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海を見ながら憧れていた外国は北朝鮮だった

コロナ禍から朝のルーティンに組み込まれた朝の連続テレビ小説。らんまんがあまりにも面白かったので「ブギウギ」はどうだろと思いつつも子役たちがまあいい演技。なかなか引き込まれる。

鈴子ちゃんのまっすぐすぎて突っ走ってしまうところは嫌いじゃない。それで空回りして失敗することもあるけれど、それが成長の糧になるのよと、もはや母親の気持ちで見ている。

小学校を卒業したあとどうするか?と悶々とするなか、夢についてお母さんに聞いた鈴子ちゃん

「お母ちゃんな、海みながらいつか海をわたって外国に行きたいと思ってたんよ」

と夢見る少女のような顔で鈴子ちゃんに伝える。

は!わ、わたしもそうだった。と思い出す。

秋田の中では一番栄えていた秋田市で育ったわたくしの小学校時代の遊び場は秋田の母なる川「雄物川」そして、青さがまったくない暗くどんよりとして、さらに波にのまれてどこかに連れ去られそうなほど荒れ狂う日本海。

不思議と怖いとは思わず、雄物川のゆったりした流れを見るよりも、さっぱんざっぱんと波しぶきを見ているのが好きだった。
特に冬は真っ黒な海に雪が舞い落ち、まるで水墨画のような世界が広がり、これはこれで好きだった。一人ぽつんと佇んでいると、別世界にいるような心地になり、ぼ~っとしたいときにはうってつけだった。

なのに、いつもおじいちゃんが犬の散歩がてらついてきた。

一人で行きたいといっても、

「じいちゃん、離れたところで文太(犬雄)といるから気にするな」

という。が、寒くて早く帰りたいとウオンウオンなく文太が気になって仕方ない。

帰り道、じいちゃんが疑問をぶつけてきた。
「お前はなんでそんなに日本海が好きなんじゃ。暗いし、冬は泳げないしなにが楽しいんじゃ?」

地球儀大好き人間だったわたしは

「海を見ているというか海の向こう側にある海外に行ってみたいな~、どんな感じなんだろと妄想してんの」

というと、じいちゃんが突然大声で

「そりゃ絶対だめだ!えれえことになる。間違っても海の向こう側にいっちゃいかん。海に向こう側よりもここがええに決まっとる。」

と大反対をくらった。

単に孫かわいさに行くなと引き留めてるんだろうなと思いながらも、お母さんにその話をしたら

「そりゃ、そうよ。海の向こう側は北朝鮮よ。そりゃじいちゃんがあってるわ。お母さんが小さいころは日本海に一人で絶対に行くなっておじいちゃんもだけど学校でもいわれてたの。今思えば、拉致問題があったのかもね。
まあ、海外に行きたい夢は止めないけど、海の向こう側に行くのはお母さんも全力で止めるわよ」

太平洋側の人の海の向こうはアメリカンドリームが叶うかもしれないさまざまな人種を受け入れる大国アメリカ。となると、海を見ながら憧れても夢があるけれど、日本海側の人は一歩間違えれば危ない。

じいちゃんは海外に行くのを止めたのではなく北朝鮮にいくのを止めたのであって、その証拠に多肉植物好きのじいちゃんが憧れていたメキシコに連れて行った。実はじいちゃんと孫娘の二人旅。かなりレアといわれる。じいちゃんが死ぬまでみんなに自慢して歩いた旅だ。

じいちゃんとはたくさん思い出がある。思い出ってプライスレスだなと思う。思い出があれば寂しくない。いつでも思い出せる。
そんなじいちゃんとの思い出をつづったバスの思い出は秋田の新聞で取り上げられた。

じいちゃん、グラシアス(スペイン語)←じいちゃんが唯一覚えたスペイン語


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