少年みたい

KNさんは私より少し年上の男性の美容師だ。
もう20年以上私の髪をお任せしている。
当時通っていた公民館のエアロビクス教室の仲間に紹介されて店に行ってみたのだが、
持って行った黒木瞳の写真の髪型にソックリにしてくれたので、気に入ってそれからずっと行っている。
途中から夫にも紹介したので
ウチの家族の頭は全てKNさんの作品だ。

さて、私は数年前にボブから
ショートカットにした。
白髪もあるので手入れがしやすい方がいいのもあり、周囲にも評判がいいので
しばらくはこれでいくつもりだ。
しかしながら、KNさんは髪を切ったあと
いつも必ず
「うんうん、少年みたいでいいと思うんだよね！」と満足げに言うのだ。

少年。

私はもう少しで還暦を迎える、
どこからどう見てもおばさんなのだが
どうしてその表現が出てきたのか。
しかも今出来上がった、鏡に写る私の髪型は
少年というよりはむしろ対極の、
十勝花子か和田アキ子にしか見えない。


少年。少年ねぇ。

きっといいように言ってくれているのだろうとは思うけど、どうしても少年が引っかかって
いつも不思議な気分になる。
もしかしたらKNさんの中の少年は
「魔太郎がくる！！」とかに出てくる少年かもしれない。
それはそれでおばさんは複雑なのだが。

ちなみに「こんな髪型にしたい！」と
写真を見せても、
結局はいつもの髪型になる。
大抵は十勝花子か和田アキ子、
ちょっと長めな感じでは
ゲスの極み乙女の川谷絵音。
全体的には気に入っているので、
まぁいいかと流してはいるものの、
あの黒木瞳マジックはどこに行ってしまったのだろう。
そして出来上がった髪型を見て、
またKNさんは言うのだ。

「うんうん、少年みたいでいいね！」

（了）