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2限目 地理的視点で「”甲子園の魔物”の正体は何か?」を解決してみる!

地理A ケッペンの気候区分(C温帯)を授業する!

今回は地理を勉強していく中でとても重要な範囲、「ケッペンの気候区分」について考えてみました!
これまでいくつかの学校でこの内容の授業をしてきましたが、「熱帯になる条件は~」「小文字のsはこういう意味で~」など、説明が多くなりがちな部分として私自身も「この範囲をどうやって授業するか?」ということが一つの課題でもありました。なので今回は、温帯の授業をするにあたり、思い切って関係なさそうな切り口を探してみよう!ということになり、テーマに書いたことを問にしてみました!

高校野球を地理的に考察してみた!

皆さんは、”甲子園の魔物”という言葉を知っていますか?
春・夏と年に2回行われる高校野球の全国大会。特に高校3年生が野球人生のすべてをかけて戦う夏の甲子園。そこではこれまで多くの名場面が生まれてきました。
ワンプレーに笑う者がいれば、泣く者もいる。いつしか甲子園でおこる不思議な出来事を見て人は”甲子園には魔物がいる”と言うようになりました。
今日はそんな”甲子園の魔物”の正体を地理的に解明してみよう!という授業になります!

全体の構成

授業全体の構成としては、
導入 甲子園で起きた様々な事象を映像で見せる

展開 ”甲子園の魔物”の正体を仮説を立てた上で、地理的な視点で探る

まとめ 夏に南東から吹く季節風が、甲子園だけでなく日本に大きな影響を    
    及ぼしている(Cfa気候は季節風の影響を大きく受けている)

と、いった感じの構想です!授業にはパワーポイントを使用しました!
「いやいや、そのつなげ方には無理がある」という意見もあるかと思いますが、生徒の反応も面白かったので、最後まで読んでいただけると嬉しいです!

導入

突然、”甲子園の魔物”について調べよう!といっても、生徒は混乱すること間違いなし!笑 ですので、以下の3つの事例をスライド+黒板に図を描きながら生徒と一緒に考えることから始めました。
① 夏甲子園での最多本塁打数記録の保持者は、なぜすべて右打者なのか?
 これは現在夏の甲子園大会で記録されているホームラン記録ですが、
・中村奨成(広陵) 6本
・清原和博(PL) 5本
・平田良介(大阪桐蔭) 4本
・北條史也(八戸学院光星) 4本
となっています。共通点としては全員右バッター。右バッターの特徴を野球部の生徒に「センターからレフト方向への打球が多くなりやすい」と説明してもらい、”何か”が左バッターの本塁打を阻んでいるのではないか?ということを共有しました。(一人一人の本塁打の方向やラッキーゾーンの有無を確認していなかったことが悔やまれます・・・。)
② 「奇跡のバックホーム」の送球はなぜホームまで届いたのか?
 これは言わずとしれた高校野球では伝説的な出来事。
1996年8月21日、夏の甲子園決勝戦。松山商業VS熊本工業
1アウト満塁からライトに上がった大飛球。誰もがタッチアップでサヨナラと思った一打を、途中出場したライトを守る矢野選手がホームへノーバウンド送球。見事にランナーの生還を阻止し、その裏で勝ち越し点を入れて松山商業が優勝を果たしたあの試合です。矢野選手の肩の強さもあると思いますが、それ以外にどんな要因がありそうか?と生徒に投げかけ、考えてみました。
③ 2010年夏 島根海星VS仙台育英での落球はなぜ起きたのか?
 エース白根投手や現阪神の糸原選手を擁した島根海星高校が、9回表の最後の最後で”甲子園の魔物”に喰われてしまったあの試合。落球後に唖然とする白根投手の顔が今でも忘れられません。あの時の映像から球場の様子などを見てもらい、落球してしまった原因を生徒と考えました。

お察しの方もいるかと思いますが、今回は「風」について考えることがメインとなる授業です!しかし「”甲子園の魔物”の正体は風である!」。これではあっさりと授業が終わってしまいます笑
そこで風が吹いてることは前提とし、その風の正体は何なのか?なぜ吹いているのか?を調べていくことにしてみました!

展開

ここからは実際に生徒にタブレットや資料集などを使用し、調べてもらいます。資料として「日本各地で吹く局地風」の図を印刷して生徒に渡し、仮説を立てた上で検証をしてもらいました。多くの生徒が「風」を手がかりとして仮説を立てていましたが、中には「野球はエラーも起きる。それは土も関係しているかも!?」と、甲子園の黒土に焦点を当てている生徒もおり、ほんと授業はこういうところが楽しいなと、改めて感じることもできました!

まとめ

本時のまとめとしては以下のような1つの見方を生徒には提示しました。

  夏に南東方向から吹く季節風(モンスーン)が強い海陸風をもたらし、   夏の甲子園大会に大きな影響を及ぼしている可能性がある。  
  つまり、”甲子園の魔物”の正体は季節風である。

甲子園には「浜風」と呼ばれる風がライト方向から吹いています。では、浜風はなぜ吹くのか?それを知るために南東季節風に注目しました。
日本は夏に太平洋高気圧から強い風が吹きます。その風が梅雨前線を形成し、日本に雨季をもたらします。浜風とはまさに季節風による海陸風です。
南東から吹く季節風が、左バッターの本塁打を阻止し、奇跡のバックホームを生み出し、選手のエラーを誘っている可能性があるのです。

出典「ウェザーニュース 熱戦続く夏の甲子園 名物「浜風」とは?」より


そして、風ではなく土に焦点を当てて仮説・検証を行った生徒もいたので、甲子園の黒土=褐色森林土の特徴も最後に補足説明しました。
褐色森林土は温帯特有の腐植土から生まれる土壌で、柔らかさが特徴です。
つまり、イニングが進むにつれ柔らかい黒土は形が崩れ、最後の最後で勝敗を左右するイレギュラーをもたらしてしまうのだろうということです。高校野球の公式試合では必ず5回にグラウンド整備が入りますが、どれだけ土を均しても、すぐに凸凹になってしまう。これも黒土を使う日本の球場ならでは事情なのではないかと思います。
そんなモンスーンの影響を大きくているのがCfaであり、日本や中国などに広く分布していることを確認し、授業を締めくくりました!

終わりに

いかがでしたでしょうか?
「地理と結びつけるには少々無理がある」という意見もあるかと思います。
しかし、私は「地理的視点で見るとこうなるのではないのか?」ということで授業を展開してみました!生徒もはじめは「先生!これ地理の授業ですよね???」と、頭の上に?マークが見えるくらいでした笑
終わってみればいろんな気付きがある授業となりました!
日頃寝がちの野球部の子も「野球の話なら任せてくださいよ!」と起きて頑張ってました笑
実際にやってみて面白いと思う点もあれば、反省点もでたので、今後はその改善に努めたいと思います!
何か疑問に思う点などご指摘あれば、私も勉強になりますので、遠慮なくお願いします🙏


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