【門司港】ALL REFLECTION
追憶、という言葉を使うと、妙に美化だけされた過去を指し示すような気がして、これまでほとんど使ったことがない
ジェーン・バエズはかつての恋人だったボブ・デュランとの日々を
”ビューティフルな日々”だったと美しく回想し
ジェイムズ・エルロイはその著書の中で、殺された母との短く濃密な思い出を”あなたが愛を埋めた場所”と称している
いずれも思い入れが深い過去を示す表現で、あるいは、もしかしたらわたしたちの人生の中にも、”ビューティフルな日々”と”愛を埋めた場所”は存在するのかもしれない
そして、そうした場所は、おそらく少ないにちがいない
だれでも、心のなかに、必ずひとつは・・・
JR門司港駅とその周辺のエリアは本当に美しい場所だ
はじめて訪れたのは20年以上前だが、それから夏でも冬でも来ては、特に何をするわけでもなく、ぶらぶらと散策し、冷えたアイスコーヒーを飲み、古くからあるラーメン屋で食事をとる
いつ来ても、混雑するわけでもなく、逆に人通りがまばらというわけでもない
海沿いではときおり蚤の市が開催され多くの家族連れでにぎわい、その客を目当てにした屋台が並びにわかに活気づくが、日が落ちきり、辺りが闇に包まれると、今度は恋人たちが静かに現れ、ライトアップされた夜景をベンチに座って眺めていたりする
こういう書き方をすると、いささか恥ずかしくもあるが、わたしにとっては、ここは若い時代に”ビューティフルな日々”を過ごした場所であり、”愛を埋めた場所”でもある
あまりに恥ずかしいので、ちょっと料理の写真を連投しておく
当時には、絶対に戻ることができないとわかりきっているからこそ、この場所はいつも不思議な輝きを放ちつづけ、なつかしい思い出をただ、やさしく想起させる