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#詩

枇杷

光を肌にのせて寝転んだ。 虫の飛ぶ像が心地よく頭の中に響く。 緑がこの全身を失くした存在と…

雪屋双喜
3週間前
7

詩 河

綾羅錦繍を抱えていた ただ一つとして名も知らぬ異国へらいら 委曲をつくせど動かぬ指を 雪に…

雪屋双喜
1か月前
2

詩 波

無作為な個を一つ一つ赦していったその先に 私さえもいない透明な感情があって 無音や無風や…

雪屋双喜
1か月前
3

詩的計画の序

裸の切なさを共有するシステムとしての 液晶の価値を金額で比べる普遍人の情動 一匹で群れ始…

雪屋双喜
2か月前
4

現像

 一人でいるとき、誰かを思い出すのは  熱と色と夏が来る期待感と切なさを  不意に思い出し…

雪屋双喜
3か月前
6

天使の翼をレンタルできて 名も知らぬ鳥と似た羽を背負う時代 動かし方を忘れた後で 理論だけ…

雪屋双喜
3か月前
3

現代詩でハグして死んで

自分の恋を綺麗だと信じている10代のグロテスクな輝きが手元に無くなる虚しさが憎くて恋は全部が全部酷い俗物だと突き放してそのまま苦しくなる過去の自分を抱きしめてから死にたくなるのは詩を描く間だけは息を止めて世界に見つからないようにと願っている姿が鏡に映るときに内側にさえ取り繕っている本音が心に気を使っている聞こえないことにすら気が付かないどこかに向いた自意識の裏側を眺める何かが不意に恥じらいをもって母を見失った幼児のように泣き出したから今日は眠ってしまうその前までに独りハグして

詩 互換性

今まで が違う私に わかる と言ってくれる優しい人に 来ないで と言えずに甘えた私に こんなこ…

雪屋双喜
4か月前
7

青春

青の色は変わっていった 水性絵の具を絞り出して 小さなキャンパスに 傷をつけながら塗りたく…

雪屋双喜
4か月前
4

【現代詩】十分な自由

配慮と邪な優しさは裏を返しても十分な人間らしさを持ち合わせている。想えば色が変わるなら心…

雪屋双喜
4か月前
6

恋を愛して乙女よ歩め

あたしもあなたもあの人も いつかに向かって歩いてく 夜を猶予う春風に 私は心を預けては ま…

雪屋双喜
4か月前
1

甍を越えた蝶 果てを探る冬蜂 燭台を倒した春風 気紛れに夜を泳ぐ 純粋よりも強かな殺意に …

雪屋双喜
4か月前
5

現今

ずっと誰かの記憶を見た。 白鷺が首を縮めて飛び往く姿。 電線の先の油彩のような月夜。 紫陽…

雪屋双喜
5か月前
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沈黙

揺らぎの隙間の同時性を持った緊張 乱視の混じった視線の先には たった今気が付いた他人が見える 零下に抗う指の伸びた先が 声よりも早く 視線には追い抜かれ でも確かに その靄のような形を 廃墟の実存と為して 世界から切り取るのは 言葉のそれのように 暖かで緩やかな不完全性と 冷酷で国境に線をわざと引く諧謔性と 遠くの蛍に似た思考の停止が有りました 答えのない沈黙の後で 口を開くことに言い得ぬ恍惚を感じ 戒めのような愛を科していく ああ やっと 沈黙の中に 自分が