2021年に読んで良かった10冊
2021年は122冊の本を読んだ。
去年も「2020年に読んで良かった10冊」を書いていたので、今年も同じタイトルで書いてみる。
2020年もすなる日記というものを、2021年もしてみむとてするなり。(土佐日記風)
ちなみにサムネの写真は早稲田大学内にできた村上春樹ライブラリーです。
#2021年の100冊 について
1年間、#2021年の100冊 というハッシュタグ付きで、読んだ本のログnoteを公開し続けた。
100冊読むという目標は、ジャンル問わずとにかく本を読んで勉強することが目的だった。
読書が好きな気がしているわりに、読めていないという課題意識があったので、まずは量を追ってみようという気持ちから。
「年間100冊」目標は11月で達成し、本が好きであることを改めて実感できたとともに、本の中でも小説とノンフィクションが好きだということがわかった。また小説は、良書に出会うため、長く読まれている古い本や英米文学を手に取るようになったのは、個人的に良い変化。
1冊目はこちら。最初の30冊弱は、1冊読むごとに読書ログに1時間、2,000字費やしていた。
「読書ログは1冊あたり15分」の目標がなかなか達成できなかったので、3月(29冊目以降)から、月ごとにまとめてログ公開をすることにした。
「読んでよかった」とは
毎月「ベスト本」と称して3冊ずつピックアップしていたけれど、「ベスト本」とは一体なんだったのだろう?
分解してみると、以下の要素が組み合わさっているように思う。
・ページターナー(ページを次々めくってしまうほど面白い)
・難しいけれど、知的好奇心を満たされる
・記憶や心に残る、狂おしいほどの余韻
・新たな視点で世界を見られる、世界のことを知る
・実践的、現実的に役に立つ
「2020年版」にはこう分類していて、あまり変わっていない。
本が好きなのと、読書が好きなのはやはり違う。
本というコンテンツももちろん好きだ。
だけど、知的好奇心にせよ、感動にせよ、エンターテイメント性にせよ、やっぱり読んでいる時間そのものに心からの喜びを与えてくれる読書という行為が好きなのだ。
だから読んでよかった、読めてよかったと思うのだと思う。
2021年に読んでよかった10冊
ここからはひたすら10冊を紹介していく。小説とノンフィクション、ビジネス書が入り混じっている。
①アルジャーノンに花束を(ダニエル・キイス)
考え事のテーマが「孤独」だったときに、選んだ本だった。知る人ぞ知る?というかみんな知ってる?名作。ここ数年で読んだ本の中でもせつない小説ベスト1。
知的障害を患う主人公チャーリィが、手術によって驚愕の能力を発揮し始める。恋もする。友達も作る。「アルジャーノン」は、その治療の研究に使われているネズミの名前だ。ネズミの行く末を見たチャーリィは、自分の人生の行く末を知る。
②深夜特急(1〜6)(沢木耕太郎)
「沢木耕太郎に憧れたかつてのバックパッカー」に勧められて読んだ、香港〜ロンドンまでの旅行記。実話がもとになっているとはいえ、26歳のときの旅から17年も経ってから書かれている。
その細かい風景や心情から思われるのは、今この時代に自分は何を見て生きているのだろうということ。目で見るよりすぐに写真をとる、良さを反芻するよりすぐに共有する、何がいいのか説明できないうちに反応をもらう、そんな「映え」だけの世界で生きていたら、言葉を失うばっかりだ。
③フェルマーの最終定理(サイモン・シン)
知らない世界を知ることの楽しさ。文章を通したほうが世の中を知れるタイプの人間にとっては、この手の文才溢れたサイエンティストが世の中との通訳みたいな貴重な存在だ。
このシンプルなフェルマーからの挑発的な1文が、数学者を300年以上苦しめたのだ。事実は小説より奇なり。
④月と六ペンス(サマセット・モーム)
エンジンの調子が悪い中古車のように、古い翻訳小説は、なかなか没頭するまでに時間がかかり難しい。でも集中し始めたらあっという間に虜になる。
前半の陰気なパリと、後半のからりとしたタヒチの対比が素敵。結末は「からり」どころではないけれど。ところどころ挟み込まれる哲学的な考察にも唸らされる。文章や文体が素晴らしいだけでなく、展開にもエンタメ性がある、自分の好みを越えてくれた本。
「ページターナー」という言葉(次から次へと手がページをめくってしまう・早く続きを読みたくなるような面白い本ということ)がピッタリの本。イギリス文学の魅力を教えてくれたような、でもまだそんなにたくさん読めていないのがもどかしい。
⑤insight (インサイト)――いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力(ターシャ・ユーリック)
録音した声を自分で聞きたくないのと同じように、姿勢の悪い自分の姿を写真でみたくないように、自分と正面から向き合うなんてことしたくない。
そんな、目を背けたくなる自己認識についての本。
上半期で一番良かったビジネス書。タイトルの「人生変える」は過言じゃないと思った、と読み終えたとき記している。ので、読み直したい本ベスト1。
まずは自分を理解し、次に他人を理解するためにこちらとセットで読む。そうすると、他者への「許し」が生まれてくる。休職するまでに陥ったストレスの要因に向かって最後になんとか声を絞り出せたのは、この2冊のおかげだったかもしれない。本当です。
⑥田舎のパン屋が見つけた腐る経済 (渡邉格)
パン屋とマルクス経済?
腐らない食べ物、増え続けるお金、安い賃金、現代経済のゆがみを指摘しながら、平易でまっすぐな言葉でパン屋哲学を綴った本。世の中の見方が少し変わる。
現在、鳥取にある彼のパン屋さんには、全国どころか韓国など近隣外国からも人が訪れるほど、彼の哲学は世の中を静かに熱狂させている。
資本主義に少しでも疑問を持ったことがある人に読んでほしい。
⑦キッチン (よしもとばなな)
なんで今まで出会ってこなかったのか。直接足を運べる本屋さんは、こういう出会いがいい。
人の生死や男女の距離感の描き方のバランスがよく、アートとして読みたい小説。それぞれの登場人物を愛してしまいそうなみずみずしさ。会話に現実味がありそしてユーモアがある。小難しさは一切ないので、優しさに包まれたい人におすすめです。
⑧スマホ脳(アンデシュ・ハンセン)
Facebookの「いいね」機能を作った人は、今とても後悔しているという。なんてものを作ってしまったのだと。
人間の脳が進化するスピードよりずっとずっとはやく、人間が生きる環境は変わってしまった。人間の10-15%は他の人間に殺されていたような狩猟採集民のときから、脳は殆ど変わっていない。
脳は、「かもしれない」が大好きだ。誰かから連絡がきている「かもしれない」プッシュ通知や、誰かから1件「いいね」がついている「かもしれない」SNSに、脳は中毒されている。すぐ刺激的な情報が得られない、クラシック音楽のような習い事をする子どもは減っているんだそう。
脳とスマホに関する知識を得られたこと、自分の実感と伴った危機感。この1年で出会えて良かった本ベスト1。
あなたは1日何時間スマホをさわっているでしょうか?
1日2時間使っていたら、1年で1ヶ月分スマホをさわっていることになる。
⑨風立ちぬ (堀辰雄)
一言で言うと美しい小説。
読んでから数日、この本を読みながら想像した林の風景が何度もよみがえった。想像の中で構築した風景を、夢を再現するかのように見る。まるで実際に少し前まで自分がそこにいたときの記憶を反芻しているかのように。こんなことは初めてだった。
軽井沢の木陰の涼しい風を感じに行きたくなる。
⑩ 向田邦子ベストエッセイ(向田和子 編)
向田邦子を読んでみたいと思っていたけど、いちばん最初に「ベストエッセイ」なんて、他人に判断を委ねたようで面白くない。
でも「ラクしたい」気持ちに勝てず手に取ってしまった。そしたら、やっぱりいいもんはいい。最初の2篇でもだえてた。
戦争の悲惨さや悲しみをダイレクトに訴えたり嘆いたりするのではなく、そのときの家族の日常、非日常、心情が情景に浮かび心がきゅっとなる。軽妙な言葉なのに深くささりこんでくる。あー、読み直したくなってきた。
2021年の本棚
ほぼ自分の見返し用ですが、まとめ。
今年読んだ本を考えたときに、何も見ずに「読んでよかった」と蘇ってきたのは以下の10冊だ。上のランキングとは、半分の5冊が異なる。
①アルジャーノンに花束を(ダニエル・キイス)ー小説
②深夜特急(1〜6)(沢木耕太郎)ー紀行小説
③24人のビリー・ミリガン(上・下)(ダニエル・キイス)ーノンフィクション
④フェルマーの最終定理(サイモン・シン)ーノンフィクション
⑤月と六ペンス(サマセット・モーム)ー小説
⑥insight (インサイト)――いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力(ターシャ・ユーリック)ービジネス書/自己啓発
⑦嫌われる勇気(岸見一郎)ービジネス書/自己啓発
⑧クララとお日さま(カズオ・イシグロ)ー小説
⑨田舎のパン屋が見つけた腐る経済(渡邉格)ーノンフィクション
⑩本をつくるという仕事(稲泉連)ーノンフィクション
考えるのは楽しかったし、やっぱりどれもおすすめです。
マンスリー投稿を始めた月のnote。
個人的に、4月・7月・11月はいい読書をした月だったように思う。
毎月のベスト本を、8月時点でまとめていました。
100冊達成した11月のnote。
2022年にやりたいこと - 月に2冊の課題図書
2022年にやりたいことは、ズバリ、読書の質を高めることです。読書体力をつける。
量を読めることは確認できた。読み耽ることはできる。
そして、インプットが浅いと思考もアウトプットも浅くなるという課題感。数を追ってしまうと、読み切ることが難しい本が積読になっていった。
来年はもっと負荷をかけて、数は追わず、頭を通過させるべきものを通過させる。
そのために、月2冊自分で課題図書を選定して、読みきるようにしたい。
1月の1冊目は「声の文化と文字の文化」。
1991年に書かれた古い本だが、既に楽しみ半分、負荷半分。
1年続けた先に、また新しい自分に出会いたいと思う。「これは読め」という他薦の課題図書があれば教えてください。
それでは2022年も良い読書を。
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