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読書=自分とは違う誰かの視点で、この世界を覗きに行くこと

どの雑誌だったのかは忘れてしまったけれど、ここ数日ずっと心に残っていた言葉がある。

それは小説家・朝井リョウさんの「読書」に関するインタビュー記事。朝井さんは小説に必要な情報収集について、必要なものだけネットで検索する...わけではなく、関係する自伝やインタビュー、対談集をそれぞれ1冊ずつ購入すると話している。

自分がもともと知りたいと思っていた情報に巡り合うまでかなりの時間と労力を要するし、確実に効率が悪いと朝井さんは断言する。それでもその方法を貫くのは、小説を書く上で必要だと思っているからだ。その必要性について、記事にはこう書かれていた。

原稿を書き進めながら、欲しい情報をピンポイントにつかみにいっただけでは得られないものが、体内に搭載されていると感じるから。

「体内に搭載されるもの」とはなにか。

「視点」だ。

すかさずノートにメモした言葉がいくつかあるため、ここに引用する。

どんな言動も、その源にはその人が世界をどう見ているのかという視点がある。
読書=自分とは違う誰かの視点で、この世界を覗きに行くこと
視点とは思考のスイッチであり、それが増えていくのは大切なこと。

これを読んだとき、私は深く共感、いや投影し、「私にとって読書とは、まさにそれだ」と思った。

情報の取得をいくらでも効率化できるこの時代。だけど視点はどうだろうか。

もちろん「視点」を書き綴ったWEB記事もなくはないし、現にこの記事だって、私の視点を書き綴っている。だけど本当の意味で自分にない視点や、それによる思考を芽生えさえる、朝井さんの言う「搭載」に至らせるには、一定の時間をかけて、それこそ本を1ページずつめくりながら蓄積していくしか術はないのではないだろうか。

視点をふやすことが気軽に叶わなくなった今

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これまでは「本を1ページずつめくりながら視点を養っていく」ことが、日常のコミュニケーションで担えていたと思う。というより、私はこれまで読書にその役割を見出したことはなくて、視点・思考のスイッチを多く持つには、より自分と違う考えの人とコミュニケーションを取るのが一番だと思っていた。

特に意識したことはなかったけれど、私の友人たちは個性が抜群に豊かだし、私自身、ひとりで飲みに行って、知らない人と話すことがすごく好きだった。個性的な人と出会うと、これぞ自己拡張!とばかりに会話を楽しませていただいていたなぁと今になり、思う。

だけどコロナ禍だ。ただでさえ「気軽な雑談」が叶いづらいフリーランス。でも、だからこそ誰もがそうである今、読書であらゆる視点を搭載しておくというのはとても大切なことなのではないだろうか。

思考のスイッチをふやす読書

最近とくに考えさせられた2冊があり、その読書をきっかけに私の中で新たな読書法が生まれた。

『まとまらない言葉を生きる』は、著者が拾い上げてきた障がい者活動家の言葉や差別に関わってきた言葉を考察し、「弱者を守るための言葉」が世界に欠乏していることを訴え、考え抜き、そして問いかけてくる本。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、英国で暮らす親子が、人種差別をうけたり、人種差別や格差問題を目の当たりにしながらも、それらを正面から受け取り、見つめ、話し合い、考えていく姿が描かれた一冊だった。

読み進めながら、あまりにもワナワナと「きちんと考えなければいけない」という気持ちにさせられたので、これまでの読書とは違う形を取らざるを得なかった。

それは、本を読みながら終始となりにA4ノートをスタンバイさせ、ひっかかったことやモヤモヤしたことについて、いちいち立ち止まりながら書く、書きなぐる、というもの。シンプルだけど、これがすごく私には合っていた。

もともと本への書き込みは多い方だったけど、浮かんだこと全てを書き込んでしまったらその本は二度と読めなくなってしまう。だけど読書考察用としてなんでも書けるノートがあると、思わぬところまで思考を泳がせることができるのだ。

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ポイントは、可愛くないノートを使うこと。どんな汚い字でも、どんな些細なことでも書けてしまうプロの消費系ノートでなければならない。

視点を拾い集めて、自分を拡張していきたい

知識、情報の収集だけじゃなく、体内に”なにか”を搭載していけるのが読書。その”なにか”は、もしかしたら「無駄」だといわれるものかもしれないけれど、だけどそもそも、無駄をすべて省略した末に手に入るものって一体なんだろうか。そんなことを思いながら、今日もたくさんの視点を胸に、思考を巡らせていきたいなと思った。

ちなみにノートの一部をここに載せようと思ったけれど、あまりにも思考が丸裸すぎて恥ずかしいので、保留。また機会があれば載せようと思う。








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