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山岳部標準時から

仕事の都合でアメリカに引っ越した。

からりと晴れた空港からLyftを駆って街に出ると、至るところに大小の星条旗がなびき、シボレーとフォードとGMCのピックアップトラックが砂埃を巻き上げながら片道4車線を疾走している。地元のスーパーに行くと、色とりどりの見たことのない野菜やお菓子が雑然と並んでいて、捌く努力を放棄したような巨大な肉の塊が置かれ、冷凍食品のコーナーだけで駅近のまいばすけっとくらいの売場面積を占めている。どこに行ってもセルフレジにタッチ決済もできる端末が置かれ、空港で作ったドル紙幣は財布の中で行き場所を失いくしゃくしゃになっている。家に帰ってテレビをつけるとシンプソンズとサウスパークとアメリカンニンジャウォリアーズが延々と流れていて、渋々開いたNetflixのテラスハウスは周回遅れだ。Yelpで近所のランチを調べると、大体どこのお店にもハンバーガーがあって、ドリンクは風呂桶みたいなカップを渡されて注ぎ放題の飲み放題だ。意図して小さめのステーキを頼んだのに、空いた隙間にポテトが余計に注がれ、一昨日持って帰ったナチョスがまだ冷蔵庫にあるのに、持ち帰り用の箱を貰う羽目になってしまう。

こっちに引っ越してきて何週間も経たないのに、ここまでの経験が偏見を塗り重ねて煮詰めて作り上げた自分の中のアメリカ像を地で行ってて笑えてしまう。

コロナ禍にミネアポリスに端を発したBLM運動、混迷を極める大統領選挙など。今まさに未曾有の危機に瀕する超大国で暮らしていく中で、今感じていることや考えていることがどう変わっていくのかとても楽しみだ。

そんな過程を文章に残すべく、ちょびちょび更新していきたいなと思う。


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