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トスカーナ・オリーブの夢 一進一退

11月に入って、雨が続く日が増えた。
夏前に、少し刈った雑草たちが、茶色く色を染めていたのに、今はもう、すっかり緑になっている。

これくらいの頃から、
「オリーブオイル、買えますか?」というリクエストが増えてきた。
右も左も分からずに、見切り発車で進めてきた私の、
実際、美味しいのかどうかも分からないのに、
「買いたいです。」と言ってくれる人たちがいる。
なんて有難いことかと思うし、早く商品化させたい気持ちも募る。

とりわけ、ラベル作りには、手間取った。
アイデアは出来ているのに、それを実現化させてくれる印刷所が見つからない。
時期的に過渡期という事もあるだろうし、私みたいな小さな作り手に、手を煩わせたくないのも現実かと思う。


前回の、片手に包帯の兄ちゃんが、気軽に「オッケー」と言ってくれたから、
私は、普通に待ち続けた。
兄ちゃんが「火曜日には見積もり出せるよ!」というものだから、
火曜日、一日中待って、ウンともスンともで、
水曜日に電話をすると、「明日中には大丈夫!」と言い、
木曜日、一日中待って、やっぱり、ウンともスンともで、
金曜日に電話をする。
「ウン、今日の午後のうちには…」
結局、金曜日にも何の返答もなく、これであっという間に一週間という時が過ぎ、
次、次、次に行こうと決心する。
「NO」と言えないのは、日本人だけではないのだと、この時思った。
イタリア人の、この、出来ないのに、「俺がやる!」精神もまた、それに近い。
出来ないのなら、最初から「出来ない」と言ってくれた方が、良い時もあるのだと、
自分の中に叩き込む。
ついつい、「ハイ」と言ってしまいがちな日本人として。

そんなこんなで、他の印刷所が、家のすぐ近くに存在していたことを知る。
灯台下暗しとは、このことか。

一歩進んで二歩下がり、進んだと思いきや停滞し、
また動き始める。

それもまた、人生みたいなものだと思いつつ、
ようやくラベル作りに、進展の兆しが見え始めたのは、
11月も後半の事である。

毎日が、ドタバタな日が続いていた。

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