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伝わる文章は「おすすめ」を使わない?

無意識のうちに「おすすめ」使ってませんか?

「おすすめ」って、つい使ってしまう便利な言葉だ。

いま働いている編集プロダクションで、あるWebコラムの原稿を書いたとき。原稿チェックを先輩にお願いしたとき、こんな指摘をもらった。

『おすすめ』って使うのクセだね

文章を見直してみると、たくさんの「おすすめ」が使われていた。

○○○なら▲▲▲がおすすめ
ここではおすすめのサービスをご紹介します。
~~~~な人におすすめです。

何度も読み直したのに、なぜ気づかなかったのだろう。ひどいところには、同じ段落に2~3個もの「おすすめ」が書かれていたのだ。

編集・ライターとして働くようになって1年。副業していた時期もいれれば2年になる。書く仕事をする立場として、ことばの重複には気を付けているつもりだった。それでも無意識のうちに「おすすめ」を多用していたのは驚きだった。

「おすすめ」を別のことばに言い換えてみる

「おすすめ」は、さまざまなジャンルの文章に使える言葉だ。それゆえ、よく考えないまま「おすすめ」を使ってしまう。便利だけど、具体性がない。結果、なんとなーくしか伝わらない深みのない文章になってしまうのだ。

たとえば、こんな文章。

料理初心者には、レシピサイト「白ごはん.com」がおすすめだ。

これだけでは「白ごはん.com」のどのような点がおすすめなのか分からない。どこがいいのか、なぜ料理初心者にすすめたいのか? そもそも「白ごはん.com」がどんな特徴があるのか? 書き手が安易に「おすすめ」を使うと、魅力を深堀しないまま終わってしまう。

深みを持たせるには「おすすめ」を別のことばに言い換えるといい。(by 会社の先輩) 上の文章を言い換えてみると、下のような感じになる。

料理初心者には、レシピサイト「白ごはん.com」を使えば、定番の家庭料理が簡単に作れる(=おすすめ)。

「料理初心者」「定番の家庭料理」「簡単につくれる」も曖昧なことばなので、言い換えてみる。

初めての一人暮らしで「おいしい料理を作ってみたい」と思う人(=料理初心者)には、レシピサイト「白ごはん.com」を見てほしい。掲載されているのは、唐揚げや肉じゃが、焼き魚などの定番料理(=定番の家庭料理)。
材料を入れる順番や切り方などが丁寧に解説されているので、感動するほど本格的な料理がつくれてしまう(=簡単につくれる)。

最初の文「料理初心者には、レシピサイト「白ごはん.com」がおすすめだ」と比べて、書き手がどこをおすすめしたかったのか分かるのではないだろうか?

書き手が「おすすめ」を言語化できればできるほど、読み手はイメージを持ちやすくなるのだ。

※ちなみに「白ごはん.com」のよさは、このnoteにまとめてます!

「こだわり」を使わない雑誌『レタスクラブ』

もちろん注意すべきなのは「おすすめ」だけではない。
「おいしい」「こだわり」「楽しい」「豊かな(生活、暮らし)」「より良い」など、便利で危険なことばはたくさんある。常に書き手の「深く考えたくない」という気持ちを狙っている。

以前『レタスクラブ』の編集長が登壇したセミナーに参加した際、編集部では「こだわり」を使用禁止にしているという話を聞いた。「こだわり」は、何も考えずに使えてしまう言葉だ。でも読者には「どこをこだわっているのか」を具体的に伝えるため、より踏み込んだ表現を使っているらしい。
(※数年前のセミナーなので、いまは分からないけど)

料理・掃除・美容・健康を柱とした雑誌『レタスクラブ』は、雑誌全体が売れないといわれる中で完売する号が複数出るほど好調だ。「こだわり」不使用だけが好調の秘密ではないだろうけど、便利なことばに逃げずに具体的に掘り下げる姿勢は、読者を満足させるコンテンツに関連しているにちがいない。

便利なことばに逃げずに考えよう…

便利な言葉は「深く考える」を妨げる。「おすすめ」「こだわり」「おいしい」「楽しい」「豊かな」「よりよい」……書き手はわかっていても、読者には何となくしか伝わらない。

文字数の都合で使わないといけない場面もあるだろうけど、なるべく書かないように心がけたい。自分の中にいる「便利なことば警察」を叩き起こし、ちゃんと考えて文章を書いていこう……。


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