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【越境人材資本経営】社員の越境学習と外部人材の活用を組み合わせて、プロジェクトレディな組織を創ろう

正解なき時代に必要なパーパスと変化対応力

不確実性に満ちた時代において「正解はない」となると、いつ何時襲い来るかもしれない競合の拡大やインシデントなどに対応するための「変化対応力」が重要となってきます。

一方で、情報のオープン化が進み、開発能力の均質化によって商品・サービスの差に違いが生じなくなる中で、「パーパス」など何を目指すかが大きな差別化要因になっています。

フリーハンド領域を仕組みとして開発する

そんな現代において、固定化された組織やキャリアの危険性の高さは言うまでもなく、常に既存の商品・サービスの開発およびデリバリーの遂行とともに、20%ルールよろしくある程度の可変性を担保させる必要があります。

つまり、組織の一部に社員が主体的にフリーハンドで自身の活動プロセスを自己決定できる領域を開発するのです。

また、柔軟な雇用形態やリモートワークの拡大により、フルタイム・出社型の正社員だけでない人材活用も広がりを見せています。副業・兼業人材や在宅派遣、プロボノ、アルムナイの活用など多様な選択肢が現れており、その時々の課題解決や将来的なDX・新規事業投資においてもかえって外部人材を活用したほうが、リスクを抑えて専門的なナレッジを獲得できる事例が多く生まれています。

越境人材資本経営とは?

上記のような組織運営を実現するためには、経営陣はもちろん、管理職やメンバークラスまで現代の時代状況と多様な選択肢の存在を理解し、かつ、外部人材の活用と外部環境への越境をそれぞれが実践することが肝要です。

そこにおいて重要な考え方が、越境する内部人材と越境してくる外部人材をともに資本として捉え、双方の越境機会の開発とそこで得られる知見やスキルの包摂を促進する「越境人材資本経営」の実行であると考えます。

越境による3つの効果

2つの越境による効果は大きく3つあります。①「社会の今と未来」の理解と②自身・自社価値の理解、③試行機会の獲得です。

①「社会の今と未来」の理解

副業やプロボノを通じて、また、外部からの業界やテクノロジーに長けた専門家とのディスカッションを通じて、世の中の最先端のトレンドや解決困難な社会課題、未来の可能性に触れることが可能となります。そこから現れる未来のあるべき姿と自身・自社の立ち位置がこれから歩むべき差分となるのです。

②自身・自社価値の理解

「隣の芝生にいくと自分のいる芝生も青かった」とよく聞きます。外部環境・外部人材と触れることで、自身や自分達の弱みも見えてきますが、一方で、案外と見えていなかった価値や強み、独特のカルチャーにもくっきりとした輪郭が見えてきます。企業と自身の可能性に光が当たるのです。

③試行機会の獲得

社会と自社のことを理解したとしても、すぐに大きくベットできる訳ではありません。ある程度の実験機会が必要になります。そうしたとき、自社ではない別の環境や外部人材と協働することで、本業とは外れた場所でトライアルすることができます。そこで得た成功・失敗の実績を元に次のアクションや投資を検討することができるのです。

人的資本経営へのインパクト

これら3つによるインパクトは企業と個人の双方にもたらされます。

企業にとっては、まさしく「人的資本の向上」に繋がるだけでなく、社内外の副業等を通じた人的資本の「活用」や「循環」といった人的資本の正のスパイラルともいえるサイクルを生み出すことができます。

人的資本領域において具体的に関連すると考えられるものは何でしょうか。ISO30414の項目から考えてみましょう。

【ワークフォース(Workforce availability)】
3 外部労働力

外部人材の活用により、知見やスキルを効率的に取り込むことが可能となります。これにより、一時的なプロジェクトに必要なスキルを持つ外部労働力を迅速に確保でき、労働力の利用効率が向上します。

【ダイバーシティ(Diversity)】
1 労働力のダイバーシティ

外部の人材の活用により、労働力のダイバーシティが高まります。さまざまな背景を持つ人材が参加することで、多様な視点やアイデアが生まれ、イノベーションを生み出す機会が増えていきます。また、外部への越境も同様に経験の多様性を生み、社内のダイバーシティを高めることに寄与します。

【リーダーシップ(Leadership)】
1 リーダーシップに対する信用

社外への越境や外部人材との接触を通じて、リーダーの視野が広がり、新たな知識やスキルを獲得することができ、リーダーシップの質を向上させることが可能となります。これにより、リーダーシップに対する信用が強化されます。

【後継者計画(Succession planning)】
1 後継の効率

自社社員が外部プロジェクトでの経験を積むことで、その能力が向上し、後継者としての育成が効率的に行われます。経営経験のある外部人材をアドバイザーとして迎えることで、視座の変容や経営能力の向上が加速されることも期待できます。

【コスト(Costs)】
2 外部人件費

必要な時期やプロジェクトだけ外部人材を活用することで、人件費を適切に管理することが可能になります。

【生産性(Productivity)】
2 人的資本 ROI

外部への越境による自社社員のスキル向上や外部人材の活用による新たな知見や視点の取り込みにより、人的資本への投資効果(ROI)が向上します。

【スキル、ケイパビリティ(Skills and capabilities)】
2 学習・開発

社外プロジェクトに参加することで、自社社員の学習・開発機会が増え、新たなスキルや知識を得ることができます。

【組織文化(Organizational culture)】
1 エンゲージメント/満足度/コミットメント

社外プロジェクトへの参加や外部人材の共創活動により、社員のモチベーションや満足度が向上し、組織全体のエンゲージメントが高まることが期待できます。

以上のように、越境人材資本経営は人的資本の各項目に対して直接的に影響を与え、組織の持続的な成長とイノベーションを促進します。

自分資本経営

また、個人にとっては「自分資本経営」とも言うべき自身を資本として捉えた活動を可能とします。

先にも述べたように、越境は自身の価値への理解を促進します。また外部環境に触れることで、自身が社会や労働市場においてどれほどの価値であるかの把握も促進されます。転職活動をするまでもなく、等身大の自分を客観視できるようになるのです。

そこから見えてくる自身の強み・弱みをどのように活かし、伸ばしていくのか、まさに自身を部下としてマネージャーのように管理するが如く、今後の育成投資プランを考えられるようになるのです。このような自律型の社員が増えていくことは企業にとっても大きなプラスになります。

転職できる人材が居続ける会社へ

自身で自分に対して育成投資ができる社員は間違いなく転職市場でも重宝されるようになります。

そんな「転職レディ」の状態の社員を育成もしながら、エンゲージメントを高めて引き留めなければいけません。これらは矛盾するようにも見えますが、実は企業自体が上記の自己投資を支援していくことで両方の実現を図ることができます。

社員に対して、キャリアカウンセラーとのカウンセリングや社外プロジェクトへの留学を実施した結果、本人のキャリア自律意識が向上したとともに、会社へのエンゲージメントも向上したというデータがあります。キャリア形成意識を会社が促すことは、当人にとっては会社への感謝や社内キャリアパスに対する解像度を高めることに繋がるのです。

コネクタ型の組織・人材への進化を

冒頭にも述べましたが、現代は不確実性にあふれた時代です。想定外であることを想定内に入れて経営や事業の運営をしていく必要があります。

何かあったときにすぐに社内外のタレントと繋がり、プロジェクトやスポット型で解決するための体制を構築する「プロジェクトレディ」の状態を用意しておくことが重要になってきます。

そのためには、必要な人と繋がれる接続点を多く持った「コネクタ型」の人材を企業全体で抱える、同じく「コネクタ型」の組織を目指さなければなりません。

これらの実現のためには、これまでの人材管理や組織運営のあり方とは大きく異なることから、多くのリーダーや社員のマインドチェンジを必要とします。

しかし、ここで変わらないことは時代変化に取り残されることを意味するでしょう。多くの企業が「越境人材資本経営レディ」の状態であることを期待しています。

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