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オリーブ畑の朝


けたたましい犬の鳴き声で飛び起きた。何事?と思って外を見ると、数匹の犬を引き連れ、おっさんがオリーブ畑の中を闊歩していた。犬の吠える声と共に、野うさぎが猛烈な勢いで駆け抜けていった。「全くもう。また来てるわ。」お隣のおばちゃんがぼやいた。動物愛護家を自称するおばちゃんは、狩をする人たちを心から憎んでいる。「何度ケンカしたかわからないわ。」と言う。それを他人事として聞いていたのは、昨年の話。まさか、自分のオリーブ畑にズカズカと入ってくる輩がいるなんて、想像もしなかった。他人の敷地に勝手に入ってきて、そこに居る自然の動物たちに銃を向ける。パーンと大きな鉄砲玉が爆ぜる音がした。「これって、不法侵入とは違うの???」憤慨する私に、「家から100メートルの範囲に入らなければいいんだって。」と、イタリア人が言う。何、それ。なんなの、その法律。「マフィア絡みなんじゃない、ああいう狩猟の世界は。」だって。それは、納得いかないなぁ。私は、売られている肉を美味しく食べる方だし、イノシシ肉だって美味しいなぁとは思うけど、でも、それは、誰のテリトリーでもない森の奥深くへ行く人の話。他人の敷地に入ってきちゃダメでしょ。ブツブツ文句を言う私に、「これがイタリアなんだよね…」その一言が、なんとも悲しい響きを放っていた。10月のイタリア。狩猟開放の時は、始まったばかりである。

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