【見学記】公共の美術館での、小学生たちとアーティストとのラーニングプログラム
京都市京セラ美術館の小学生対象のラーニング・プログラムを見学させていただきましたので、感謝の気持ちを込めて、レポートをまとめてみました。
今回見学させていただいたのは、
左京区民親子ふれあいセミナー × ぽよよんDAYS
「京都市京セラ美術館で展覧会を作ってみよう!」
というもの。
左京区と京都市京セラ美術館の共同実施で、左京区在住(または通学)の小学生が対象で、参加者がみんなで展覧会を作り、片付けまでが一連の内容のプログラムで、以下が大まかな流れでした。
展示室を感じるワーク
展覧会作りのワークショップ、作品づくりワーク
展覧会の一般公開 (入場自由)
保護者・同伴者が手伝いながら、展覧会の片付け
だからみんなの場所、と思ってほしいです。
ワークショップの冒頭に、京都市京セラ美術館ラーニング担当の藤田龍平さんがお話されていた言葉が印象的です。
京都市京セラ美術館は公共の施設です。
みんなの住んでいる近くにある公民館の仲間です。だからみんなの場所、と思ってほしいです。
そのために、今日は展覧会をして、最後に片付けまで、しっかりとしてほしいと思っています。
藤田さんの他に、ともにアーティストでもある、京都市立芸術大学教授の飯田真人さん、京都芸術大学こども芸術学科准教授で彦坂敏昭さんも講師として参加。また京都市京セラ美術館のラーニング・キュレーターの富塚絵美さんも進行を担っていました。
展示室を感じるワーク
大きな展示室の空間に入った子どもたちに、藤田さんの導入としてのワークが印象的でした。
まずは静かにしてみよう、と藤田さん。
しん、と静かになる展示室。
そのうち、誰かがくすくす笑いだして、あーあ、と子どもたち。
もう一度、今度は目を閉じて静かにしてみよう、と藤田さん。
すると、ギシギシ足音が近づいてくる音がしました。
何も知らない飯田さんの足音でした。みんなが静かにしていたことを知って、ばつの悪そうな飯田さんの表情に、一同大爆笑。
続いて、この展示室のなかで、ここは自分の場所だ、というところに寝転んでみたり、一番長い間声を出した人が勝ち、というふうに子どもたちや雰囲気を解きほぐしていくようなワークがありました。
展覧会作りのワークショップ、作品づくりワーク
そのうち、藤田さんの、じゃあみんなが持ってきてくれた作品を床に並べてみよう、というと、大小様々な作品が床に並びました。
それを取り囲むように眺める参加者たち。
自分の好きな所へ持って行って、作品を飾ってみよう、の藤田さんの声とともに、様々な場所に立って、白い壁に作品をあてがいはじめます。
学生のスタッフがフォローして、高さここでいい?この隅っこに展示する?
どんな順番で並べる?など参加者と話し合いながら、自分たちの思う場所に作品を展示していきます。
おおかた、作品を展示してみると、トイレ休憩をはさみ隣の展示室で、彦坂さんが持ってきた大きなビニールシートを使った作品づくりワークショップと、藤田さんが持ってきた長いロープを使った作品づくりワークショップが始まります。
大きなビニールシートと長いロープに格闘している隣の部屋では、また別の参加者が、今回の展覧会のタイトルを検討していました。
こどもの展覧会、ステキな子どもの展覧会、こども花まる展覧会、小学生展覧会、ちいさなひとたちてんらんかい、なんでもてんらんかい...
全部それをくっつけちゃおう、と藤田さん。
そして、「ステキなこどもの花まる小学生ちいさなひとたちなんでも展覧会」に決定しました。
入場料が決まって、ホワイトボードにで展覧会タイトルを描くグループが、素敵なタイトル看板が出来上がりました。
その他にも、作品にキャプションや、「触らないで」などの注意書きを制作して壁に貼り付けてくれて、より一層本格的な展覧になってきました。
一方、大きなビニールシートと格闘するグループはというと、ビニールシートの下に潜ったらおもしろい!と気がついたようで、シートの中に潜って大きな山を作っていました。
大きなウネウネした山ができたあとは、小さくまるめて…
この作品のタイトルは「ビニールのいん石」となりました。
同じく、長いロープで苦戦していたグループの作品は
タイトルが「無責任のかたまり」になりました。
それぞれの役割で協力して展覧会を作り上げた参加者を、集めて藤田さんが話しました。
展覧会をやってどこが良かったか、悪かったか、をみんなに聞いて集めて、展覧会の見どころとしてタイトルコールを作りたいと思っています。
みんな、どうだった?
う〜ん、と子どもたち。
出てきた意見は、
テーマがない
自由
楽しそう
ふつうの作品だけじゃなくてアート作品もある(!!!)
好きなところに飾れる
でも一日中見ていたら飽きる…
など面白い意見がたくさん出ました。
それをホワイトボードに書いて、タイトルコールが出来上がりました。
それぞれを展示室の入り口に移動させて、いよいよ展覧会の開始です。
展覧会の一般公開 (入場自由)
扉開け係の子どもたちが、展示室の扉を開けて、いよいよ展覧会の始まりです。大人たちもわくわくしながら、展示室に入っていきます。
一緒にわいわいと作品を鑑賞する大人たちと子どもたち。
あれはこうやって作った、とかこれすごいね、などみんなで作品の前で会話が弾んでいたのが印象的でした。
保護者・同伴者が手伝いながら、展覧会の片付け
一通り、作品を鑑賞したら、次はお片付けの時間です。同伴者の大人も、片付けを手伝います。
この美術館はみんなの場所と思って欲しいので、最後にまた何もない状態になるように、みんなで力を合わせてきれいに片付けをしたいと思います、と藤田さん。
スタッフによって、壁から外された作品をみんなが受け取って、振り返ると、展示室の壁はまた元の白い壁に戻っていました。
がらん、とした大きな広い空間を参加者は感じていました。
最後はからっぽになったところも見てもらいたいです、と藤田さん。
また次の人の展覧会ができるように、きれいに空っぽになった空間を見て、なくなってしまった、さっきまでの展覧会の光景をまた思い出しているようでした。
この記事が参加している募集
もしよろしければサポートしていただけると大変な励みになります。いただいたサポートは制作費として大切に活用させていただきたいと思います。