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✈️5/16-18ブリュッセルでの観劇記録

もうすぐ帰国のまおすけです。(とか言っていたら帰ってきてしまった)(とか言っていたらずいぶん経ってしまった)溜めていてすいません。いつまでかかっても必ず書き切ります。


倉田翠/akakilike『家族写真』

観劇日:2023.5.15
場所:Les Brigittines
価格:9€

「もしな もし もしやで
お父さんが 死んだらやけどな みんな
考えたことある?」
という印象的なフレーズが繰り返される。
チャイコフスキーの音楽が耳に残る。

お父さんは生命保険のことを「不思議な商品、めっちゃええやろー」という。死んだら500万円もらえる、凄い!と言うが、それって自分の命は500万円より価値がないと思ってしまっているのでは。サラリーマン男性が1年働いたら500万円くらいは稼げるものではないのだろうか。
自分の命をお金に換算する考え方、保険をかけて先に死なないとむしろ損になっており、後半で
「俺はくるくる踊れないし、電動自転車ほしくないし」(死んだ方がお前たちに好きなことさせてあげられる?)と、お父さんの明るい希死念慮が胸にくる。お父さんは、500万円分の命なら死んだ方が価値ありというくらいにしか、家族に貢献できていると思ってないのか?と思うと闇深い。
そして、保険のコンサルの人が自身の家族に対し、「うまく行ってないわけではないんですけどね」というなんとも日本の家族あるあるな現状を述べる。これをベルギーの人がどう取るのか。
ベルギーの離婚率は75%?らしい。どのようにあのなんとも言えない関係性を読み取ったのだろう。うまく行ってないわけではない(が、うまくもいってない)のに離婚はしない理由とか分かるのだろうか。そしてこのコンサルの人はトライアスロンを趣味でやっていると話し、物語の最初と最後には水着で水泳をする。シュールだったが、どういうことなのかは謎。

家族は皆GAPの服を着ている。なぜGAPなのか聞いてみたら、アメリカ企業の服を、中流家庭、もしくはそれ以下の家族がアメリカ企業の服を着て、西洋から来たバレエをしている。ということらしい。

シャッターの切られる瞬間。それはカメラの方を向いているわけではない。意図しない瞬間。もしくはその人が切り取ってほしくなかった場面。シャッターを押す人が、押される人の切り方を決められる。しかしその写真の責任者は撮られる人になる。不平等性。切り取る方は責任感じずに取りまくれる。血を吐くまでバレエをした姿を何回も撮るシーンなどは、暴力的。

そしてあの元チャペルの空間であの日本の家族の話を上演、それを私が観られたことは自分の中で強い体験となった。あの空間で自分が日本人であることを意識させられた。字幕が出ない瞬間、いまの内容分かるのは日本人だけだなとか。
方言の翻訳の仕方。どのくらいニュアンスを残すのか。英語だと削ぎ落とされていたらしい。

庭劇団ペニノ『笑顔の砦』

観劇日:2023.5.16
場所:Théâtre Varia
価格:11€

山陰地域の漁師一家と、その隣の家(90代の認知症の祖母、区役所勤務の父、そして娘)の話。

まず、あの田舎のあの空気をブリュッセルで見られたことに感動する。舞台セットも人と人の距離感も、ご飯も、完全に日本のどこかの地方。
そして、消えてしまいそうな儚さがある。私の祖父母の家も、祖父母が亡くなって近い将来取り壊されるだろうし、30年後にあのような田舎の空気感は残っているのかは分からない。けれど今を生きて、働く姿は確かにそこにあって。終始物語は明るいはずなのに、ものすごく寂しく気持ちになるのが不思議。いわば男尊女卑的な田舎の染み付き、大事なことを面と向かって言えない人間性。ついついどうでもいい話をしてしまう親父さんの照れ。酒飲めなかったのにいつのまにか染まるにいちゃん。 
そしてもう一方の家族。
父が見ているところで祖母に優しくできない娘の、けど不器用な不甲斐なさを自分でも気がついてる娘。私も年近いし気持ちがとても分かる。おばあちゃんがカニを壊すシーンは、やめてー!という緊張感と、シュールさに込み上げる笑いが同時にある。

ヘミングウェイ 老人と海の引用は、急にこの家からズームが引いて観客に海が見える。この家は海の近くであるという会話や、漁師の仕事をしている家と老人と海の文章が線で繋がる。読んでみたけど全然わかんねえや、というお父さんの正直な感想にブリュッセルの人は笑ってた。

これがアジアンオリエンタリズムではなく、普遍性を持った感情でブリュッセル(や他のヨーロッパツアー都市)と繋がれていたなら、本当にものすごい作品だと思う。


Kate McIntosh"Lake Life"

観劇日:2023.5.17
場所:BRONKS
価格:7€

まず、英語、フランス語、フラマン語から言語を選択して胸元にスピーカーを付けられる。上演が始まると、その言語の人ごとに集められ、注意やアナウンスを受ける。その後靴を脱いで絨毯のある部屋に全員で移動。その部屋でプロローグが始まり、その声は各々が選択した言語で胸元に届くというわけだ。


途中、全員で二重の輪になって向かい合う人と手のひらを向け合い、指を触れあうワークがある。途中からは目を瞑り、右に移動しながら別の人と指をふれあい、音が鳴ったらまた移動して別の人とふれあう。目をつぶっていてもなんとか手探りで見つける。
その感想を2人組で話し合うターンも。いきなり来たから「うわっやべー何喋ればいいだろか」と思ったが、なんとか片言でやった。でも目を見てちゃんと一対一でベルギーの人と喋るのその時が初めてだったことに気がついた。
その後もいろいろあり、後半舞台上から紙がバラバラ降ってきて、「虫と火山どっちになりたい?」みたいな質問が書いてある。5人くらいのグループになってそれを一つずつ拾って、お互いに質問していく。ここでも片言英語で乗り切る。それも終わって全員でカーペットの上に自由に寝転んで、ぼーっとする時間。肩身の狭さを感じなかった、あの時間。

Lara Barsacq"La Grande Nymphe"


観劇日:2023.5.17
場所:La Raffinerie
価格:9€

写真を見てもらえればわかるように、二人のダンサーが踊る背景に、男性が女性を支えているような刺繍がある。こういう構図の絵やバレエ、ダンスってめっちゃあるけれど、今回のパフォーマンスでこのポーズって一体なんなんだ?と懐疑的になる。ダンサーの二人は、佇まい、服を剥ぐ動作、二人が交差、接触する過程が綺麗だった。チームチープロとコラボしてほしいと思った。
でもダンスはやはりどう見ればよいかまだわからない部分が多く…。この件に関してはハンブルクで見たダンスですごく考えたので早くそこまで書きます。

この週会った人
近藤瑞季さん:早稲田の演劇サークルの古い先輩。今年ベルギーの演劇学校を卒業し、演出家・俳優として活動。みずきさんは本当に思いやりのある人で、私の将来についても真剣に話を聞いてもらい、不安に寄り添ってくれて、この旅で会った人の中でもかなり印象的なお話をたくさんしていただいた。ブリュッセルの観光案内まで。優しいみずきさん、次に会う時は嬉しい報告ができたらいいな。
倉田翠/akakilike『家族写真』の座組みの皆様:会場のバーでお会いして、作品について直接お話しを聞くことができました。倉田さんにも握手して頂き、、、震えました。ありがとうございます。
庭劇団ペニノ『笑顔の砦』の座組みの皆様:終演後、YAUのトークでお会いした清水さんにお声がけした。座組みの方皆さんで歓迎してくださり、その後のディナーにまでお誘いいただいた。食事は謎だったけれど、楽しかったなあ。緒方さんは素でも役のまんまなんだなあ。


次回→ハノーファーでの観劇記録
Tino Sehgal"This joy"、そして注目のチェルフィッチュ『リビングルームのメタモルフォーシス』を観劇しました。近いうちに…書きます….


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