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【美術評】サモトラケのニケ
初めてパリのルーヴル美術館を訪れたとき、とにかく圧倒されたのは彫刻類ー特にギリシャ彫刻だった
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それはこれまで、個人的に彫刻作品自体をあまり見たことが大きかったのかもしれないが、間近で観るそれらは、まるで肉感と実体を兼ね添えたような圧倒的な迫力を持ってわたしたちの前に現れる
膨大な数の彫刻作品を収蔵するルーヴルの中で、とりわけ強く引き付けられたのは”ダリュの階段広場”で圧倒的な存在感を示している【サモトラケのニケ】だ
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紀元前190年ごろに制作されたと言われる、ギリシャ彫刻の最高傑作のひとつで、作者不詳
1863年にフランス人の手によってサモトラケ島で発見されたときは、胴体部分と約1,100点もの断片に分かれていたが、それを修復すると未完成の”勝利の女神”が姿を現し、世界中のひとびとを惹きつけ、魅了するようになった
このニケの素晴らしいと思える点は特に胴体部分で、力感溢れる肉体の表面におそらくは薄いベールのようなものを纏い、それがほとんど実写的に完璧に再現されていることなのかも知れない・・・
神の如き彫刻ー
1950年に「右手」が発見され、現在に至るまでルーヴルが保管しているが、それはおそらく永久に修復されることはないように思える
「大きく広げた右手」とされているが、このニケはこのままでもう完成されているのだ
観に来る者に、完成体を永久的に想像させる、魔的な力を持つ神秘の彫刻
これを観るためだけに、ルーヴルまで観に行ったのかも知れない・・・
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