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#11 ビジネスパーソンが学ぶべき「自身の弱み」の扱い方

はじめに

日々働く中で、プロフェッショナルの考え方は分野をこえて共通することが多いと感じることがあります。ビジネスパーソンが学べることは、ビジネスの世界に限らないということですね。

その一つとして、スポーツの分野がありますが、今回は元プロボクシング選手の畑山隆則氏(以下、畑山選手)がかつて話した言葉について取り上げたいです。2000年に行われた坂本博之氏(以下、坂本選手)との一戦で、当時、畑山選手が考えられたことがとても含蓄があり、ビジネスパーソンにとっても学びが大きいものであると感じます。

彼(坂本選手)は自分のアゴに自信を持っている
僕(畑山選手)はアゴが自信がない
彼はパンチがある、僕はパンチがない
だから僕が勝てる

ボクシングについて馴染みのない方には、意味が取りにくいかもしれませんが、「アゴ=顎の打たれ強さ」「パンチ=一発のパンチの強さ」だと捉えて頂けたら、意味が通じやすいと思います。

言葉の意味をそのまま捉えると、打たれ強さも一発の攻撃力もどちらも坂本選手の方が強いわけですから、坂本選手が勝ちそうなものです。そして、それを対戦相手である畑山選手自らがお話されているわけですから尚更です。

しかし、畑山選手は、「だから僕が負ける」ではなく、「だから僕が勝てる」と結論づけています。そして、実際に試合結果も畑山選手の勝利で終わっています。これは一体どういうことなのか、ここからビジネスパーソンは何を学べるのか、今回はそんなお話でございます。

畑山選手の優れた点とは何か

この言葉から、畑山選手が非常にインテリジェンスが高いことを感じました。具体的に、ビジネスパーソンが学ぶべきことは下記だと考えています。

①自他の分析力
②弱みの受け止め力
③弱み克服の仮説立案力及び実行力

畑山選手は自他を比較して分析したうえで、自身の弱点を理解し、受け止めることができています。

通常、相手のパンチ力が強くて、自身の顎が弱い(打たれ弱い)ということであれば、すぐ倒されてしまい負ける可能性は高そうです。また、自身のパンチ力が弱くて、相手の顎が強い(打たれ強い)ということであれば、なかなか倒せないわけなのでこちらも負ける可能性が高そうです。

しかし、その自身の弱みと相手の強みに、畑山選手はチャンスを見出しました。これまでの坂本選手の試合を見る中で、彼がパンチが強いからこそ、多少大振りになることがあり、そこに隙があることを見抜いたのではないでしょうか。加えて、坂本選手は顎に自信があるからこそ、多少打たれても倒れないという自負があると感じられたのでしょう。そこにも隙があることを見抜いたのではないでしょうか。

そのような坂本選手に比して、畑山選手は自身の弱みと対策を理解していました。すなわち、

・顎が弱いからこそ、防御を念入りにやること
・パンチ力が強くないからこそ、手数で勝負すること
・相手のパンチの撃ち終わりに狙い撃ちする

という対策です。まるで、強み弱み分析のお手本のような考え方です。

畑山選手の言葉をそのまま借りれば、下記の表現をされています。この映像を見る度に、かっこよさに痺れます。※括弧は私の追記です。

僕にはパンチがない、それは知ってる
だから手数で勝負する
相手の撃ち終わりにパンチを狙いうちする
坂本選手はパンチがあるからワイルドになる
それで僕はパンチがないのを知っているから
小さく細かく(パンチを撃つ)
アゴが弱いのを知ってるから、ブロックもしっかりやる
坂本選手は多少打たれても構わないと出てくる
僕は手数を出す、だんだん弱る、で倒れる。

自身の弱みを理解するという強さ

ビジネスの場合、敵がいるわけではないかもしれませんが、必ず取り組む対象はありますし、その特性を分析し理解することが求められます。マーケターがお客様を理解することやセールスが営業先を理解することもその一つでしょう。優秀なビジネスパーソンほど、相手を知ることに長けているように思います。

加えて、自身のビジネスパーソンとしての特性を理解することの重要性を畑山選手は気付かせてくれます。それも「弱み」を受け止めることの大切さです。

例えば、私が社会人になりたての頃、よく注意されたのは、初対面で表情が固いこと、アイスブレイクが下手なことで、相手から好感を得られにくいことです。それによって新規商談で大きく苦戦することになるのですが、上司や先輩からは表情筋を鍛えなさい、雑談の鉄板ネタを作りなさいとよく指導を受けました。

それができるようになれば、もっと優れたビジネスパーソンになれたのだと思いますが、結果的に私はその能力が高まりませんでした。完全に言い訳ですが、当時既に25年間この表情で生きてきてしまったので、なかなか変えることは難しかったのです。そこで、相手から好感を得ることを一つのプロセスゴールに置いた際に、自分の弱みを打ち消す強みを持てないか?と考えるようになりました。

①笑顔が下手な分、事前に相手先を深く調べ、本気度が伝わるようにすること
 →リスペクトの気持ちを込めてしっかり想いを伝えることに焦点化

②雑談が下手な分、本題でお客様が価値を感じてくださる気づきを提供すること
 →我々のサービスの説明ではなく、経営者の立場で学びになることに焦点化

上記のプロセスには、自身の弱みを受け止めるという段階がありました。初対面でスムーズにお客様と関係性が築けている周囲を見る度に、「羨ましさ」と「悔しさ」がありました。全く商談が盛り上がらない状況を経験する度に、自分にはコンサルティングセールスが向いていないのではないか?と感じることも少なくなかったです。

その際に、この仕事が向いていないなどと無用に悩むなら、「弱み」を「弱み」として受け止めてしまった方が良いのではないかと考えるようになりました。そもそも、相手から好感を持たれないビジネスパーソンなんて、誰も一緒に働きたくはありませんので、社会人失格宣言に近いです。笑 

したがって、事実は受け止めざるを得ない。そして、絶対にできないよりもできたほうが良いに決まっているから、まずはその弱みを改善する方向に進むべきです。ですが、その手法は、必ずしも一つにこだわる必要はないのではないか と考えることにしたのです。そこから解決策が浮かぶようになりました。

弱みを弱みとして受け止めることは、とても勇気のいることです。特にビジネスパーソンとして高みを目指している人ほどプライドもあるでしょうから、受け入れ難いのではないでしょうか。そして、これが今回のハイライトなのですが、弱みを弱みとして受け止めることは、年齢・職位・役割・実績が上がるほどに難易度が高まるのです。

僕が今回お話した内容は、自身が新人時代の話です。比較的、弱みを弱みとして受け止めやすい時だったと言えるでしょう。新人→見習い→一人前→エース→管理職→部長→役員 と職位や役割が上がる中で、自然と「自負」は高まります。この世界で自身は成果をあげてきたという自負です。

実は、私が畑山選手を真にリスペクトしている理由は、彼が「世界チャンピオン」という立場であるにも関わらず、自分の弱みを弱みとして受け止め続けているところにあります。なんという「強さ」だろうと心底思いました。

自分の弱みを理解するという強さ。この能力の最大の凄みは、年々難しくなる能力であり、いつでもその能力を簡単に失う可能性があるということではないでしょうか? 自分自身は弱みを正しく受け止めることができているだろうか?その問いかけを忘れずにおきたいです。

おわりに

今回このテーマを選んだのは、恥ずかしながら、私自身のプライドが邪魔をするという状況が年々増えてきたと感じるようになったことです。昔以上に、自分自身の弱みを受け入れる力がないのではないかと。

本文でもお伝えしたとおり、弱みを弱みとして受け入れることで打開できることがあるにもかかわらず、自身の弱みを受け入れられないことで、むしろ状況を悪化させてしまうことがあるのです。

また、ビジネスの世界では、自分一人で取り組む必要性がないことも多いです。弱みは克服することも重要ですが、周囲に適切な形で力をお借りするという選択肢も用意されています。その意味でも、自身の弱みの理解はとても価値があるように思います。

「弱みがあるから負けるのではなく、弱みを理解できているからこそ勝つ」。自身の弱みを理解するという強さについて、心に深く刻みたいと思います。今回も最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。


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