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宇宙空間を使いこなせ!中国VSアメリカの宇宙覇権争い

みなさん、今世界では地上だけでなく、宇宙空間でも熾烈な争いが繰り広げられていることをご存じでしょうか?その中心にいるのが、世界の2大超大国、中国とアメリカです。

これまでアメリカが長らくリードしてきた宇宙開発の分野で、今や中国が急速にその地位を追い上げています。
この2国がどのように宇宙空間で覇権を競い合っているのか、見ていきましょう。


アメリカの独走を脅かす中国の台頭

アメリカは、冷戦時代から宇宙開発のリーダーとしての地位を確立してきました。1969年にアポロ計画で人類初の月面着陸を成功させ、長らく宇宙技術の最先端を走ってきました。軍事的には、GPSシステムや偵察衛星、ミサイル防衛システムなど、宇宙のインフラがアメリカの圧倒的な軍事力を支えています。しかし、ここ数年、中国がその勢いでアメリカに迫ってきています。

中国は、2000年代から本格的に宇宙開発に力を入れ、短期間で驚異的な進歩を遂げました。
その代表的な成果の一つが、2016年に打ち上げられた「量子暗号通信衛星『墨子号』」です。
この衛星は、量子技術を使って極めて安全なデータ通信を可能にするもので、盗聴されることなく情報をやり取りできるという画期的な技術を持っています。これにより、中国は量子通信分野で世界をリードする立場に立っています。
※量子コンピューティングがどれほど画期的な技術かは、後日記事にまとめます。

さらに、中国は独自の宇宙ステーション「天宮」を建設し、月面探査や火星探査といったミッションにも積極的に取り組んでいます。現在、ISSは2030年までの運用が予定されています。もし運用終了した場合、新たな宇宙ステーションを作らない限り、宇宙ステーション研究開発事業は中国の天宮がリードすることになります。
中国の宇宙開発技術で特に注目されるのが、ASAT(衛星破壊兵器)や、他国の衛星に接近して監視・妨害するRPO(接近・ランデブー操作)技術です。こうした技術は、アメリカの軍事衛星や偵察システムに対して直接的な脅威となる可能性が高いとされています。実際にRPO技術を用いた(と思われる)中国衛星によるアメリカ衛星への接近があり、一触即発となる事案も発生しています。
※RPO技術については私の記事「宇宙ビジネスの未来:衛星とスペースデブリの現実」で詳しく説明しています。

余談・・日本企業アストロスケールの重要技術

余談ですが…。
ここで注目すべきは、日本発の宇宙関連企業アストロスケールです。この企業は、宇宙デブリの除去に特化した技術を開発しており、特にRPO技術で国際的な評価を受けています。RPO技術とは、衛星が他の衛星に接近し、捕獲や修理、軌道変更を行う技術です。この技術は宇宙ゴミを除去するために開発されていますが、理論上は軍事利用も可能です。例えば、敵国の衛星に接近して妨害や無力化を行う「キラー衛星」としての用途が考えられます。

アストロスケールのRPO技術は、現在は平和的な目的で使われていますが、技術的なポテンシャルは中国やアメリカにとっても非常に貴重なものです。日本が宇宙開発において、技術的に重要な役割を果たしている一例と言えるでしょう。


アメリカの危機感と宇宙軍の設立

このような中国の急速な進展に対し、アメリカは危機感を抱いています。特に中国が持つASAT技術やRPO技術は、アメリカの宇宙インフラを攻撃・無力化する能力を示しており、これが実際に使用された場合、アメリカの軍事作戦や国防体制に重大な支障をきたす可能性があります。

そこでアメリカは、宇宙の軍事的優位性を確保するため、2019年に「宇宙軍(United States Space Force)」を設立しました。宇宙軍は、これまでの空軍や海軍と同じく、独立した軍事組織として、宇宙インフラの防衛と宇宙での軍事作戦に専念しています。これは、中国の宇宙技術の脅威に対抗するだけでなく、ロシアやその他の国々の宇宙軍拡への備えでもあります。


宇宙技術競争:中国VSアメリカ

中国とアメリカの宇宙競争は、技術面でも大きく対立しています。量子通信技術では中国がアメリカに先行しており、これは将来的に軍事通信の安全性を大きく左右する要素です。また、宇宙ステーションの独自運用を行う中国は、有人宇宙飛行でもアメリカに匹敵する技術を誇ります。

一方、アメリカはスペースXやブルーオリジンといった民間企業の強力な支援を受け、月や火星への探査、さらには商業的な宇宙旅行分野で中国に対抗しています。特にスペースXは、再利用可能なロケット技術を持ち、宇宙への輸送コストを大幅に削減することで、宇宙の商業化を加速させています。

さらに、アメリカは宇宙インフラを守るため、従来の衛星技術に加え、新たな防衛技術の開発にも取り組んでいます。特に、他国のASAT攻撃に備えた衛星の分散配置や、防御機能を持つ新型衛星の開発など、宇宙での防衛力を強化しています。


宇宙を制する者が世界を制する?

では、なぜこれほどまでに宇宙空間が重要視されているのでしょうか?それは、宇宙が今後の軍事・経済活動において、地球上のどの領域よりも大きな影響力を持つからです。宇宙にある衛星は、地上での軍事作戦、通信、ナビゲーション、気象観測など、あらゆる活動を支えています。これらが妨害された場合、現代社会は大きな混乱に陥るでしょう。

そのため、中国もアメリカも、宇宙での覇権を握るために技術を競い合っているのです。アメリカはその長年の優位性を維持しようとしていますが、中国は新しい技術でアメリカを追い越し、宇宙でのリーダーシップを狙っています。この激しい競争は、今後も続いていくでしょう。


結論:中国とアメリカ、どちらが宇宙を制するのか?

宇宙は今や、地上での戦争や安全保障の鍵を握る重要な領域です。中国が量子通信やRPO技術でアメリカに迫る中、アメリカは宇宙軍の設立や民間企業との連携を強化し、これに対抗しています。また、日本発のアストロスケールのRPO技術も、その軍事利用の可能性から重要視されています。宇宙を制する国が、次なる覇権争いで優位に立つと言われていますが、その結果がどうなるかはまだわかりません。しかし一つ確かなのは、宇宙が未来の戦場であり、中国とアメリカの覇権争いはこれからも続くということです。

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