「逆ソクラテス」伊坂幸太郎
少年たちよ少女たちよ。くさるな、絶望するな。未来は、ここではないどこかに繋がっている。魔法の呪文を教えるから、その呪文を唱えて、ここより先まで生き延びろ。
こんな気持ちになって、読む前よりも無敵になれた! この本はそんな一冊です。
逆ソクラテス:先入観でしか人を見ない教師久留米の中で、「ダメ」の落胤を押されている草壁くんの話。「ぼくはそうは思わない」。
スロウではない:転校生高城かれんといじめられっ子の村田花の話。語ってくれるのは病床の磯憲先生。
非オプティマス:久保先生に嫌がらせする騎士人くん。そして福生くん。暗い久保先生、再生してゆく。
アンスポーツマンライク:磯憲のコーチするバスケットチームの面々。怒鳴らないコーチと自由に育ったメンバー。そして刃物を持った不審人物。
逆ワシントン:正直に告白したばかりにひどい目にあってしまうドローン少年と、その仲間たち。そして、ラストに登場する店員は、あのときのあの人。
子供時代が苦しかったのは、もしかしたら「子供だったから、より強い人に押さえつけられてたから」かもしれない。けれど大人になって、もう一度自分より弱い人に同じことをするなら意味がないよね。わたしが大人になったみたいに、みんな大人になれている。生き延びるための呪文をつぶやきながら、その先にある別の世界でちゃんと生きている。読みながらそれを確かめられて本当に幸せ。