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【読書記録#83】 総統とわたしー「アジアの哲人」李登輝の一番近くにいた日本人秘書の8年間 

<2023年7月4日にインスタに投稿したものをシェアしています>

私が、尊敬する人の一人に李登輝元台湾総統がいる。総統は3年前に97歳で天寿を全うされた。本書は総統の秘書をされていた早川氏の目から見た総統の最後の8年間の記録である。

戦後、国民党は統治をしやすくするために、日本時代に高等教育を受けた知識層を無実の罪で軒並み処刑したり、80年代まで日本文化を禁止したりした。しかし、独裁政権であったために、党員にならないと会議にも出席できないし、意見も通らないと言う理由で、国民党に入党。彼は台北市長、台湾省首席、副総統、そして、総統まで上り詰め、一滴の血も流すことなく国民党の独裁体制を瓦解させ、民主的な台湾社会を打ち立てた。

「これほどまでに日本を思い、台湾を愛した「元日本人」で、国家の最高指導者として、最後まで「人として生まれてきたからには、公に尽くさなければならない」という使命を果たした人はいないだろう。」と著者は述べられていたが、台湾が抱えていたさまざまな問題にどのように向き合い解決してきかを振り返ると、本当にそう思う。

また、総統と曽文恵夫人は、「国語常用家庭」と言う台湾人であっても家庭内で日本語を話す家庭で育ち、ともに日本語を母語とし、日本の精神や教養、価値観を身につけ、毎月送られてくる「文藝春秋」を愛読されていたそう。

日本統治の時代、和歌を詠むことは一つの教養の証だったそうで、文恵夫人詠まれていたそう。著者が接してきた日本語族の人々の中には「三十一文字でこそ自分の感情をというものをピタッと表現できる」「和歌じゃないと自分の思いを伝えられないんだよ」と話す人たちが少ないことに驚いた。

また、来客者や、会う相手に対しての気配りや優しさを感じられるくだりや、人として生まれてきたからには、公に尽くさなければならないと言う日本の精神の一つ、利他の精神を持っていたというくだりに、総統と安倍さんが重なった。

本書に書かれていたエピソードのひとつで心に残ったものがある。
一部を抜粋すると、

日本人学校の式典に招かれた総統は生徒たちに日本統治時代の台湾を語り、講演後、生徒たちと質疑応答していると、生徒の話すに内容に違和感を感じたので尋ねてみると、「学校では、日本は台湾を植民地にして台湾人を苦しめてきた」と教えられている」という。それを聞いた総統は後藤新平や八田與一の台湾に対する貢献のエピソードを語り生徒たちに聞かせた。そしてたくさんの有能な日本人が台湾のために働いていたこそ、そのおかげで現在の台湾の繁栄があるんだ、と。すると、感想を求められた一人の生徒が「今まで台中の街を歩くのに、なんとなく肩身が狭買ったけど、これからは胸を張って歩けます」と答えたと言う。

このエピソードを話すときの総統は。いつも嬉しさ半分といった表情であったと言う、子供たちが、総統の話すような内容に接することで自信を持ってくれたことに喜びつつも、過度に日本のことを貶めようとする教育がまだまだ蔓延っていることで、日本人が自信を失っていることい対して残念に思っているのだ。そうした気持ちが「自分が日本の子供達に話して聞かせなければ」と言う原動力になっているのだろう。

総統がご自身が書かれてた本にも、「日本人はもっと自信を持ちなさい、誇りを持ちなさい」と何度も言われている。

「台湾を植民地化し、台湾人に日本教育を強要した」と近視眼的な見方で断罪するのはたやすい。しかし、李登輝や曽文恵のように「日本の教育、文化、精神は素晴らしい」と評価してくれる人たちの声にもう一度、私たち日本人は耳を傾けるべきではなかろうか。と言う著者の意見に私も同感だ。

たくさんの良き日本の精神や教養、価値観を身につけられた日本人より日本人らしい李登輝元総統の魅力が感じられる一冊であった。

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