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69. 監督との1対1ミーティング

9月26日の朝。その日唯一あった授業を終えた私は、その足で学校のカフェに向かった。いつも朝食を食べたり、チームメイトとくつろいでいる場所だ。今日はここで監督との話し合い。やっぱりいまだに、監督と面と向かって対話する時間は少し緊張する。前の選手が監督とのミーティングを終え、僕を呼びに来た。「どんなことから話すのかな」と思いながら席に着いた。

最初は、学校のことから。授業のレベルや英語に関して順調にやれているかという質問だった。「3年目になって勉強内容は難しくなってきているけど、問題なさそうだよ。」と伝えた。その後も、自分のメジャー(専攻)についてや、卒業までの単位取得プランなどを話した。

次は、オフシーズンについて。「今年はどんな夏を過ごしていたんだい?」と聞かれたので、練習やトレーニングをしたり、友人や家族と素晴らしい時間を過ごせたことを伝えると、「東京は本当に楽しそうな場所だよね。人がたくさんいるだろうし建物もたくさんあるだろうから、ここ(スーセントマリー)と比べると大きな違いがありそうだね!」と笑いながら言ってくれた。その流れから、私生活の話になった。サコとの生活や日頃の食事、睡眠時間なども含め、充実した時間を過ごすことが出来ていることを伝えると「良かった良かった」といったあと、「じゃあここからはホッケーの話をしようか。コーチ陣からのフィードバックから伝えよう。」

そう言いながら現状の僕への評価や、感じていることを述べてくれた。

今、優希のコンディションはかなり良いよね。僕からもそうだし、他のコーチ陣もいい評価をしているよ。特に目立っている点が、*キルプレーだ。いつも練習のビデオを見返しているけど、状況判断だったりシュートブロックでかなり良い動きをしているよ。元々、優希は*パワープレーに出たいといっていたよね。今、そっちのメンバーにはいれることが出来ていないけど、これから先必ず優希のスキルが必要になる時期が来るはずだからしっかり準備しておいてほしい。今は、順調にできているキルプレーでしっかりと役割をこなして、キルプレースペシャリストになってもらいたいと考えている。

また、Tenacity(テナシティ)やToughness(タフネス)についても、昨年に比べてかなり良くなっているよね。練習を見ていても当たり負けをすることが少ないし、強くなっている。何より、そこの戦いの部分を優希自身が意識していることががはっきりと見てとれるよ。このまま続けていけるように。

シュートメンタリティは、昨年よりは強くなっているね。それでも、優希は敵が目の前にいるときに完璧に抜こうとしたり、すぐにパスを出してしまうことが多いよね。優希が周りを見えていることは分かっているけど、シーズンが始まって試合になれば、普段の練習なんかよりもっとコンタクトは激しくなるし、パックをキープする時間が短くなる。だから、自分にチャンスがあるときはもっと積極的にシュートを打つようにしてほしい。

先日の練習を見ていて、優希・アシュトン・ピートの三人のラインの連携が本当に良いとコーチ陣は感じている。チームの要となるセットだ。優希も感じているだろうけど、君ら3人のスピードとスキルは非常にマッチしているよ。ここ最近はいろいろな選手の組み合わせを試すために3人をバラバラにしてたけど、またそのメンバーでセットを組んでもらうことがきっとあるはず。絶対とは言えないけど、僕はそうしたいと思っている。

きっと、今シーズン優希の力を発揮すれば15~20ポイントは取れるはず。もちろんプレッシャーをかけるわけじゃないよ。ただ、できると信じているし、そのようにチームを引っ張る選手になるべきだ。そのために必要なのは、Consistency(一貫性)だ。調子のいい日、悪いときはあるかもしれないけど、どんな時でも一定のパフォーマンスをハイレベルで出せるようにすることが大切だ。期待しているよ。引き続きハードワークを続けよう。

*
キルプレー:4対5など、自分のチームが反則したことによっておこる数的不利の状態のこと。
パワープレー:キルプレーの逆。5対4など敵チームが反則したことによっておこる数的有利な状態のこと。得点チャンス。

このようなことを伝えられた。しっかりと自分のことを見てくれているし、評価もしてくれている。率直に、嬉しい言葉が多かった。

だからこそ、ここからは自分への戒めとして。
今後、自分が試合に出続けられる保証はないし、パワープレー・キルプレーで使ってもらえる約束もない。これを書くと「自分の考え方がひねくれている」とか、「素直じゃない」とか思われるかもしれないけど、そういう事ではない。自分は常に、試されている立場であるということを忘れてはならない。なぜなら今までの二年間、自分は結果を残していない。今、この練習期間ではきっと監督から良い評価をもらえているかもしれないけど、例えば昨シーズン20ポイント以上残している選手と自分を比べたら、信用が高いのは絶対に僕ではなく、その選手だろう。いくら今日まで良いプレイができていたとしても、明日の練習のたった一回のミスですべてが崩れ去る可能性があるという事。今の自分は、失敗しても試合に出続けることが出来る選手ではないということだ。去年、何度もチャンスをもらって、何度もそれを逃してきた。同じ過ちは繰り返さない。

監督の仕事は勝ち続けることであり、俺を使い続けることではない。そこに一切の甘えはない。3年生だから試合に出す、なんてこともない世界。勝利を目指す集団にいる以上、そのための手段として自分が必要とされる存在になろう。

シーズン開幕に向けての練習は今のところ順調な滑り出しだろう。それでも安心できない。まずはしっかりと開幕戦のレギュラーメンバーに入ること。そして、少しでも早く数字を残すことだ。それが一番わかりやすい。

つくづく思う。この、日頃の一瞬一瞬の小さな積み重ねが大舞台へとつながっていくこの感覚。上手くいけば上に行き、失敗したら下に落ちる。いたって単純。これこそ挑戦そのものだ。

シーズン開幕までちょうど一週間。第一戦目までの練習は、月、火、木、金の計4回。この4回の氷上でとにかく良いパフォーマンスを残し続ける。ひとつひとつクリアしていこう。

監督からの言葉を受け止め、もっともっと期待を上回るプレイがしていけるように。ラスト一週間、気合入れていこう!


最後までお読みくださりありがとうございました。

三浦優希



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