見出し画像

Why Woman Have Better Sex under Socialismを読んで

日本から帰国する飛行機の中で読み終えた、「Why Woman Have Better Sex Under Socialism」の感想文です。自分が作った社会主義ツアーをやっているのでその参考にと思って購入して読みました。コンパクトに6章に分かれていて、題名を納得できる内容です。

社会主義というとネガティブな印象があると思いますが、私は旧社会主義国スロベニアに住んでいてその良さも感じます。社会主義時代は政府が大きく予算を教育、健康保険、家族ケアなどに投資していて、その伝統を資本主義・民主主義時代になった今も引き継いでいます。したがって今も小学校から大学学部生の授業料はタダだし、がんの手術や入院費用、出産だって、私たちが払っている国民保険や税金から捻出して国が支払ってくれているのです。

社会主義時代の国は女性にも大きく投資してくれました。宇宙戦争が盛んな冷戦時代、すでにソ連では女性の宇宙飛行士が空を飛んでいましたし、さまざまな職業のドアが女性に開かれていたのです。専業主婦なんて選択は、家族を持ったらほぼ皆無。

子供を持つ共働き家族はどこの国でも大変ですが、女性は国が支えてくれるおかげで、産休を取りクビになることなく会社でのポストを維持できます。安心して仕事復帰できる土台はすでに社会主義時代の国にはできていたのです。ですが昔は女性が家事や仕事も一気に引き受けていたようでそこはダメな部分ではありますが、今はとても改善されているのですよ。男性もしっかり家のことをしてくれます。

一方超資本主義の国だと、女性はどうしても性別的に子供を産むとき産休や育休が必要になる。男性はそれがないから国や会社はその産休費用を捻出する必要がない。その分さまざまな手当が男性に来るので、女性は専業主婦という選択ができる。

でもそうすると、どうしても女性は経済的には男性に頼らざる負えなくなり、キャリアにぽっかり穴が空く状態になります。家事や子育てを一生懸命していても対等ではないのでどこかで言いたいことが言えず言葉は悪いけど奴隷のように感じる部分もあるのではないでしょうか。

著者のKristen Ghodseeさんは社会主義のどちらの点も指摘しながら、この良いシステムを導入してもっと女性が快適に生きていくような世界になればと提唱しているような気がしてなりません。

繰り返しになりますが、私は旧社会主義国に住んでいますので、その名残は日々感じますし、長短所も見えます。仕事面だと日本のように仕事の形態が多様ではないですし、あまり「パート」で働くということが稀だと思います。「扶養」というシステムがないのでみんな働かないと年金ももらえないでしょうね。そういう意味では専業主婦または主夫という選択肢はなくなるのかもしれません。

一方で産休や育休は国から100%の給料が1年しっかり出るので安心でした。ヒーヒー言いながら税金払っておいてよかったと思いました(笑)子供が3歳になるまではパートタイム勤務も可能で、子供の看病のために欠勤する場合は80%の給料が出るんです。安心です。

年金も国が面倒見るべき!という感じで日本のようなNISAはおそらく登場しないでしょう。保険も雇用者が払うことになっていてそれで高度な医療技術が受けられる一方、ほぼ国立病院なので待ち時間が長い場合が結構あります。ただし、払う税金は高い。高すぎる(笑)

しかしながら、女性としてKristenさんの意見は激しく同意するのです。国民が税金を払って、それを国民に、女性が平等になるように還元する。保育所システム、教育費、健康保険、産休・育休、経済的な自立ができるように国もサポートする。間違っていますかね。

事実ヨーロッパは、社会主義を経験したことのない国も、しっかり税金を国民から徴収し、社会民主主義(Social democratic)のような流れに乗っています。オーストリアがいい例なのではないでしょうか。

個人的には日本がこんなに苦しんで達成しようとしていることを旧社会主義国は成し遂げていると思うと見る視点が全然違うと思うんです。

私は英語で読みましたが、英語でも、そしていつか日本語に翻訳されたら日本語でも是非是非、女性にも男性にも読んでほしいです。

この記事が参加している募集

#読書感想文

187,975件

みなさまからのサポートは、スロベニアや周辺諸国の取材費用に当てさせていただきます。