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自選note

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2022年11月の記事一覧

荷物/支え

人生はひとりで背負うには重すぎるから、
みんなで支え合って生きていくのだろう。

荷物の重さに耐えきれなくなったら
一旦下ろして休んでもいい、
誰かに手伝ってもらったっていい。

人は時によって荷物にも支えにもなる。
けれど相手が重荷でしかないなら、
下ろしてしまってもいいんだよ、って
あのときのわたし/あなた に 
言ってあげたかった/言ってあげたい。

一行詩3編・愛Ⅱ

恋人に触れてたんぽぽの一輪咲く

ここに愛を置いておくので
どうぞご自由にお取りください 
おひとりにつき おひとつまでです

夜ひとりで聴く『エリーゼのために』は
独り言の愛の告白のようで、

短詩『月』

人間はひとりでいるときがいちばん美しい。

きっとひとりでいるときが美しいから好きになっただけで、一緒にいるときのあなたのことは
実はあまり好きじゃなかったかもしれなかった。

月は捕まえようと追いかけるほど逃げてしまう、
けれど待っていれば向こうからやって来るということもないのだった。

月は常に遠くにあるから美しいのだろう

一行詩『愛』3編

わたしが美しく見えてる人へ
あなたはわたしに愛されているし
あなたもわたしを愛してますね

世界が美しく見えてるぼくも
きっと世界を愛しているし
きっと世界に愛されている

美しいものをみようとするまなざしが、
愛なのだと思いました

一行詩3編

恋の相手なんかちょっと嫌いなくらいがちょうどいい。あなたへの私の気持ちを恋になんてしたくない。恋だということにしたらきっと、憎み合うしかなくなるから

ぼろぼろぼろぼろ、涙といっしょに肉が剥がれ落ちていった。そして最後には骨と皮だけになって死んでしまうんだ

小さな羽虫が一箇所にあつまって
宙に∞を描いて飛び交っている
無限に∞を描いている

一行詩3編④『神』

神さまはたしかにいます大切なことは目に見えないものです

神は死に大きな物語は崩壊したといいます
それでも神は生きています 

死んだのは神ではなくて
わたしたちのほうでした

一行詩3編⑤

芸術は魂を材料に孤独で味付けした料理です 
孤独な魂を食べて生きてゆきます

おいしくできた料理を好きな人に分け与えるように おいしく描けた絵をあなたに贈ります

この世から嫌いな人がなくなったら
いま好きな人を嫌いそうだから 
嫌いな人のいる世界に乾杯

一行詩3編⑥

あなたが一緒に汚れてくれないから
わたしはあなたといるとき いちばん孤独でした

ひとはどこまでもひとりなので
わたしは結局 神の愛にしか救われないのです

どうしようもなく辛くて泣き臥しているとき
外は激しい風雨で嬉しかったです
神がわたしのために涙を流して怒ってくださっているようでした

空腹

コピー用紙が切れると輪転機は
つぎの紙を求めて口をあける、
けれど彼に意思はない

インクが切れるとピーピーないて
インクをよこせと催促する、
やはり彼に意思はない

(けれどわたしがおなかがすくのも、
わたしのおなかが鳴るのも、
わたしの意思ではないのだった/

しかしわたしはじぶんでたべものをとってこれるから、わたしの助けがないと動けないお前とは、ちがうのだ

リビドー

泳ぐことの気持ちよさは水の中に入ること、
そして水と戯れることだった 

空ともそんなふうにできたらいいのに
自分の周り360度ぜんぶが空になったらいいのに
そうしたら
あの美しい夕焼けの中を泳げるのに!

水の中に入りたい
空の中にも入りたい
できたら火の中にも入りたい
土の中にも入りたい

この世のすべての美しいものの中に入りたい
この世のすべての美しいものとひとつになりたい

そして最後には

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一行詩『エモ』

申し訳程度にちょこんと添えられた付け合わせみたいなお上品な絶望を嘗めて、まるでこの世の終わりみたいな顔して生きている

から、薄っぺらい「エモ」に簡単に感動した気になれるんだよ

思慕

思慕

あなたが創造したこの美しい世界を
どうして愛さずにおけるでしょうか
 

           *

美しい空を見ました。

(手招きするように伸びる無数の雲が
あなたの手のようでした、/

はじまりも終わりも消えて、顔もなまえも思考も着ている服もにんげんもぜんぶぜんぶ剥ぎ取られて、さっきまでわたしはわたしだったことも忘れて、いまこの瞬間わたしであるということも忘れて、

ただ一個のかたまりになっ

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神さまをすくう

遠くへとんでゆくことは
布団の中でもできるのです
それを可能にするのが
わたしの持つ神さまです

真、善、美への信仰、理想、想像力、
精神に宿る己を超えた存在
がわたしの神さまです

つまり神さまとは精神のことだったのです
精神のうち最も尊い部分です
わたしがつかむことのできない領域です

埋もれてしまった神さまをすくうことで
わたしもすくわれるのです

神さまとは精神のことだとすれば
神さまをす

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一行詩3編②

もしも涙で水槽を作ったら
そこで魚は生きられるのでしょうか

秋の空は透き通っているから
見上げると自分の姿が映って見えそうだった 

暗い部屋にひとり、闇合成してエネルギーを蓄える ーあのとき描いた『紫陰花』はわたしだった