【書評】夏目漱石「吾輩は猫である」
「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」
かく有名な一文により幕が開ける夏目漱石の処女作「吾輩は猫である」。
冒頭から痛快な批評の嵐である。確かに、猫の観点からしてみれば、人間は奇妙にも傲慢にも、野蛮にも見えるだろう。そうした人間の性質と言うものを、この小説の主人公である名もなき猫は的確に捉えている。
しかして、その人間への分析が猫と言う主観に基づくものではなくて、人間の私が読んでも、つい、ニヤリとしてしまうほど的を得ているのだから、この小説はすごい。実は、人間がこうしたこ