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自分らしく働くってなに。私にしかできない仕事なんてこの世にあるの?の答え

原稿を書くとき、いつも陥る沼がある。
それは既定の文字数に対し、下書きが倍以上になってしまうこと。

先日ついに、500文字の原稿に対して3000文字を書くということをやらかしてしまい、2日がかりで文字数削減を行う羽目になった。馬鹿である。

だけど私はこの件については反省しない。なぜなら大好きな脚本家・坂本裕二さんが、こう言っていたから。

「書いて消したものも、脚本に残っているはずだ」と思ってるので、捨てたものの量が、残ったもののゆたかさに繋がっているはずって信じてやってるんですけど。
脚本家 坂本裕二

書きすぎてしまう私はこの言葉にとても救われたし、残ったものがゆたかになるような消し方をしようと誓った。だから2日間もかかってしまって、日当で考えると大赤字なのだけど、それでも大切にしたいから、してる。

…が、どうも500文字に削ってしまった話、消した部分がよすぎて苦しい。私自身は手帳にしっかり言葉を刻み込んだものの、この話を私ひとりに留めておくのはあまりにも勿体ない。

このままでは自分の言葉であるかのように人に話してしまいそうなので、書ききれなかった話をブログに書くことにしました!(肝心の本原稿は秋ごろに出ます…)

アイデンティティクライシスと私

今年購入した自己分析ノート(byじぶんジカン

本題の前に、少しだけ私の話をします。そもそも私は去年知った「アイデンティティクライシス」という言葉について、ずっと考えていました。

アイデンティティクライシスとは、あるべき自分が分からなくなり「自分らしさ」を見失ってしまうこと

これまでは、たとえば大学卒業して就職しなさいとか、大企業に入ったら安泰だとか、女は30までに結婚して子どもを生みなさいとか、貯金がないと不安だよとか、「幸せ」「普通」の定義があり、ある意味そのレールに沿っていけば「あなたは順調に幸せですよ」という世間のお墨付きをいただける雰囲気だった。

だけどここ最近は「それぞれ自分の幸せを見つけよう!」という流れがきている。それはとても素晴らしいことのはずなのに「自分の幸せってなに」と苦しむ人が爆増しているという。その現象がアイデンティティクライシス、というものらしい。

で、現代という時代は「かつての正しさがおかしいと分かっていながらも、それにすがって生きざるを得ない時代」といえるのだそうで。

あ、と思った。私は今まで「好きなことをやって生きてきた」風にしてきたけど、実はアイデンティティクライシスだったのかもしれないと。

自分だけの幸せ、自分が本当にやりたい仕事スタイルについて、ずーーーっと模索しているけど答えが出ない。出ないのだ。それっぽいのは出ても、これだ!と思えていないのがホントのところ。

そもそも自分らしく働くって何?自分らしさを追求したところでこの世に「私にしかできない仕事」なんてあるの?そんな憤りを何年も抱えていたので、今回の取材で聞いた話がとてもとても響きまして。

前振りだけで何文字使うんだよ冒頭文の伏線回収かよ、と突っ込まれそうだけど、本題に入ります。(遅)

スキルに「らしさ」を加えること

取材したのは、株式会社上間フードアンドライフ・代表取締役会長をはじめ、コンサルティング会社や投資ファンドの社長職もつとめる上間喜壽さん。(名前出していいですよと許可をいただいたので出します!)

上間さんいわく「自分とは何者かが分かると、マイケルジャクソンになれる」とのこと。

マイケル?と不思議そうにする私に、上間さんはこう話してくれた。

「マイケルジャクソンは、『歌手』とか『R&B』とかじゃなくて『マイケルジャクソン』なんですよ。彼のCDを買う人は、ジャンルで買ってない。圧倒的な歌唱力とかベースになるスキルももちろん凄いけど、技術だけならもっと凄い人は他にもいるはず。だけどマイケルがマイケルである所以は、スキル+αの生き様。そこに惚れ込んでる人が大半なんです。」


ーーなるほど!たしかに私は音楽にあんまり興味がないけど、浜崎あゆみのことはずっと好きだった。自分と重ねて泣いた歌詞や透明感のある声はもちろん、バラエティで見せるハツラツさも大好きだった。実話をもとにした小説『M 愛すべき人がいて』は一昨年読んで号泣したっけ。

浜崎あゆみを脳内に召喚させている間も、上間さんの話は続く。

「実はみんな、それぞれのマイケルジャクソンになれるんです。どうすればいいかというと、スキルだけの勝負に持ち込まず「らしさ」を加えること。スキル+らしさがマイケルになる秘訣なんです。」


ーーでた、「らしさ」。
じゃあじゃあ、その「らしさ」はどのように発掘すればよいのでしょうか。

「らしさをどう出すか。それは『諦めること』です。誰かから好かれようとか、怒られないようにしよう、と考えることをやめること。」

「そもそも、『人を怒らせないようにしよう』とか『嫌われないようにしよう』という考えは傲慢です。何言っても怒る人は怒るし、そもそも人は機嫌よく過ごせる相手や言葉を自分で選べますから。人の意見にいちいち振り回されてる人は、自分の感情を他人に任せている不幸な人。そんな責任を背負っても仕方がないし、誰かの機嫌を心配するより自分の機嫌を大事にした方がいい。だっていつも機嫌がいい人って実はあんまりいないから。それだけで価値になるし、みんな機嫌がいい人と一緒にいたいものだから。」

「勇気を出して、自分らしくあることが何よりも大事なんです。他人になろうとしない。ダサさも欠点も見せて『私ってこういう有り様だよ』って言っちゃう。」

「人は自分の言葉でしゃべる人に惹かれます。同じ話でも『あの人から聞きたい』ってキャラを買いに行く。キャラが認められると、本人にとっても存在肯定になります。無理なく自分のことを好きになれる。そうやって力を抜いていくと、さらにパワーが出ます。実は頑張ってるうちはパワーは出ない。そういう意味で、諦めることが大事なんです。」

「自分らしくいるために、もうひとつ大事なことがあります。それは嫌なやつと一緒にいないこと。波長が合う人をきちんと選ぶべきで、ご機嫌を伺ったり、別れた後にため息が出るような人と一緒にいちゃダメ。関わる人を吟味することで、自分の表現に安心できるようになるからです。」

「勇気をもって進めば無敵になれる。無敵=最強ではなく『敵がいないこと』。相見積を取られない状態のことです。」


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--私は感動してしまって、終始うなずいていた。
しかもこの話、実は取材が終わった後の雑談なのだ。雑談でここまで話して下さるそのやさしさに参ってしまった。そりゃ人がついてくるはずだ。(もしかすると私からアイデンティティクライシスオーラが出ていたのかもしれない...)

ずっと答えが出せずにいた「らしさ」。今もまだ考えている最中だけど、答えを出すために必要な行動を知れたのはでかい。

いろんなことを諦めてみようと思った。「こう見られたい」「嫌われたくない」を手放してみようと。そして「私ってこういう有り様だよ」って晒してみようと思った。削り切れない文章をこうやってブログに書くということも、私にとってその一歩なのである。

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