関心事である重大な犯罪を犯した者が処罰されずに済ませてはならない〜。共同謀議の点について、国内法で担保ができているのかという点につきましては、今後さらに締結の際に必要なものとして検討し、必要であれば、国内法の整備、さらにその内容等についても検討していく必要があると思います。」答弁されており、その“整備”が長年続いていると言える。
いずれにしても、“明らか”に該当しうる事態に日本政府がどう対応しうるかは重要だが、人道支援・戦争の即時停戦は待ったなし!そこで超党派の議員が動き出した。

外務省HP等より筆者作成

超党派 人間の安全保障外交の推進を考える議員有志の勉強会

2月6日、超党派 人間の安全保障外交の推進を考える議員有志の勉強会立ち上がった。与野党の議員が数多く参加し、現在まで5回開催。
筆者は裏方として関わっているが、非常に大切な学びを享受いただている。
第1回目開催に合わせての勉強会設立趣旨は以下の通り。
各回のダイジェストを記載する。

 昨年10月7日のイスラエルに対するハマスの攻撃への「自衛権」という主張の下で、イスラエルからのパレスチナ攻撃、とりわけガザ地区への大量空爆や病院、学校、難民キャンプ等への攻撃に到っています。これに対して国際的な懸念の声が広がり、12月には国連総会で153ヶ国の賛同の下、「人道目的の停戦」も決議されました。しかし、残念なことにイスラエル、パレスチナの戦闘は今も続いており、この間ハマスの攻撃に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)職員が関与したという疑義の中で、日本を含め10ヶ国がUNRWAへの資金援助を停止を表明、今月末には活動の継続ができない状況に追い込まれています。
 停戦も合意されず、人道支援も絶たれれば、難民の危機的状況はさらに悪化します。
 他方、南アフリカをはじめ、グローバルサウス5ヶ国から国際司法裁判所に提訴された「ガザ地区におけるイスラエルのジェノサイドを戦争犯罪」として捜査する依頼に対して、国際司法裁判所(ICJ)はそれを受理し、1月26日イスラエルにあらゆる防止措置を講ずるよう命じたとされます。
 今後ともイスラエル、パレスチナ問題を国際法に則って解決することを求め、またハマスやイスラエルの人質となった人々の解放、パレスチナ難民への人道支援等も含めて人間の安全保障外交を掲げる日本の果たすべき役割を考えていくべく、有志議員勉強会の開催を計画したいと思います。

2月2日発出の同勉強会案内

第1回(2/6):宮田 律氏(一般社団法人現代イスラム研究センター理事長)「パレスチナでのジェノサイドを防ぐために-ICJ命令と人道支援-」

宮田氏より、「ガザ紛争〜国際司法裁判所の命令とイスラエル攻撃継続の背景、またパレスチナ問題の略史」をテーマにご講演いただく。
そもそもパレスチナとウクライナを跨ぐ歴史構造はどうなっているか。今後どうすべきかを考える機会となった。

筆者撮影。

第2回(2/14):清田 明宏 氏(国連パレスチナ難民救済事業機関保健局長)「UNRWA, 現地からの報告」

緊急帰国されていた、UNRWAの清田氏からお話いただいた。
水など医療に必要なライフラインが壊滅し、感染症が蔓延。拠出金停止により、スタッフの給料も払えず「ガザ住民への死刑宣告」と。戦争を止めることはもちろん、必要な人道支援の継続を図ることが最優先課題であることが再確認された。
即時停戦!支援再開を!と、各党議員、NGOからも多くの声があった。

一番左、清田氏

また、UNRWAと連携し活動されているJICAの方も参加。その取り組みの一つが、「母子手帳の普及活動」だ。
普及に尽力された、中村安秀氏も参加され、パレスチナと日本の関係について広義に議論できた場ともなった。

簡単に歴史を見ると、UNRWAが活動を開始した頃の50年代には、新生児と出産直後の母親の感染症が大きな問題となっていた。そして、2005年より、世界で最初のアラビア語版母子手帳が開発され、2008年からはヨルダン川西岸のパレスチナ自治区の全公立医療機関、UNRWAやNGOの医療施設でも手帳の運用が開始。
5年後の2010年には、ヨルダン川西岸(89%)、ガザ(63%)と普及率が広がり、現在ではほぼ全てのパレスチナ難民の母親に使用されている。2022年には、西岸に10万冊、ガザに6.5万冊配布している。
その後、JICAとUNRWAは、スマホアプリ版「母子手帳」も開発し、電子カルテとも連携し、UNRWA保健センターを巡視した記録を母親が閲覧することも可能に。

ガザでは毎日、180人が生まれているという情報もある中、子どもの健康とウェルビーイングが今、とても厳しい状況にある。こうしたことも鑑みたとき、母子のいのちの情報を紡ぐことも重要だ。

UNRWA HPより作成

第3回(2/29):フィリップ オステン 氏(慶應義塾大学法学部教授)「国際刑事法と国家の役割―ジェノサイド条約等から考える日本の国内法整備の課題」

国際刑法がご専門のオステン氏からレクチャー。ロシアによるウクライナ侵攻が開始され2年。そしてパレスチナ・ガザ地区の戦禍では、罪のない子どもや女性の命が失われ、重大な非人道的行為と人権侵害が蔓延している中、ジェノサイドを防ぐためにも、国際法に則る人道外交を日本から構築すべき。そのための法整備はどうあるべきか貴重な示唆をいただいた。

筆者撮影。国際NGO等関係者参加も多数。

第4回(3/6):中嶋 優子氏(国境なき医師団日本会長)、村田 慎二郎氏(同事務局長)「パレスチナ・ガザにおける活動報告」

昨年11月14日から12月7日までの約3週間、ガザ地区南部での医療活動に従事された、国境なき医師団の中嶋優子さんをお招きして、現地の医療状況等ついてご講演いただいた。1万人超の子どもの死者が出ている中、医療を施し命を繋いでも、栄養失調や続く戦禍で亡くなる子も多く、「犠牲者が他の戦争と比べても桁違いに多い。」と中嶋さんは全国各地で訴えて来られた。現地映像を踏まえての報告に一同、沈黙。
一時停戦中に、無垢な子どもたちが中嶋さんと触れ合う姿もあった。
罪のない人がなぜいのちを奪われなければならないのか。そこに人権は、平和という言葉・概念は存在しないのか…と心が抉られる思い出筆者も聞いていた。

同じくMSF事務局長の村田慎二郎さんも、「援助を必要とする人に届く支援体制」を訴え、人を助ける医療が攻撃されていることが問題だと警鐘。

命すら紡ぐことへ予断を許さない状況下、現地で中嶋さんが見てきたことを通して、人道支援のあり方について考えた機会であった。

左から、村田事務局長、中嶋氏

第5回(3/12):パレスチナ人道支援国際関係機関 一括ヒアリング

政府が、UNRWA以外でガザで活動する国際機関に「緊急人道支援」を実施したことはご存じだろうか?
R5補正予算(約2,500万ドル/約34億円)でとR5当初予算による緊急無償資金協力(3,200万ドル/約44億円)となっているが、各機関での課題等はないかということで、一括ヒアリングを実施した。参加機関は以下のとおり。

(国際機関)
WFP(国連世界食糧計画)
UNICEF
ICRC(赤十字国際委員会)
UNOPS(国連プロジェクト・サービス機関)

(NGO)
セーブ・ザ・チルドレン
JVC(日本国際ボランティアセンター)
MSF

各団体の取り組み状況、また、UNRWAなくしてガザ支援は成り立たないとの声も多数。
全ての人の保護、即時停戦待ったなしが再確認された。
政府が今後こうした声をどう受け止めるか…。
なお、JVCさんのXで今回も様子をアップしてくださっているので、ご注目いただきたい。

議員に加え、有識者、NGO関係者など多数の参加

各国大使は何を語るかー各国世論の声は

最後に、この間、3カ国の大使と面会する機会をいただいたので、概要のみ記す。
初めは、ワリード・シアム駐日パレスチナ常駐総代表部大使だ。
現地の状況を映像等からお話しいただいた。
先日も報道にあったように、市民へも物資搬入が滞っていること。いわゆる“検閲”が長引くこと、さらには、必要な人に必要なものが届いていないこと。
また、病院や家への攻撃など、即時停戦を日本からも訴えてほしいとのことであった。

続いて、ヨルダン。
リーナ・アンナーブ・駐日ヨルダン特命全権大使と。
ラマダン(3月10日〜)開始前に、なんとか停戦が迎えられるべきではないかとのご指摘。しかしながら、現時点では、それは叶わなかったという報道。

モハメド・アブバクル駐日エジプト大使とも面会の機会をいただいた。
“人道上”この起きていることをどうするか、と意見交換を深めさせていただいた。

空を見上げること

パレスチナ問題を知るにあたり、清田さんのご著書「天井のない監獄 ガザの声を聴け!」(集英社、2019年)を拝読した。
現地医療体制に加え、そこに住う人々の生活も鮮明に描かれているが、“戦争しか知らない子どもたち”が日本に来た時の様子が記されている。
そして、電気等安定したライフラインの供給に加え、“空が綺麗”という言葉が印象的だ。

私たち人間は、いいことも悪いことも、何かあれば、自然を、そして空を見て思いを巡らすだろう。しかし、ガザでは、空を見上げることすら危険な戦禍が隣り合わせている。

今回の記事のトップ写真には、筆者が元旦に撮影した青空にした。
誰しもが自由に空を見上げ、生きていけること。それがガザに生きる人にどうか届くよう祈る思いからだ。

戦争の即時停戦、人々を支えるUNRWAへの拠出再開を。
そして、これ以上、いのちが失われることなく、紡がれる世界を希求する。
人類は、平和を忘れてはならない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?