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3000mの山暮らし始めました

ひょんなことから山暮らし


窓を開けたら、目の前に山が広がっている。

それも里山とかじゃない。
2000mとか、3000m級の山々が
目の前に広がってる。

いつかそんな暮らしがしてみたいと思っていた。

そうしたら、ひょんな巡り合わせがあって
9月の終わりまで山小屋で働くことになった。
それも3000m以上の高さにある山小屋。
9月の終わりなら、朝方には軽い積雪もあるくらいの気候になるだろう。

標高が高い山小屋は、7〜8月が登山シーズンの最盛期。山小屋バイトもそれに合わせて増員がかかる。一度は山小屋で働いてみたいと思ってはいたけれど、既に今年の夏は、予定が詰まっていた。

「来年もしタイミングが合えば、働いてみようかな。9月からバイト募集しているところは流石にないわなぁ。」
そう思いながら、何気なく山小屋の求人HPを眺めていた。

すると、

「募集:女性1名。8月下旬〜10月半ばまで。9月いっぱいのみでも可。」との募集記事が。

これは!??

今山小屋で働くことができたら、「好きな場所で暮らし、好きな場所で働く」という私の理想を叶えることができるのではないか‥。

興奮を隠せぬまますぐ電話してみると、
小屋の方は「ぜひ来てほしい」と言ってくださり、あっさりと夢が叶った。

そして、8月下旬に長野県松本市にある上高地へ。さらに上高地から徳沢を経て、横尾で1泊。翌日に目的地の山小屋を目指した。
登山口から目的地まででおよそ9時間の道のり。到着するまでに2日かかる。

今までで一番長い通勤時間だった。

曇りのち晴れ

朝7時前に横尾を出発し、13時前に小屋に到着した。

登った当日から小屋の仕事を覚えたり
眠いけどあんまり熟睡できなかったり

絶景に感動するよりも、
疲労感のほうが大きかった。
天気も悪く、景色も良く見えない。

疲れが溜まっているなぁと自覚もあった。
また体調崩したら嫌だなぁ。

そんな風に、ちょっと鬱々としていた日のこと。

突然、
雲がさぁーーっとはけていき、
ぱぁーーっと晴れ間が見えてきた。


ドアを開けたらそこには、


目の前に、勇ましい稜線が現れていた。

奥に見えるトンガリ山の槍ヶ岳まで、「大キレット」と言われる険しい山道が続いているのがくっきりと見える。


正面の三角が常念岳。
左方向に表銀座が連なる。
前穂高と涸沢カールが広がる。
去年の秋に、ここでテント泊をした。


これが見たかった。
美しい山々を。
氷河に削り取られた美しい山肌を
やっと、見ることができた。

慌てて部屋へカメラを取りに行き、
たくさん写真を撮った。
夕陽も朝陽も。
夢中でシャッターを切った。

ふと
「写真ばかり撮ってて、全然山をじっくり見てなかった!」と、我に帰って、カメラをそそくさとしまった。

山に来てまだ数日。
まだまだ気持ちが落ち着かないようだ。
穏やかに、穏やかに。柔らかい心で。
そう、心に声をかける。

少しずつ、何かそわそわしていた気持ちと向かい合うことができた。

落ち着いた気持ちで、
雲の動きやゴツゴツした山肌を
そっと見つめて、

同時にあちこちに散乱していた自分の意識を見つめた。

あちこちに散乱していたからこそ、
いろんな刺激や人の動きに敏感になっていたのかもしれない。

それで余計に疲れが押し寄せてきていたのだろう。

心と体が疲れていると、どんなに憧れていた場所だとしても、感動が薄まってしまう。

「それどころじゃない」って。
そんな気持ちが浮かび上がるのだ。

それは、心身が『今、私は疲れている』ということに、気がついてほしかったからだろう。

私自身に私の声を聞いてほしい時だから、

もんもんとするし、
閉鎖的な気持ちにもなるし、
周りに刺々しい気持ちを抱くときもある。

私、気持ちが霞んでたな。
曇り空から現れた景色を眺めて、そう思った。

心のバロメーターを頼りに


この1ヶ月で
何かを無理に得ようとしなくていいから、

ただ目の前の景色に心洗われるような、
そんなクリアな気持ちで毎日過ごしたい。

これは、心の調子を図る、
ひとつのバロメーターになりそうだ。

霞んだ気持ちが生まれたとしても、
また山の景色で洗い流そう。

小屋の売店からも、厨房からも、
北アルプスの山々が連なるのが見える暮らし。
2000m、3000mの山々が
すぐそばにある暮らし。

私にとって、贅沢なその暮らしを、
しっかりと味わいたいな。


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