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「街と波」-2022年1月-【月刊フォトエッセイ 「写真と巡るささやかな旅路」Vol.001】

今年から、新しい月の始まりに、先月の写真を振り返ろうという試みを始めます。

写真は撮った瞬間から過去のものとなり、死に近づいていきます。スマホで写真を撮って、気が向いた時に写真フォルダを眺めて終わりにしてしまうことは多くないでしょうか。そんな写真たちを延命していくのではなく、別の形から過去の写真を再定義するとともに、長い目線で記録として残していきます。写真だから写るものがあり、言葉にすることで見えるものがあります。イメージとしては、「写真を編む」。適当に表層を切り取った写真表現にならないように、写真と真摯に向き合い続けるためです。自分の表現世界をどこまで拡張して、内と外を越境できるかどうか。

毎月テーマを掲げて写真を撮るつもりは一切ありません。1ヶ月の中で撮影した写真の中から、時間が経過とともに感じたことを綴ります。1年間で偶然と必然の12の物語を生まれて、いつ振り返ったとしても色褪せることのない世界を観測していきます。これは僕の物語であり、あなたの物語でもある。

月刊フォトエッセイ「写真と巡るささやかな旅路」。一人でも、多くの方に愛される写真であり、旅であり、物語になることを祈って。

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#001「初日の出」@鎌倉・由比ヶ浜 2022.01.01

新年の始まりは、人生初の初日の出を見に行った。
電車で揺られながら、早朝の鎌倉・由比ヶ浜に赴いた。とんでもない寒さに身体を震わせながら、早朝5時前から浜辺に漂う。
徐々に日が昇り始めて、初日の出を観るために人が集まり始めた。波打ち際の世界に触れながら、その瞬間は劇的に訪れることはなかった。
待つこと、1時間弱。
自分の身体が凍えるほどに、写真も震えていくのを感じる。
ホッカイロなんて持ち合わせていないから、手を擦り合わせる。
そして、待ちわびた初日の出の瞬間。
一斉に、全員が同じ方向にカメラを向ける。
世界が一つにつながる瞬間であり、ここが旅の終着。
撮って終わりなのか、撮ってから始まりなのか。
元旦から、サーフィンをするサーファーにとっては365日のうちの1日なのかもしれない。
いつの間にか、身体の寒さを忘れて、心の暖かさで満ち足りた。
そして、急速な眠気に襲われて、自宅で眠りについた。
来年はどこで初日の出を見ようかな。

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#002「高速渋滞」@静岡・熱海親水公園、三嶋神社 2022.01.03

初日の出から、間もなくして、前日の夜に1日弾丸静岡旅を決行。
早朝にレンタカーを借りて、高速渋滞に巻き込まれる。途中、小田原PAで小休憩と軽食を済ませる。そんな感じで、昼過ぎ頃に熱海に到着。
目的地はもっと先だったけれど、これ以上先に進んだらレンタカーを返却する時間に間に合わなそうなので断念。
とりあえず、熱海親水公園で遊んだ。砂浜で走ったり、遊楽船を眺めたり。
僕は、毎月1回旅をすると決めてから、とてつもなく海が好きになった。
波の音、匂い、街との共存、時間の流れが心の平穏につながっている。
海無し県民としての憧れとともに、島国であることが誇らしくなった。
海の幸を巡る旅をしたいなと思いつつも、自分の食と懐の細さがきつい。
今回の旅の目的は、初詣であることを思い出し、三嶋神社に向かう。元旦は初日の出を見て満足してしまったので、初詣が遅れていた。いつも同じ場所で初詣するのも悪くないけれど、いろいろな街の初詣に溶け込んでみるのが面白そう。カメラを持ってから、思いつくままに旅をする楽しさを知った。
三嶋神社で到着してから、駐車場を探すのに一苦労。ぐるっと一周回って、ようやく駐車。そして、しっかり感染症対策を徹底している神社の隊員の方を見ていて、本当に社会に必要な仕事って何だろうなと考えた。写真を撮るのは誰でもできる。自分は何のために写真を撮るべきかを見つけなければいけないと実感した。そして、神社でお参りしたら、恒例の甘酒を飲んで、心を温めた。
最後に、さわやかでも食べて帰ろうと向かったけれど、2時間待ちで帰宅に切り替える。帰り道も高速渋滞に巻き込まれて、静岡滞在時間よりも車内時間の方が圧倒的に長い旅路でした。最後に、夕方の富士山を拝めて、この街にとって、これが当たり前の景色。渋滞に巻き込まれたからこそ、写真で記録することもできた。こんな旅も悪くない。
これから旅をする時は、一泊二日の旅にしようと思った。もっと時間の流れをゆるく感じられる旅をしていきたい。

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#003「東京散歩」@秋葉原駅 ~ 水道橋駅 2022.01.10

旅は月に一回を決めているから、日々どんな写真を撮っていくか模索している。写真を撮るために、が主語になってくると、目的と手段がすり替わっていくのが怖い。
僕なりに導き出した答えは、旅をするように散歩すること。街に溶け込むことで、その街の空気感や人の流れを触れていきたい。その中で生まれる写真には、魂の在り処が宿る。僕は、そう信じて、祈りを込めるようにシャッターを切る。僕は、まだ自分の写真と自信を持って言えない。
自分の気持ちが赴くままに撮る写真には、何が写るのだろうか。記録的な写真と記憶的な写真という視点から読み解くと、写真の奥深さの入り口を知ることとなる。僕の撮っている写真は、記録7割・記憶3割といったところ。何をもって、良い写真であるかを判断するかは往々にして他者が決める。でも、自分の写真の良さは自分で選択したものなかにしかない。写真は、写したものが全て。何を写して、何を写さないのか。仕事で写真を撮るときは、目的がはっきりしているので、迷うことなくシャッターを切ることができる。
旅をしているときは、より自分の感性を試される。写真をたくさん撮れば、写真が上手くなるのは当然のこと。僕が大切にしたいことは、写真を通して、何を伝えるかということ。
今回の散歩は、秋葉原駅から。とは言いつつも、秋葉原の写真は撮っていない。目的地も決めずに、とりあえず西に進む。最初に訪れたのは、神田明神。僕が心惹かれるのは、神社や寺など日本の文化的なもののと海や池などの自然の流れを感じられるものであることを知った。
東京に暮らして4年半を経ったしても、東京のことも日本のことも全然知らない。それを時間をかけて知っていくことが、僕にとっての旅をする理由なんだと思う。これからの10年は、学ぶことを軸に写真を撮っていく。
僕の知識欲は留まることはない。
散歩で出会う景色は、毎回違うし、何もないなんてことはない。人が生きる街であることは変わりはない。変わっていくのは、僕ら人間なのだから。

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#004「東京タワー」@芝浦ふ頭 ~ 東京タワー ~ 愛宕神社 2022.01.17

東京散歩をするようになってから、東京タワー見たいと思った。浅草行くことは多いので、スカイツリーを目にすることが多い。でも、東京タワーはちゃんと自分の目で見たことない。それで、今回の散歩という旅を計画した。いきなり東京タワーに行ったら、面白くないので、レインボーブリッジも見ようという大胆さ。時間の許す限りの散歩が始まった。
新橋駅で降りようと思っていたら快速に乗っていたので、一駅通り過ぎて、浜松町駅から歩き始めた。レインボーブリッジを目指して、海沿いを歩く、歩く、歩く。高速道路の高架下の世界を見ながら、この街は波の静けさと車の行き交う音が交互に鳴り響く。ちょっと歩けば、橋から川を眺めることもできるので、面白い街。そうやって、この街の良さを吸収していたら、モノレールに心惹かれる。カメラを始めたら、撮り鉄になりたくなる気持ちがわかる気がする。1月から始まった「鉄オタ道子、2万キロ」にもハマってしまったのはここだけの話。玉城ティナが主演のが、また良い味を出している。演出も映像と写真のどちらの美しさを引き出している。旅がしづらい世界になったとしても、旅の根源的な面白さを思い出させていくれる。旅ができないからこそ、今できることに集中するための活力になる。世界をどう捉えるかで、世界の見方は変わっていく。僕の写真は、外から見たらどんな風に見えるのだろうか。機材とか編集の話をするのではなくて、写真で表現している世界の話とか写真以外の興味関心のあることを対話できる写真仲間が欲しいと思った。自分の見ている世界が正しいとは思っていないから、実際に言葉を交わしながら、より良い世界を作っていきたい。
そして、田町駅を通り過ぎたら、いよいよ東京タワーをお目にした。超望遠から撮影しようと思ったら、まさかの接続不良でレンズが認識してくれない。20分くらい格闘して、諦めた。仕方ないから、年末から使うようになったオールドレンズで表現することに集中し直した。スマホで見た東京タワーの写真がチラつきながら、自分はどう表現するのか悪戦苦闘。これで良いのかもわからない。気がついたら、Instagramで10枚くらい連投してしまう。あー、やってしまったと思いつつも、自分の表現力がまだまだ弱いことを理解した。このまま進んでいけるのか、不安になりながらも、自分を信じられるのは、自分しかいない。
東京タワーを後にして、新橋駅まで歩こうと決めて、途中で愛宕神社に立ち寄った。23区内の勝手なイメージで、自然はほとんどないと思っていた自分がいた。散歩するようになって、勝手なイメージで決めつけてしまうのが自分の悪い癖だなと反省する。失敗の連続だから、人生は面白い。

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#005 「定点観測」 @田園調布駅 ~ 多摩川駅 ~ 武蔵小杉駅 2022.01.28

散歩というか旅というかそんな呼称に囚われしまった自分がいた。そんな表面的なことに悩むくらいなら、全部が旅。それで、いいんじゃないか。東京散歩という響きに目を眩んでいた。ハマるの一時的で、飽きるのは一瞬、なんて燃費の悪い車を走らせているんだ僕は!
今回の旅は、初の写真仲間と。彼は、仕事を辞めて映像と写真の道に進む。その選択をして、僕みたいな小さな写真作家に連絡をくれたんだろうと思った。僕は、誰かに教えることは苦手。自分は答えを出すことよりも、見方や問いを探し続ける人間なので、人が求めていることに辿り着くのに時間がかかる。寄り道したくなってしまう。
今回の旅の目的は、初めてオールドレンズで写真を撮った場所で今の僕の写真を定点観測するため。いきなりその地に訪れないのが、僕のスタイル。
最初に訪れたのは、田園調布駅。
ここを北上すれば、自由が丘。南下すれば、多摩川。この街は、時間の流れが緩やかだ。街の雑音も聞こえないし、人がゴミゴミしているわけでもない。落ち着いた平穏な世界が広がっていた。この街は素敵だなと感じた。
目的地に向かって、今回は南下して、多摩川駅近くの浅間神社を目指す。ここから見下ろす多摩川と電車を見るのが良き。隠れスポットなので、人も少ないから落ち着いて景色を堪能できる。ここが、僕が初めてオールドレンズで撮影した場所。一年前の僕、ナイスチョイスと伝えたい。そのくらいここからの景色は、一年に一回訪れる価値がある。
浅間神社から、多摩川沿いに行く。今度は、電車を見上げて写真を撮る。上から見るか、下から見るかで、写真の味わいは変わる。橋の上で横から撮っても面白い。写真というのは、撮り手の視点が9割といっていいくらい大切。そして、カメラは正面の世界しか切り取ることができない。それをたった一枚の写真で表現できる方々は、本当に偉大だと思う。僕も、愚直に写真を撮り続ける。撮り続けることで、自分の視点は洗練されていく。
写真を撮り終えて、午後から撮影の仕事があるので、沿線的に武蔵小杉まで旅を続行する。自転車か車で通過するだけがほとんどだったので、橋を歩く感覚は、新鮮だ。つい寄り道をしてしまう。橋を渡るのに、何分かかるんだ。一人だったら、平気で1時間は滞在できる謎の自信がある。

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編集後記

1月のフォトエッセイは、5つの短編形式でお送りしました。2月は、どんな物語を紡ぎ、どんな写真を撮れるのか楽しみです。ちなみに2月どこを旅しようか考えていません。コロナの感染者数も増え続けているので、東京を中心とした小さな旅をすることになるでしょう。

写真を撮っていると、遠かった世界が近くに感じられます。でも、撮った写真を見直してみると、まだまだ遠い世界なんだなと痛感します。ちなみに1月に現像した写真の総数は約700枚でした。今回、ご紹介できたのは、75枚でした。ここにしか載せていない写真もあります。これから新しい写真の楽しみ方を伝えていければいいなと思っています。

ここまで鑑賞いただきありがとうございました!

2月の【月刊フォトエッセイ 「写真と巡るささやかな旅路」】でまたお会いしましょう。

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