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どうで死ぬ身の一踊り。 こんな浮世は踊らにゃ損々。 ★ブログ:https://yuk…

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どうで死ぬ身の一踊り。 こんな浮世は踊らにゃ損々。 ★ブログ:https://yuki-hoshi.hatenablog.com/ ★お仕事:編集者→マーケター→コンサルタント

最近の記事

『傘』

 住まいは、一棟を四部屋に分けた寂しいアパートメントであった。  部屋の扉を開くと廊下から窺える外の雰囲気は、隣家の生垣でいつも光を奪われている。  ボクは、その、ほの暗い廊下を歩み、下駄箱から、ことどとく古びたスニーカーを取り出す。大学生時分から同じモデル、同じ色を履き潰し続けている。このモデルは、夭折した、憧れのロックスターがよく履いていたものだ。彼は、喜びと悲しみをともに湛えた瞳で、いまもボクの記憶に染み込んでいる―――。  框に座り込み、踵を無理やり滑り込ませると、ゴ

    • 【書評】夏目漱石「吾輩は猫である」

      「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」 かく有名な一文により幕が開ける夏目漱石の処女作「吾輩は猫である」。 冒頭から痛快な批評の嵐である。確かに、猫の観点からしてみれば、人間は奇妙にも傲慢にも、野蛮にも見えるだろう。そうした人間の性質と言うものを、この小説の主人公である名もなき猫は的確に捉えている。 しかして、その人間への分析が猫と言う主観に基づくものではなくて、人間の私が読んでも、つい、ニヤリとしてしまうほど的を得ているのだから、この小説はすごい。実は、人間がこうしたこ

      • 【書評】西村賢太「苦役列車」

        『生きる。それは辛く、美しい。』  ふと、日々の生活に息の詰まる思いをしたことはありませんか。  とかく、現代に生を享けた人は、「スマート」の観念にお仕着せられているように思えてなりません。反感を買わない、なんでも器用にこなす、皆が「いいね!」と言うモノを享受する、という価値観に縛られている。かくいう私もそのひとりです。   ◆  西村賢太氏の芥川賞受賞作『苦役列車』の主人公・北町貫多は、そうしたカッコつけた生活ができるほど器用ではなく、真っ向から衝突し、磨り減ってい

        • 失し物/失す物

           胎動という言葉は良い。地球が動いているようだ。心地のよい水に満たされて、大いなる愛に包まれて、まだ見ぬ未来に眠る。  これから萌す命の歩む道は苦悩なのか、快楽なのか。  過去から将来の道を照らす暖かな光なのか、はたまた迷路のような暗闇に誘い込む魔女なのか。    それは、悲しみと喜びのどちらが勝負を制するかという、当座の我々の認識によって、運命付けられる。どのような道を歩み、どのように終えるのか。その道筋を決めるのは、彼/彼女の認識如何というよりも、我々が予め形作る箱庭の風

          『然る後』_前期ニーチェ序曲

           濁っている。世界が濁っている。眼球が汚水で満たされてしまった。    価値が転倒する。世の中の全てが塗り替えられていく。  神は悪だ。私たちは救いを見たか。  悪魔は善だ。声を張り上げる人の身なりを見よ。  いつまでも旧式の善を為そうとするから、損をするのだ。社会から蔑まれるのだ。  踏め、価値を。疑え、感覚を。  足元で気味悪く、粘着質に蠢くものは先人の脳髄だ。  所詮は、日陰でジメジメと、陽の当たる場所を恨んできたに違いない。  いま、私たちは苦しみから逃れる

          『然る後』_前期ニーチェ序曲

          11か月後のトリップ

          《十八時を告げるサイレン。棘のある室内の涼しさ。換気扇のまわる音。》    私は旅行に興味が無い。いまこうして、人に旅を薦める小稿を書いているのも、お盆休みの真っ最中。自宅に引きこもってのことである。   《二日ぶりに外にでる。暑さ、日差し、というよりも空気の塊にぶつかったようだ。》    これまでの自分の人生を振り返っても、旅行と呼べるものは修学旅行くらいで、昔のアルバムを開いても、旅行の写真なんてほとんど見当たらない。意識的に旅行を避けてきたとまで言える。  それは、自然

          11か月後のトリップ

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          はじめました。

          「はじめました。」はじめました。 日記やら、もろもろのSNSやら、と ぽつぽつ色々なところに文章を書いていましたが、 こちらにまとめちゃおうかなと。 えぇいっ。 と、まとめてしまおうかなと。 創作は手書き派なので、noteとはラグがあるかもしれません…… だいたいが、わたしの覚書き、という面が強いかと思いますが、 暇つぶしにでも立ち寄っていただけたら幸いです。 よろしくおねがいします。

          はじめました。