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ドイツの婚活サイトに侵入し、国際結婚した話②

■第2章■ 婚活の泥沼化

「好きになる人じゃなくて好きになってくれる人が合ってると思う。」

婚活ズタボロ期にすぅーと染み込んできたのは、20年来の友人たちの言葉だった。この言葉にまったく耳を傾けず、自分の思い通りに恋愛を繰り返していた私に対して、N ちゃんはずっと言い続けてくれていた。
婚活でボロボロに負傷している私にも、出産したばかりの彼女は、変わらず同じ言葉を投げかけてくれた。

高校生から20歳まで付き合っていた J 君は、まさにその言葉の通りの存在だった。私のわがままで別れたのに、結局10年以上引きずり続けていた。
特に婚活が行き詰まっていたこの時期は、彼と過ごした楽しい思い出ばかりが蘇り、後悔と彼の愛を噛み締める日々が続いた。
でも彼のおかげで自分が男性から愛されるという感覚を、初めて知ることが出来た。その感覚を再び感じられる人が現れたら今度こそ、その人を大切にしなくてはならないとポジティブに考えようとしていた。

まだお互いが大学生だったにも関わらず、彼は常日頃から結婚したいと言っていた。しかし、その当時の私には結婚願望はまるでなく、それよりも何よりも、色んなことを経験したいばかりだった。
そして私の欲望は収まらず、別れることになった。

後になってこの決断を深く後悔している自分の姿がはっきりと視えて涙が出た。でも私には、 J 君との老後まで色鮮やかに想像出来てしまう完成された美しい未来を、そのままゆっくりなぞって辿ることがどうしても出来なかった。早婚願望の強い彼とタイミングが合わなかったんだ、仕方ないと言い聞かせた。

ところがその後の彼氏達とは毎回上手くいかず、毎日のように悩まされた。
私も大概だがいわゆるクズだったのだろう。彼等と J 君があまりにも違うことに驚き、あれ? もしかして J 君って何か特別だったのかもしれないと思うようになっていた。
しかし気付いた頃にはもう時既に遅し。
J 君は別の女性と付き合っていて、そして若くして結婚した。

何年か過ぎ、婚活で苦戦している中、とある合コンで偶然にも再会した共通の知人を通じて、久しぶりに J 君と話す機会が出来た。

「もう子供二人いるんだよね。あ、そっか。そうだったね。J くんって早く結婚したかった人だったもんね。」
と当時の事を思い出しながらを話をしていたら、
「ちげーよ。別に早く結婚したかったんじゃなくて、おまえと結婚したかったんだよ。でないとすぐどっか行ってただろ。」
と下を向いて少し強い口調で言った J 君の姿が今でも忘れられない。

そしてなんとも切ない想い違いに胸が痛かった。
怖いくらい好みも趣味も気が合って、彼の事は何もかも分かっていたつもりだった。でも肝心な所は何も知らなかった。
10年前、自分が思った以上に J 君を深く傷つけてしまっていたことに、今更ながら気が付いた。
そしてまた今日も、無神経な言葉で彼を傷つけてしまった。ごめんなさい。 別れてから10年も経つのに嗚咽が出るくらい泣いた。本当にごめんなさい。あんなに大切にしてくれていたのに。自分勝手なことばかりしてきたから今、バチがあたってるよ。

結婚したいと強く願っていたが、"この人と" 結婚したいと思ったことは無かった。
また更に深い婚活の沼に沈んでいく気がした。




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