音楽家はみんな病的なロマンチスト?ベルリオーズを聴く ための日#32
今日にぴったりな、今日の音楽を紹介
エクトル・ベルリオーズ(1803-1869)/ 幻想交響曲より 第一楽章
病的な感受性と想像力に富んだ若い芸術家が、恋に絶望し、アヘンによる服毒自殺を図る。しかし、薬は致死量には足りず、彼は、重苦しい眠りの中で奇怪な幻想を見、その中で感覚、感情、記憶が彼の病んだ脳の中に観念となって、そして音楽的な映像となって現れる。愛する人が旋律となってまるで固定観念のように、そこかしこに現れてくる。
これはある作品に作曲家によって実際にかかれたプログラムノートである。
今日のおはなしは、ベルリオーズ。
ピアノの先生に言われたことがある「音楽をやっている男たちなんて病的なロマンチストばかりよ、それか究極のナルシスト」と。その言葉をときどき思い出してはクスッと笑ってしまう。(音楽家の男性陣、ごめんなさい。大丈夫、これは魅力だと思う)
音楽家はみんな病的なロマンチスト?ベルリオーズの交響曲を聴こう
ベルリオーズはフランスの作曲家である。生涯をフランスで過ごしたものの、彼の作品はどこか「ザ・フランスロマン派」という印象を受けない。少なくともわたしは、いつもそんな風に思っている。
彼は、文学をとても愛していた。ドイツ文学やイギリス文学を好んで読んでいたらしい。その影響もあるのだろうか?
さらにベルリオーズがいた頃のフランスでは、まだベートーヴェンの人気が色濃くなかった。そんな中でもベートーヴェンの交響曲を愛し、そこから生まれた作品が今回紹介している『幻想交響曲』である。
この交響曲には「ある芸術家の生涯の出来事、5部の幻想交響曲」という標題がつけられている。実は交響曲に独自の標題を付けはじめる風潮は、ベルリオーズの作品によって広まっていった。ベートーヴェンの「田園」以来のことである。
ベルリオーズがこの交響曲をつくるきっかけは、激しい恋心からにあった。
相手はイギリスのオペラ劇団のスミスソン。彼女の演じたオフィーリア(ハムレットの登場人物)に恋をしたベルリオーズは、なんとか振り向いてもらおうとして、この大掛かりな作曲を始めたのだ。
つまり、標題にある「ある芸術家」とはベルリオーズ自身のことなのだ。
そんな第1楽章では、まだ作品に取り掛かり始めたばかりのためか、スミスソンへの恋心が激しく伝わってくる。曲想としてはゆったりとした序奏から始まるが、途中で急に速いテンポになる部分がある。その部分では、「芸術家が想いを寄せている女性の姿」を表している。
そこには、報われない相手への焦燥感や怒りのようなものまで感じとれる。
第1楽章「夢、情熱」
彼はまず、あの魂の病、あの情熱の熱病、あの憂鬱、あの喜びをわけもなく感じ、そして、彼が愛する彼女を見る。そして彼女が突然彼に呼び起こす火山のような愛情、胸を締めつけるような熱狂、発作的な嫉妬、優しい愛の回帰、厳かな慰み
作品を作っているうちに、なかなか振り向いてくれないスミスソンに対し激しい怒りを感じたベルリオーズは、別の女性と婚約をしてしまう。
しかし結局最後にはスミスソンと結ばれることとなる(!)
ほら、ロマンチストでしょう。
(ちょっとずれている?)
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