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エネルギーを圧縮する!映画の特典映像から考えたこと

こんにちは!yukiです。

昨日、
『流浪の月』という映画を観ました。

U-NEXTで視聴したところ、
本編のあと、
1時間以上におよぶ
「未公開シーン+監督・編集者対談」
が収録されていました。

これが、すごく勉強になったのです。

特に印象的だったポイントは、

「捨てることで
 エネルギーを圧縮する」

ということ。

言い換えると、

「情報を削って
 シンプルにしていくことで、
 残った情報には
 大きなエネルギーが宿る」

というものです。

これは、
さまざまな場面で役に立つ考え方ですし、
僕もその効果を実感したことがありました。

せっかくなので、
対談を聞いて考えたことを
シェアしていきますね。


映画監督・編集者対談を聞いて


まずちょっとだけ、
『流浪の月』について紹介します。
(本題は別なのでさらっと)

原作は小説です。

じわじわと心に刺さってくる映画だと感じました。
僕は好きです。

ストーリーは次のような感じです。

雨の夕方の公園で、びしょ濡れの10歳の家内更紗と出会い、家に招き入れた孤独な大学生・佐伯文。
引き取られている伯母の家に帰りたがらない更紗はそのまま2カ月を過ごすことに。
ほどなく文は更紗の誘拐罪で逮捕されてしまう。
15年後、2人は偶然再会し…。

U-NEXTより引用


「小説→映画」の難しさ


ところで、
原作が小説のストーリーを映画にするのって
ゼロから脚本を作るより楽と思われがちですが、
全くそんなことはないのです。

なぜなら、文章映像では、
表現のタイプが大きく異なるから。

心情描写を文字で伝えられる小説と違って、
映画の場合は映像によって伝えなければなりません。

複雑な感情を、
言葉を使わないで伝える難しさ。

難しいからといって、
モノローグや説明的な場面を作ると
わざとらしくなってしまいがちで、
何だか冷めてしまうことになりかねません。

さらに、
数時間にまとまる映像作品として、
原作の世界観を壊さないようにしながら
コアとなる部分を取り出し、
作品を構成していかなければならないのです。

その過程は、
もはや“再創造”ともいえるもの。

そんな“再創造”も、
「エネルギーを圧縮すること」
に大きく関わってきます。


エネルギーを圧縮する


ここからは、
「未公開シーン+監督・編集者対談」
についてお話ししますね。

この対談では、未公開シーンを流してから、
それをどういう判断・観点によって
切り取っていったのかを、
監督さんと編集者さんがお話ししています。

未公開シーンを見ていて、

「えっ、これ、
 めっちゃ良いシーンじゃん!
 なんで削っちゃったの?」

みたいに感じることが
何度もありました。

編集者さんとしても、

「いやー、
 ここはどうしても残したいシーンで、
 作品の他の部分で入れられないかと、
 いろいろ模索したんですけどね。
 泣く泣く切ることになりました」

と述べられている
シーンもありました。

切ったシーンは、
例えば次のような部分でした。

  • 観客の想像の余地が薄れてしまう部分

  • リラックスできて、
    緊張感が途切れてしまう部分
    (映画の世界観に合わない)

  • その後のシーンの重みが、
    少し変わってしまう可能性のある部分

これから観られる方もいると思うので、
抽象的に書かせていただきました。

「シーンを切っていくこと」について、
監督は次のように述べられています。

切ったシーンがあるから
 残ったシーンの密度が変わる
し、
 何かしら良い影響を与えている
 という確信はありますね。」

映画の収録を終えて、
最初の段階で組み上がった長さは、
4時間ほどだったといいます。

そこから、圧縮して、
最終的に2時間半にしていく。

カットされた部分は
ただ消えるのではなく、
その分のエネルギーが
残った2時間半にのっていくのです。

ある意味、
「手放して戻ってくる」
という循環でもあります。

それにより密度が上がり、
エネルギーの高い作品が
出来上がるんですね。

本質を残す


「あえて削ることで、
 エネルギーを圧縮する」

という考え方ですが、
映画だけでなく、
様々なことに当てはめられますよね。

例として、
写真とピアノという切り口で
考えてみようと思います。

写真の場合


まずは、
写真作品集を例にしてみますね。

市橋織江さんという、
僕の好きな写真家さんがいらっしゃいます。

市橋さんが今年出版された、
『サマー・アフター・サマー』
という作品集のインタビューを見て、
この“エネルギー圧縮”を
感じたことがありました。

市橋さんは、
上記の写真集制作にあたり、
ひとつのテーマで3600枚ほど撮って、
最終的に120枚ほどに圧縮しています。

30分の1ですね!

カットされることで、
テーマの本質が残っていく。

残った写真たちには、
カットされた多くの写真が持っている
エネルギーがのっているのです。

また、僕はアマチュアですが、
自分でもエネルギー圧縮の効果を
体感したことがあります。

これまで、プレゼント用に、
海外写真を作品集としてまとめたことが
何度かありました。

そのとき、
伝えたいテーマに沿わないものや、
構成的に流れが悪くなるものは、
たとえ良く撮れている好きな写真でも、
カットしていきました。

すると、
単体だと面白味がないような写真にも、
深い意味合いが出てきたりするのを
感じたのです。

残った写真のエネルギーが
上がっているということですね。

見せたいものを盛り込むだけでなく、
「あえて削って、エネルギーを上げる」
という方法を試してみたことで、
面白いことが起こった瞬間でした。

ピアノの場合


もうひとつ、
ピアノの切り口でも考察してみます。

ピアノの世界的な巨匠には、
多くの方に似たような特徴があります。

それは、

若いころは激しい曲を好んで暴れまくる

シンプルな曲を好むようになる

というもの。

巨匠が奏でるシンプルな曲は、
たとえ子供や初心者が弾けるような曲でも、
圧倒的なエネルギーを放ちます。

その演奏は、たとえプロのピアニストでも、
ほとんどの人が辿りつけない領域なのです。

その理由は、少ない音に、
削ぎ落とされた膨大な情報量が
のっているからでしょう。

最高に密度の濃い本質だけが残っている、
といった感じですね。

もちろん、
これはピアノだけじゃありません。

さまざまな文化的活動やスポーツなどでも、
達人の域に入っていくにつれて本質だけが残り、
シンプルになっていくように思います。



今回は、
「エネルギーを圧縮する」
ことをテーマにお話ししてきました。

あなたの身近なところで、

「これってエネルギー圧縮されてるかも」

と感じられることはありますか?

あえて削ることで、
残ったもののエネルギーを上げる…

こういった視点で見てみると、
何か新しい発見があるかもしれませんよ!



今日も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

それでは、今日もよい1日を!



(今日のカバー写真は、
 西荻窪の珈琲杖さんでした!)



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