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加齢式二重まぶた術

『ゆきのしたさん、きれいな二重だよね』

こないだ職場の食事会のとき、そう声を掛けられた。
「いやいやいや、そんなことないです!」
と返すのが精一杯だった。

だって。
自分のまぶたが二重であるという自覚がまるでない。

もともとツルツルのぼってりした一重まぶただった私。
20代を半分折り返す頃、うっすら刻まれ始めたシワ。
30代も折り返しの時期にさしかかって、
ますますシワは深く、クッキリしてきた。 
これは母ゆずりの加齢現象。

大人になってから出会う人には
二重まぶたの私に見えているかもしれない。
子どもの頃から私を知っている人は久しぶりに会えば
「整形?」と思う人もいるかもしれない。
でもこれは二重ではなく、シワ。
加齢に伴う皮膚のたるみが、いい具合に二重に見えているだけ。

40代、50代と重ねていけば、三重、四重になっていくのだろう。
いや、シワの幅がどんどん広くなって、
もう一度ぼってりまぶたの私に出会うかもしれない。
そうやって、いつだって眠たげな目元になっていくのだろう。
ふと、昼となく夜となく、浅く眠るおばあさんの私を想像した。

若かりし頃の一重まぶたを無くした私は、
この、この二重に見えるシワまぶたを失くし、
もっともっといろんなものも失くしていくはずだ。

でも大切な宝物だけは手放さないで。
ずっとちゃんと抱きしめているといいな。
願わくば、まぶたに守られた私の瞳が、美しい景色を映していますように。

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