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「マイノリティの強さとブランディング」株式会社TANK代表福元さん

・だって、こういうルールだから。
・やりたいことなんて求められていないし。
・そもそも社会に必要とされることって何?

マネジメント層が現場と乖離していたり、多様なステークホルダーの合意が取れずに、組織の方向性の矛盾や不和、違和感が放置されている「組織あるある」。
…世の中に価値を生むということ、それはいったい何でしょう?

株式会社TANK代表福元さんのお話がヒントになったので、書き留めてみました。

きっかけはインビシブルさんによる「文化起業家」トークイベントに参加したことです。備忘録も兼ねてのレポです。

イベントタイトル:
「自分たちがやりたいことをやり続けるためのブランディング」
ゲスト:業界の枠を超えた活動で注目を集める施工会社
    株式会社TANK代表の福元成武さん
会場:Startup Hub Tokyo。

※「文化起業家」とは
事業を通じて新たな価値を社会に生み出すだけでなく、新しい文化を生み出す起業家のこと。

福元成武さんてどんな方?

※画像はfacebookよりお借りしました。

株式会社TANK代表取締役

「19歳で禿げていた。人生の半分禿げてる。
ーこの経緯から、マイノリティの意識が強い。
少数派の強みというのはなんとかさせちゃう力がある。」

福元成武さん談

株式会社TANKは従来の施工会社の枠を超えたスタイルのある取り組みで社内外から支持を得ている。

建築の設計の仕事からキャリアをスタートさせる。

当時、意味も分からず引いた線から、リアルな構造物が立ち上がることに恐怖を感じたという。
そこでリアルな現場を学びたくなり番頭になった。しかし、そこでは建築の思想を理解することができなかったという。
※番頭とは、は職人を束ね、現場をこなし、売り上げ目標に向けて工程を組む、マネージャー職。

思想を理解する為に、早稲田大学建築のワークショップに参加した。カンボジアの日本語の学校を建てるプロジェクトだったそう(そこでレンガを積むという)。
学びを経て再度現場に戻り番頭に。

その現場での職人さんはアウトロー揃い、入れ墨の入った強面の職人さんの喧嘩の仲裁などを当時25,6歳だった福本氏が仲裁したという。

その後、自分にもできるのでは?と考え、借金して道具を買い揃え大工にもチャレンジ。大工さん、建築家さんと仕事をするようになり、お金の流れや人事についても実地で学ぶ。

組織で働く中で、「自分だったらこうするな」というものを感じるようになり39歳でTANKを設立。

「TANKらしさ」ができるまでー組織の成長と業界への影響ー

クライアントは個人から企業へと変わり、
ブルーボトルコーヒー(設計は長坂 常/スキーマ建築計画)や、
京都の物々交換で泊まれるアート用の施設など、従来の施工会社を超え、建築家側にも食い込むチャレンジングな事業が増えていった。

従来の施工会社は建築家より下の関係性であったという。

そんな中、TANKはカスタマー・設計・施工と協力して作り上げるという業界において新しい形を作った。

その根源にあるものは、会社としてのブランディングといったものではなく、「おもしろいものを作りたい!できるかも!」という純粋な想いだったという。

「おもしろいものをつくりたい」その動きはどんどん加速する

下の画像は終生飼育犬(最期まで適切に飼育される貰い手が見つからない犬)のドッグランの作品。
優しい自然を使ったケージで思いきり走らせてあげたいとの想いが込められている。

自分たちの技術で寄付ができないかと考え、提案したという。社員にもやった方がいいと言われ気持ちよくやれたそうだ。

A Dog Run2015


設計_TANK(Naritake Fukumoto)
施工_TANK
写真_Kenta Hasegawa
竣工_2015.12

このプロジェクトは、某動物愛護センターに保護され、大きさや犬種、性格などの理由で ”里親が見つからないであろう”犬…つまりこのセンターで一生を終えるであろう犬たちが、思い切り走り回れる場所を作りたい。
という思いから生まれた。
我々はこのドッグランを設計するにあたり、”里親が見つかるかもしれない”デザインを目指し、そしてこれを寄付した。合板を編んでできたサーキット、雑然とした林の中にフワッと佇み、柔らかく陽気な場所ができた。
ーhttp://tank-tokyo.jp/より

Chim↑Pomさんの作品参加

Sukurappu ando Birudoプロジェクト 道が拓ける2017
Chim↑Pom、周防貴之
会期:2017年7月29日(土)—8月27日(日)
会場:キタコレビル 東京都杉並区高円寺北3-4-11
WEB: chimpomparty.com
主催:Chim↑Pom studio
共催 : Garter gallery
協力:株式会社TANK、株式会社PARCO、株式会社 昭和ネオン、歌舞伎町振興組合
photo:Kenji Morita
©Chim↑Pom Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production, Tokyo

これらの活動の共通点はお金にはならないが面白そうだから

結果として、社長や企業の方向性を示していることになり作品がPRにもなる。

上記のような活動からクライアントの持ちかける仕事も変化したという。
共感する社員、働きたいという人もできた。TANKの対する信頼に繋がる。

人を惹きつけるマネジメント

「辞めてもTANKのようなことをするだけだから、TANKを大きくする方がいい」
ー退職を考えた社員からの声に泣きそうなくらい嬉しかったと語る。

独立できるほど優秀なスタッフを抱えながら、TANKは離職率が低い。

スタイルを持った施工会社という信頼・ブランド。また他と比べても給与は高水準。また従来の施工会社の「汚い・素行が悪い」みたいなネガティブなイメージを変えたいと福元さんは語る。

マネジメントについて意識していることは、
・一緒に同じものを見る
・居場所を見つけさせる役割を与える
・必要とされていると感じさせる

「基本的に人を信用している。そして似た人が集まっている。自分を出している人が多い。」
「面接した人は全部採っちゃう。だっこした猫を持って帰っちゃうようなところがあるから、採用は人に任せてる。」(福元さん談)

人情味溢れるお人柄も支持される所以か(ここで外見とのギャップがまた素敵!)。

中にはユニークな福利厚生も(http://tank-tokyo.jp/より)

「キックボクシングの受講が自由」

もともと通っていたところ社員からのリクエストがあり、リフレッシュにもなると考え制度に入れたそうだ。
やるからには本気でとの考えから試合にも参加させている(試合前は現場よりもトレーニング優先になるという…)。

結果、思わぬ効果もあったそうで…。

試合で外国の選手と正面から向かって殴り合うことで、コミュニケーション能力に改善がみられたという。
(ちなみに施工会社は周囲とコミュニケーションをとってやっていかなければならない仕事なので重要だそう!)

人と関わることが苦手な人は、体でぶつかってみるといいかも!?

どういう会社であるべきか?

TANKとしてどうあるべきか?
僕らの居場所はどこなのか?
本当に世の中に必要なことをどうすれば提供できるだろうか?

最初はリノベーション物件ばかり受けていた。
そこから、商業・アート・社会貢献性の高いものへと活動の枠を広げてきた。

…やりたい仕事は赤字でもやっていく。

結果を出せばその仕事が来る。そして最終的にやりたいことをやっていける。足跡がブランドになる。

感想ーマイノリティであるということー

建設現場の時代から業界をリードする存在になるまでのストーリ―。

問題意識が常に現場から生まれており、感じる違和感を見過ごさずに行動に起こされたということ。

マイノリティのトップと言われるその苦労や想い…。

世の中に価値を生むということ、それはいったい何でしょう?

今の社会ではマネジメント層が現場と乖離していたり、多様なステークホルダーの合意が取れずに、組織の方向性の矛盾や不和、違和感が放置されていることが見受けられます。

俯瞰した視点での比較差別化も大事ですが、TANKの事例のように内部に入って実体験からの必要性や、純粋な「面白そう!」という内的動機で動くと社員の共感・支持も得られ、自然で強固、唯一無二の組織が出来るのではないかとも思いました。

福元氏は「少数派の強みは何とかさせちゃう力がある」と語ります。

あるインフルエンサーが「コンプレックスのある人は強い」と言っていました。コンプレックスの多い私はとても共感したことを思い出しました。
マイノリティであったりコンプレックスを抱える人間は、ちょっとした生きづらさを抱えており、それはガソリンに変えられます。そのエネルギーの強さが「何とかさせちゃう力」にもなるのかと思うと、とても励まされました。

「やりたいことは赤字でもやる!そしてやり切っちゃう」

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